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配信24枠目 エキストラになってみた。


「嗚呼、それは良い。流石は僕だな。それでは良い1日を」


 そうして、居酒屋の席を立ち、扉へ向かって歩き出す。しかし、その歩みは向かい側に座っていた男が止めた。


「おい待て座れよ。まだ話は終わっていない」


 その言葉を受け、長い溜め息を吐き捨てる。そして、男の方を振り向き、指を刺すジェスチャーもしながらこう言った。


「いやいや、それは君のお話だ。僕には関係ない。それじゃあ、幸運を」


 そうして、扉を開けて居酒屋を後にする。1人カウンター席に残った男は、力一杯に拳を机に叩き付けた。


「はーいカット。次のシーン急いで〜」


 その言葉に、慌ただしく動き始めるスタッフ達。そう、ここはドラマの撮影現場だ。それも、居酒屋から出て行った俺Bことソラさんと、机に拳を振り下ろした弟Bの、ダブル主演のドラマだ。


 その撮影を横目に見れる様な良いテーブル席に、俺。脳筋プロテイン。青くんの3人は座っていた。所謂、エキストラとして。


「ねぇ、ソラちゃん。どうしてここに?」


 それな。何でここにいるんだ俺は。彼はあっくん。職業はスタイリストだ。だからこそ、ここに居るのだろう。なんて言うか、知り合いばっかだなぁ。交友関係が広い訳じゃ無いんだが…


「別に、来るつもりはなかったんだけど、エキストラの人手が足りないって、お願いされちゃったし。それに、この料理も奢って貰ったしね」


 俺達をここに呼んだのはソラさんだ。エキストラの中に欠員が出て、人手が足りなかったんだと。それに、頼めそうな相手が俺達しか居なかったらしい。まぁ、都内在住なら、草津に直ぐに来れる知り合いなんてそうそう居ないよな。そりゃそうだ。


 正直言って、ここの料理は美味しいと有名だからな。料理を食べに来たかった気持ちもある。そんな料理を奢って貰えるなら、椅子に座るくらい全然構わないよとね。


「成程ね。てっきり、替え玉でもするのかと」


「うわ。その話さっきも聞いた」


「さぁ。何の事だか」


 お前等の事だよ。青くんと脳筋プロテイン。エキストラだと言っているのに「偶には寝て過ごす日も良いよね」とか「知らんけど、休みたいんだろ」とか言っていた奴等。


「それより、先生に友達って居たんだなー」


「おい、ちょっと待て。俺の事馬鹿にしてる?友達くらい居ますが?て言うか、お前がその筆頭だろ」


「え?あー。そうだなー」


 待て待て待て。何なんだよその返事は。え?俺達友達じゃなかったの?あくまでも、ただのビジネスパートナー?こいつはひでえッー!ゲロ以下のにおいがプンプンするぜッーーーーッ!!


「それは、友達以上の親友と言う意味で?」


「でも、先生の友達って、学校の時に出来た奴だろ?大人になってからは出来てなさそう」


 話逸らすし色々酷いなぁ!?俺の事馬鹿にし過ぎじゃないか?何?いつも馬鹿にしてた事に恨みでも持ってる?だとしたら大正解だよこの野郎。何で、その事知ってんだよ。


「そうだが?俺の友達は学生時代に出来た人限りだが?」


 まぁ、その殆どは疎遠だけども。友情って、美しいけど長続きしないよね。所詮、友人って言うのはだな。人生に添える花。いつかは枯れて居なくなる存在だから。


「えーっと…その。ごめんね」


「嗚呼、大丈夫大丈夫。悪いのはアイツ等だから。もしも、この3人でどれかしか救えないのなら、迷わずあっくんの手を掴む」


 残念だが、脳筋プロテインや青くんは救えないな。安らかに死んでいってくれ。嗚呼、残念だ残念残念。非常に残念だ。


「うわー!友人差別ー!」


「次会う時は、法廷か刑務所かな。嗚呼、出来れば拘置所がベスト」


「罪おっも。青くんの司法ってどうなってんの?」


 そんな簡単に死刑を要求するなよ。そんな司法だったら、法務大臣の1日が死刑執行の命令だけで終わるわ。オラこんな国嫌だぁ〜!


