東京タワー
東京の女子高生れい。彼女は眼鏡をかけていて赤茶色の癖毛を肩に届くか届かないかくらいまで伸ばしている。放課後は常に本を読むか調べもの。唯一の友人であるまゆとはお昼を食べたり休み時間で話をしたりしつつ過ごしている。
そんなれいの趣味は心霊スポット巡り。休日になると気になっている怪奇現象の現場を訪れていた。そんなれいにとって今ホットな話題は東京タワーにまつわる都市伝説だ。
東京タワーには建設中に亡くなった多くの作業員の霊が現れる…階段を駆け降りる白い服を着た女性を見ると呪われる…とある鉄骨が戦場で使われていたものでそこの前で写真を撮ると幽霊が写る…
「こんなにたくさんの噂があるだなんて…灯台下暗しとはこのことね…」とれいはニヤついていた。まゆはそんなれいの様子を見て「また始まったわね…」と半ば呆れている様子だった。
ある日、れいはまゆと一緒に夜の東京タワーに訪れることを決めた。平日の展望台の最後の入場時間に二人はタワーの内部を歩き回った。
まゆは「なんで私もいかなきゃいけないんだか…」と呟きつつメインデッキに向かうエレベーターに乗った。エレベーターにはれいとまゆを含めて一〇人。外国人観光客が多い様子だった。
れいとまゆはメインデッキに着きしばらく中を歩き回ってみた。メインデッキにはベテランそうな職員を一人見かけたくらいで特におかしな様子もない。れいは営業時間外に東京タワーに忍び込む方法を思案していた。
そんなとき突然さっきの職員が「大変だ!急いで階段で降りてください!」と叫んだ。「なになに!?なんでこんな目にあうのよ!」とまゆが大声をあげている中れいは何か違和感を感じていた。
れいはエレベーターの前で立ち止まった。まゆは「何してるの!?急いで降りるわよ!」とれいをせかした。その瞬間、エレベーターのドアが開いたとき、れいは見てしまった。
白い服を着た女性。
顔色は真っ青、目は虚ろ。
手足はおかしな方向に折れ曲がっている。
れいあまりの恐怖に立ちすくみそうになった。だがそのとき職員さんがもう一度「階段で逃げて!速く!」と叫んだのをきっかけに二人は急いで階段から東京タワーを降りるのだった。
翌日、れいはまゆとお昼ご飯を食べながら色々と話していた。当然昨夜の出来事も。
「エレベーターが開いたときまゆは見えた?」
「見えたって何が?」
「白い服を着た女性、真っ青な顔の」
「そんなわけ…」
と言いかけてまゆははっとした。
「どうしたの?まゆ」
「昨日の職員の人…」
続けてこう言った。
「何から逃げてって言ってたの…?」
そこにれいは冷静にこう答えた。
「警報も鳴ってなかったのにね」