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絵師兼配信者だが、いつの間にか身バレ=死になってた。  作者: 偽師
再生リストその2 デビューした
53/62

雑談配信4枠目 とある教師の日記その2


 前書き。


 コレは、私が教員生活を送る事になった日から書き記し始めた物だ。


 いつか、誰かに見られる日が来るとしたら、コレは、私が思った事を雑に書き記した日記だと思って、そう深く考えずに読んで欲しい。(実際に読まれるのは恥ずかしいので、あまり読んで欲しくはないが)


———

——


 5月○日。


 桜も散り、思い出せば咲いていたのもかなり前の頃の話だ。生徒Xも、この学舎に馴染めて来ただろうか。そんな頃、私は中々手強く、一筋縄ではとある問題に直面していた。


 と言うのも、部活…それも運動部の顧問を務める先生方から「生徒Xを是非うちの部に入れさせてくれないか」と言うお誘いが、それはそれは多数寄せられているのだ。何故、生徒X本人では無く、私になのだろうか。


 …とは愚痴を吐くものの、紹介くらいや、仲介くらいなら別に構わない上に、それくらいなれば、進んで受け入れるだろうが、しかし、そうは出来ない理由が幾つかあると言うのが、今、特に私を悩ませている訳なのだ。


 先ず、殆どの顧問の先生方が、血眼、それも迫真の勢いで、命でも懸かっているのかと疑いたくなる程に必死の形相なのが1つ。コレは、生徒Xの才能…能力に起因していると言えるだろう。彼の才能は、何事に於いても、それ程までズバ抜けている。


 そして、その生徒X本人が部活動に対して、好意的でも無く、肯定的でも無いと言うのが、この問題をこれ以上ないくらいに、複雑でいて、解く事の出来ない様な固さに結び付けようとしているのだ。


 しかし、この学校は良くも悪くも、部活動は参加必須で、どんなにやる気のない生徒でも、何かしらの部活に入るのが確定しているのだ。


 つまり、この複雑で解決の糸口も掴めない様な面倒な問題も、生徒Xが部活動を選ぶ事で全て解決する。言わば、それまでの辛抱なのだ。



 5月×日。


 予想外の事が起きた。ソレについて説明する前に、生徒Xでは無い、もう1人の別の生徒について話をしておこうと思う。


 その生徒Yは(分かり易い様にその生徒の事は、生徒Yと呼ぼう)生徒Xとは違い、新学期が始まると同時に、家庭の事情で転校して来た生徒で、その事情とやらを俺は知っているのだが、この場では関係無いので触れないでおく。


 この生徒Yも、生徒Xと同じく部活動に入らないといけないのだが、本人は生徒Xと同じく、あまり部活動に興味が無い様だった(興味が無い様だったと、確信が無いのは、あくまでも隣のクラスの生徒で有り、まだ人となりを把握出来ていないと言うのが理由である)


 そして、その初めの予想外と言う出来事だが、それは部活動の最終希望を聞く場にて、この生徒Yが、生徒Xと2人で、新たな部活動を発足させたいと、私に直談判した事だった。


 ここで、幾らか補足をしておかねばならない。先ず、前提としてだが、この学校の部活動には3人の生徒が必要だ。部長。副部長。そして、部員。この3人が揃って、漸く部活動として成立する。


 その為、幾ら、この生徒Yや生徒Xが部活を設立したいと申し出ても、人数不足で弾かれるのがオチなのだ。ソレを深く説明したのだが、2人…特に生徒Yの方は不満そうだったのを覚えている。


 何とか説得を試みたが、生徒Yの意思は固く、生徒Xなら兎も角、生徒Yを納得させるのは不可能と言う結論に至ったのも、かなり早い段階での事だった。


 そして、とある事が脳裏をよぎった事もあり、私は部活動創設を手伝った方が早いと気付き、その手伝いをする事になってしまったのだが、本当に上手くいくだろうか。良くも悪くも、生徒Yの思惑はツメが甘い気がする。