「どうも。今日はすみません。旅行中で忙しかっただろうに」


 そんな他愛もなければしょーもない話をしていると、いつの間にかソラさんが近くに寄って来ていた。しかも、彼1人では無い。それに加えてもう1人。


「嗚呼。ソラにも友達出来たんだ。作る気ないのかと。友達になってくれてありがとう。ソラって、誰にでも敬語を使うから、あまり友達出来なくてさ」


 ソラさんに加え、ここに足を運んでくれたのは、弟Bだった。恐らくだが、ソラさんの事をよく弄ってるみたいだ。この光景、どこかで見た事あるなぁ…例えばさっきとか。


 なんだろう?この顔って、弄られやすい体質になる運命なのだろうか?いや、運命力とか有り得ないWWW許されるのは必然力だけですぞWWW


 ロジカル語法を役割論理と関係ない場所で使うのはダメか。マナー違反だな。やめておこう。このままでは、俺はただのム○クになってしまう。私とは関係ないですぞ。


 それよりも、この弟B。何処からどう見ても弟のそれなんだよなぁ。見分けはギリギリつく。なんせ、俺は目がね。良いからね。それだけは任せてくれ。


 しかし、声だけで聞き分けろ。そう言われると難しいな。それ程にそっくりだ。確かに、これは弟が間違われても仕方がない。


「…で?どう反応すれば良いんだ?この場合」


 隣に座っている脳筋プロテインや、青くんにしか聞こえない様に、小声で問い掛けてみる。脳筋プロテインには聞こえなかった様だが、青くんは気付いた様で、直ぐに小声で返事をしてくれた。


「…先生。人任せは良くないと思うな」


「…頼ってると言いなさいよ。頼ってると」


 別に人任せにするつもりは毛頭無いんだよなぁ…ちゃんと、出来る限りを考えた上で頼っているんですよね。そこ、履き違えたらダメですよ。笑。


「ん。友達になるくらい全然良いぞ」


「「おぉ」」


 さすが馬鹿!おれたちにできない事を平然とやってのけるッそこにしびれる!あこがれるゥ!そうやって友達を作るんですね。分かります。


「いやぁ、それは助かるね。嗚呼、俺の事は好きに呼んでいいよ。いや、さっきのやっぱりナシ。レイと呼んでくれ。それが1番慣れてる」


 成程ね。呼び名はレイと。うん。名前そのまんまじゃねぇか。まぁ、レイと呼ばれてるのなら、弟の事と間違える事はなさそうだな。弟の名前にレイの2文字は入ってないし。


「レイさんだって」


「…?嗚呼分かってるぞ?」


 念の為、脳筋プロテインに釘を刺しておこう。コイツ、一度言っただけじゃ聞かないからさ。何度でも言うのが安牌だ。


「にしても…ソラの言う通り、似てるなぁ」


 それは、俺の事か?こっちに視線を向けてるし、多分そうなんだろう。前髪あっても分かるってそれ。すごくない?


「前髪あっても分かりますか?」


「え?いや、全然そんな事ないと思うけどなぁ。俺はソラから話聞いてたから分かっただけだし」


 そりゃ良かった。もしも、前髪あっても分かるなら、マスク生活が余儀なくされるし。マスクって慣れてないと結構息苦しくて堪らない。幾ら若くても、堪えるものは堪えるんだよなぁ。


「なぁなぁ。そう言えばさ。何でみんなソラって呼ぶんだ?」


 おい、マジかコイツ!皆が気になってた事ズバッと聞きやがった!スッゲェぜ!これはァ!


