下谷神社
れいは心霊スポット巡りが趣味の女子高生。眼鏡をかけていて赤茶色の癖毛を肩に届くか届かないかくらいまで伸ばしている。夏休みのある夜、れいは唯一の友人のまゆと共に、台東区にある下谷神社を訪れることにした。この神社は、数々の怪奇現象や不幸な出来事が囁かれていることで知られていた。
「本当にここで何か起こるのかな?」まゆは不安そうに言った。
「まあ、行ってみないとわからないよね!」れいはスマホのライトを手に、神社の境内に足を踏み入れた。
境内は昼間とは打って変わって静寂に包まれていた。月明かりが木々の間から差し込み、古びた建物や石灯籠を怪しく照らしている。れいとまゆは手を繋ぎながら、ゆっくりと奥へ進んでいった。
「れい、あそこに何かある!」まゆが指さした方向には、古びた石の鳥居が立っていた。鳥居をくぐると、小さな祠が現れた。
「これが噂の場所かな?」れいが祠に近づこうとすると、突然、背後から冷たい風が吹き抜けた。
「なんか寒いね…」まゆが震える声で言った。
その時、れいの目の前に一瞬、人影が見えた。白い服を着た女性が祠の前に立っているようだった。しかし、次の瞬間には消えていた。
「見た?」れいがまゆに尋ねると、まゆも青ざめた顔で頷いた。
「もう帰ろうよ、れい…」まゆは恐怖に震えながら言った。
れいも同じ気持ちだったが、もう少しだけ探索したいという好奇心が勝った。「あと少しだけ…」
二人が再び祠に近づくと、れいの足元に何かが転がっていた。それは古びた手紙だった。れいは手紙を拾い上げ、開いてみた。
「助けてください。」手紙にはそう書かれていた。
「これ、本当にヤバいよ…」まゆが泣きそうな声で言った。
れいも怖くなり、手紙を元の場所に戻そうとした。しかし、その瞬間、背後から声が聞こえた。「な何をしに来たのですか?」
二人は振り向いたが、誰もいなかった。
「もう無理!帰ろう!」まゆが叫んだ。
れいも恐怖を感じ、二人は急いで境内を抜け出した。
翌日、まゆは学校で友達に昨夜の出来事を話した。しかし、誰も信じてくれなかった。れいはそんなまゆの様子を見つつ何か考え事をしている様子だった。
それから数日後、れいはインターネットで下谷神社について調べていた。すると、ある記事に目が止まった。記事には、数年前に行方不明になった女性の写真と共に、彼女が最後に目撃された場所が下谷神社であったことが書かれていた。
写真を見たれいの心臓は凍りついた。その女性は、あの夜祠の前に立っていた白い服の女性だった。
れいはもう一度下谷神社に行く勇気はなかったが、あの手紙の意味がわかった。助けを求めていたのは、あの行方不明の女性だったのかもしれない。そして、その事実を伝えるためにに、彼女の霊がれいとまゆに接触してきたのだろう。
「私たち、助けるべきだったのかな…」れいはまゆに話した。
「でも、どうすればいいの?」まゆが困惑した顔で答えた。
れいは深く考えた後、警察にあの手紙のことを伝えることに決めた。そして、彼女たちができる限りの情報を提供した。警察はその後、再調査を行い、下谷神社の周辺で新たな手がかりを見つけた。
それからしばらくして、行方不明の遺体が発見されたというネットニュースを見た。彼女の霊がれいとまゆに接触したのは、彼女の存在を忘れさせないためだったのかもしれない。
れいとまゆは、これでよかったと思いスマホを閉じた。ニュースの続きには
「遺体はおそらく男性、遺体と共に包丁が置いてあった。妻の女性はいまだに行方がわかっていない」
そう続きが書いてあったことを彼女達はまだ知らずにいる。