 5月△日。


 部活動創設における様々な問題点、その内の1つである、部員数に関しては元より心当たりがあった…と言うより、ずっとその生徒の事を気にしていた。


 その生徒はパソコン部の生徒(今後は生徒Aとする)なのだが、その生徒Aは内向的な性格で、内罰的。兎に角、他人とのコミュニケーションを苦手として、いつも1人だった。そして、部活には全く顔を出していなかった。


 去年は私が担任を勤めていたのも有り、彼についてはよく知っていたし、クラスに馴染もうとしないので、気にかけていた。無論、その家族構成から何かしら事情が有るのも分かっていた。


 かの生徒2人は転校生だ。言ってしまえば、この生徒Aと同じくクラスに馴染んでいない所から始まっている上、あの2人はコミュニケーション能力が高い。この2人なら生徒Aとも仲良く出来るのではないかと言う期待も込め、私は生徒Aを紹介する事にした。


 後、コレはただの私情でしか無いのだが、様々な部活顧問からの生徒Xに対する勧誘に、私自身が限界が来ていたのもある。早くこの件を終結させたかったし、その終結後に他の顧問が難癖つけて、新たな問題が起きる事を避けたかったのだ。


 コレに関しては、予想通りの結果が得られ、無事に勧誘が出来た様で、創設における問題点の1つが改善された。しかし、問題はまだまだ山積みだ。今月中に、終わるのだろうか。



 5月□日。


 事態は好転した…と言うよりも、生徒Xの手腕で好転に持って行ったと言うのが正しいか。生徒Xが生徒会に入る事で、部費に関しては工面が建てられたし、部活動顧問に関しては、同期の夜桜が名乗り出た…いや、この場合だと名乗り出さされていたか…まぁ、その辺りはどうでも良いだろう。


 全くもって恐ろしい物だ。創設に関する問題など、本当に初めから存在していたのだろうか?だったの1日にしてその全てが解決した。思えば、生徒Xが居たのだから、それは無かった様なものではないか。


 恐らく、こんな発想に至る人間が多いからこそ、生徒Xは退屈しているのだろう。何も感じないのだろう。そうだな。気付いてしまっている私だけでも、その辺りに気を付けねばならないのかも知れない。



 6月○日。


 部活動が始まって幾らか時間が経過した様だ。その肝心の部活の内容だが、簡単に言えば『人助け』ただそれだけだ。ただの人助けでは無いのは、その依頼の内容が何であれ、困っていれば必ず引き受けると言う事と、必ず解決はすると言う事。


 校内に設置した依頼BOXに依頼を入れて貰い、その依頼を全て解決するだけ。ただそれだけなのだが、転校生2人が設立してまで始めたと言う事が、大きな話題性を呼んでいる様で、直ぐに噂になっていた。


 とは言っても、そこまで本気にはされていないのか、簡単な依頼は幾らもくれど、難しそうな依頼なんかは全く届いていない様だったのだが、生徒Xが居る時点で、大抵の依頼は簡単の域を出ないのだろう。


 私が紹介した生徒Aも、依頼の解決にかなり尽力出来ている様だ。生徒Yから出された、情報収集力に優れている点と言う要望に、彼が合っていたかは不明瞭だったのだが、この活躍を聞く限り、問題無く要望通りだった様だ。


 活躍も活躍故に、私に来ていた勧誘もナリを潜めた。漸く、数少ない大切な暇な時間を、勧誘と言う物に邪魔されずに済む。この1ヶ月程度の期間に買った本達も、何とか天井に届く前に読み終えれそうだ。


 だが、まだ何か喉につっかえている様な不安がある。ただの思い過ごしであれば良いのだが…



 6月×日。


 久し振りに部活動の様子を見に行ったが、相変わらず依頼は止む事を知らない様で、今日も今日とて、依頼の整理やら、スケジュール管理やらで、部室は慌しかった。


 今は野球部の練習試合の助っ人依頼に手を焼いていた。なんでも、ポジションが肩を痛めた捕手の代わりで、覚える事が多過ぎるだとか何だとか。投手が強過ぎるあまり、正捕手以外だと、生徒Xしかまともに取れない様だ(何故、生徒Xが捕球出来るのかには突っ込まない事にする)