 もし、ソラさんの本名が、俺と同じ名前なのなら、彼がソラと呼ばれるのは有り得ない。何せ、俺の名前にソラの文字は入っていない。渾名になる訳がないのだ。


 しかし、現になっている。つまり、あくまでもテレビに出ている名前は芸名。本名とは違う可能性があるのだ。


 なら、何故に俺は楓さんに名前を呼ばれた時、とても気が気でなかったのでしょうか。コレが分からない。やはり、呼ばれ慣れてるからかなぁ。チラッ。


「え?どうかした?」


「いや何でも」


 あまりに露骨な視線だったか、あっくんにバレてしまった。今度からはバレない様に、気を付けるとしよう。


「え?あー。そう言う事か。どうする?言う?」


「別に言っても良いでしょう。それで。一応、芸名で苗字だけは変えているんです。そして、本名の方には苗字にソラが入ってるんですよ」


 成程。そう来たかぁ…どうせ。その本名とやらは、俺の苗字変わる前の名前なんでしょ?少なくとも、ソラが入ってる事は一致してる。


 て言うか、芸名で苗字を変えるだけとかあるんだ。苗字変えるくらいなら名前も変えそうなんだけどな。その辺りが分からない。コレは知識不足ですねぇ。


「じゃ、名前は変えてないのか?」


 はい。ぐう有能。お前は俺の代弁者だ。何でも代わりに質問してくれる脳筋プロテイン。コレは一家に一台必要だろ。


「苗字だけ変えた方が、逆にバレにくいかと思いまして。苗字だけ変えるだなんて、あまりそうは思わないでしょうし」


 まぁ、確かに。例え本名に辿り着いたとしても、苗字だけ変わってるだなんて、そうそう思わないかも知れない。苗字だけ変えるのが、逆にカモフラージュになっているのか。


 ん?なんかポケットが。嗚呼、なんだスマホの通知か。ゲームのスタミナ消費でも忘れてたのかな。もしそうなら勿体無い。


 あっ違う。コレはSNSの通知だ。どうしようか、通知切ろうかな。最近、少し煩く感じて来た。


 いや、本来はもっと早くに思うんだろうが、どうしても通知ってあり過ぎると煩いけど、無いと寂しく感じちゃうもので、オフにしようとは思わないんだよな。


 でも、今後はかなり邪魔になりそうだ。少しの間だけ通知を切っておこう。確かスマホの通知欄から出来た筈。長押しだっけ?スワイプだっけ?え?あっ…


「あれ。先生?どうかしたか?」


「コレは…少しマズいかも」


 さて。芸能界には文春と言う物がある。芸能人の熱愛だとか不倫だとかを扱うのだが、ゴシップと言う意味ではネットにもそう言う物は存在している。


 それが、所謂ゴシップ系動画投稿者等と呼ばれる類の存在なのだが、そう言う動画投稿者はゴシップで再生回数等を稼ぎ、収益を得ているのだ。


 しかも、一度影響力を持ってしまえば、視聴者からのネタ提供もあり「俺は止まんねぇからよ」状態になってしまう。そこまで行ってしまえば、他の配信者からは、それはもう恐れられる存在となる。


 さて。この話を始めた時点で、何と無く今の状況はお察しの通りだろう。この通知、長押しした事で表示が大きくなったのだが、表示が大きくなった事で呟きの全文を読む事ができた。


 当然、呟きの主は少し有名なゴシップ系動画投稿者。そして、その内容を一言で意訳するとこうだ。


『突然失礼するゾ〜^この辺にぃ、面白い話があるらしいっすよ?近い内にその動画を投稿するんで、見てって下さい何でもしますから(何でもするとは言ってない)』


 そして、その文章に付属した動画のサムネイル。このサムネに映っているシルエット。見覚えしかない。どう見ても俺の立ち絵です。対戦ありがとうございました。


 漸く炎上騒ぎが収まったと言うのに、俺はまだ燃えるみたいだ。あっ、間違えた。まだ舞えるみたいだ。さて、一体どんな記事なのだろうか。楽しくはないが、楽しくなって来た。


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