 この様に、いつからか、この部活は学校中の部活動をサポートする様になっていた。特に、生徒Xの活躍が目覚ましく、練習試合の助っ人に呼ばれる事が物凄く増えた様だ。


 相変わらず、和気藹々とした部活だ。活発な部長の生徒Yが意見を出し、冷静な副部長の生徒Xが意見を纏め、優秀な部員の生徒Aが集めた情報を元に、計画を形にしていく。無駄が無く、綺麗に纏まった良いチームだった。



 6月△日。


 梅雨に入り、幾らか経過した頃。同期の夜桜から助けを求められた。内容は、生徒Aが部活に参加しなくなったと言うものだった。また、その理由も分からないと付け足された。


 ソレを聞いてから、授業中や、休み時間にチラリと生徒Aを気に掛けて見ていたが、何も違和感は無いし、変わった事も無かった。ただ、同クラスの生徒Yが避けられている事は明白だった。


 この件に、何も知らない私は介入出来るのだろうか?そもそも、するべきなのだろうか…もしも、その部活動に参加しない理由が、生徒Yを避ける理由が、生徒Xや生徒Yに関する事ならば、私は迷わず介入するが、その理由が分からない今では…


 この件を、生徒Xはどう思っているのだろうか。



 7月○日。


 生徒Aが部活動に参加しなくなってから、2週間程が経過した。生徒Aが居なくなった後も、部活動はコレと言った問題も障害も無く活動を続けている。


 コレは良かったと言うべきなのか、悪く思うべきなのか、部活動が設立される前よりも初めから分かっていた事だが、生徒Aが居なくとも、この部活動は問題無く成立している。そもそも、この部活は2人で完成していたのだ。


 生徒Aが数合わせになるのは目に見えていたし、それが分かった上で紹介したのは私だった…私だったが、実際にその場面を見ると、心を酷く傷めてしまう。だが、それもこれも、ただ私が自己の平穏を優先したからに過ぎない。言ってしまえば、私のエゴが呼んだ悲劇だ。


 もう少し、生徒Aに寄り添っていれば、もう少し、私がどうなるか考えていれば、もう少し、他人を慈しむ心が有れば、何か変わっていただろうか…?



 7月×日。


 梅雨と同時に明けた週。私を悩ませていた全ての問題が解決していた。同期の夜桜に聞いた所、生徒Xとその関係者の力で生徒Aの誤解…と言うか、悩みを解決出来たそうだった。


 それに伴い、生徒Aは無理に自ら他人と距離を取る行為をしなくなっていた上に、性格でも変わったのか、纏う雰囲気が一変していた。後は、時間の経過や、生徒Yが彼をクラスへ馴染ませていくだろう。


 結局は、生徒Xが全て何とかしてしまった。


 生徒Xを頼る運動部達の気持ちが分かった気がする。例え、私が頭を悩ませようと、例え、私が後悔を積み重ねようと、生徒Xならば、どんな事でも解決出来るのだ。初めから深く考えるのが馬鹿らしく思える程に。


 そうか…生徒Xはこうして孤高と言う名の孤立に、身を委ねる事になってしまったのか。初めから、全てを生徒Xに委ねれば、全てが万事綺麗に解決するのだから。


 コレはただの麻薬だ。誰もがその魔力に引き寄せられ、思考を止め、ただ崇め讃える。生徒Xはそれが耐え難く、何よりも辛いんだろうか。嗚呼、最早、私の理解が及ぶ範囲では無い事は確かだ。


 私だけでも、彼を盲信して頼る事のない様にしなければ。尊敬はされなくとも、例え対等で無かろうと、ただ、彼にとって相手したくない人間にはならない様に。


 …いや、そんな事しなくとも、生徒Xには対等な存在が既に居たではないか。


 そうか。だからこそ、生徒Xは彼女の元に就いたのか。初めからか疑問に思っていた。何故、接点も無かったであろう生徒Yの行動に、有無を言わさずついて行っていたのか。出会った時から、彼にとって、彼女は対等な存在だったのだ。


 ……もしや、生徒Xは、自分を普通に扱ってくれる人を求めていたのだろうか…?


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