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配信17枠目 ギャンブルで惨敗してみた。


「行ってきます」


「はーい。行ってらっしゃい」


 そうして、俺は制服姿でマスクや帽子で変装した弟を見送る。行き先は残念な事に元々通っている高校。何日か経過した今も、転校はまだ終わっていない。


 とは言え、転校の手続きが終わるのも、片手で数えられる程度の日数。結局は時間の問題だろう。弟が優秀で助かった。試験は無事に合格だったし。


 一応、伝えておくが、元々通っていた高校と言えど、別に授業を受けに行く訳ではない。どうせ、今からじゃ、授業を受けたところで、転校先で何が変わる訳でも無い。今回は転校の手続きをする為に向かったのだ。


 今回、弟は転校先として、普通の高校を選んだ。何でも「1番近いから」との事。俺としては、もう少し選り好みして欲しかったが、弟が決めた事なので反論は口にしない。


 今の現代社会では、学歴と言うものはかなり大事な訳で、どうせ、最終的に大学に進学するのは変わらないだろうが、それでもどこの高校なのかは面接官に確認されたりもするだろう。


 まぁ、それを社会に進出した事の無い俺が言うのは変だなと、自分でも思ってしまう。しかし、学歴は良ければ良いほど、就職に於いて有利であるとは間違いない筈だ。因みに、自信の程は有りません。


 だって、SNSの情報を鵜呑みにした感じ、学歴は就職にそこそこは影響すれど、学歴で採用か否か決まるって程ではないと言う印象を受けた。結局は、面接官の印象次第で有り、どれだけ優秀であろうと、印象が悪ければ落ちるのだ。多分ね。


 と、これ以上長々と語ると、それこそ、俺が学歴厨みたいに見えてしまう。それは避けたいし、俺も学歴云々に関して、特別詳しい訳でも無いので、話はここで終わり。それよりも大事な事があるのだ。


 弟Bの住所バレ事件。この事件、弟が弟Bと勘違いされた事で起きた事なのだが、引っ越しした事で収束に向かっているかと思いきや、何故かそうではない。


 住所を流したのは、弟の高校の誰かであると予想しているのだが、弟が授業に出席しなくなまた事で、その誰かに余計な確信を持たせる結果となってしまっていた。


 実は弟Bがメディアで、お酒を一度も呑んだ事や、タバコを吸った事、車を運転していた事などの、成人していると証明出来る行為は一回もしておらず、弟Bには未成年疑惑も存在しているのだ。


 だからこそ、今回の様な良く分からない事件も発生出来てしまった様だ。何故、成人済みの人が、高校に通っているなんて疑いを抱かれるのか。芸能界って、年齢を偽るくらい普通なんですかね?誰か教えてくれよ。


 何も終わりが見えないまま、その界隈で燻り続けているこの住所バレ。どうにか、早く終わってくれる事を願うが、一朝一夕ではいかない事だろう。


 結局のところ、最終的に事件を解決に向かわせるのは、いつも時間の流れなのだ。今回も、最後にはそうなるだろうし、そうなる事を強く祈っている。


———

——


『よっしゃあ!復活の俺!どうも。ミカくんだぞ』


「うっしゃ。俺は色々疲れた。どうも。秘書です」


 そんな挨拶で配信が始まる。あの事件以降、これが脳筋プロテインは初めての配信だ。なんせ、都合が合わないものでして。だから、仕方ないよね。


《コメント》

【おひさ】

【生存確認】

【こんばんわ〜】

【なんか秘書になってて草】

【何があった】

【まぁ、確かに編集者にしては関係ないところでも働いてるよな】

【秘書も強ち間違いじゃないの草】


 やはりみんなもそう思うか。分かるぞ。俺もそう思う。結局、ゴールデンウィークの旅行も、ホテルは俺が予約したし。まぁ、その分良いホテルにさせて貰いましたけどね!悪く思うなよ。


「と、言う事でね。今回は雑談中心と言う事で、ア○ビ大全で色々遊んでいきますよ」


『1戦3分も要らねぇぜ。一瞬でボコってやる』


 それフラグだけど大丈夫そう?お前の無様な負け姿を全世界に放映してやるよ。


 因みに、キャプチャーボードで画面共有しており、俺と脳筋プロテインの、2人分の画面が配信には映っている。コレで視聴者は、さながら、デスゲームの観客の様に楽しみ放題と言う事だ。


《コメント》

【フラグが立ったな】

【秘書は意外と賢いぞ。お前じゃ無理だ】

【多彩だからな秘書は】

【結構な高スペ男】

【その全てを中身で打ち消してる】

【寧ろ、マイナスに超過してる】

【やはり、終わってんだよなぁ】

【この流れすこ】


 ひっでぇや。俺の事サンドバッグか何かと勘違いしてそう。俺は襖だぞ(?)破れたら張り直すしかねぇからな?


「で?どれからする?」


『ブラックジャック!ブラックジャック!カッケェじゃん!ブラックジャック!』


 子供か?何?俺、親戚の家にでも迷い込んだ?甥っ子の世話をさせられてる気分。まぁ、甥っ子の世話なんて、させられた事ないけどさ。


「じゃあ、始めようか。ルールは分かる?」


『大丈夫!任せろ!21を作れば良いんだろ?』


「まぁそうね。21を作れれば最高なんだけど…ね?』


 そう簡単に作れる訳ねぇだろ。ふざけてんのか?どうせ、ルールも理解してないんだろうな、コイツ。まぁ、どんだけ無様に負けようと、あくまでも本題は雑談だからな。問題あるまい。


《コメント》

【おいおい死んだわアイツ】

【絶対にダブルしそうなアホ】

【ダブルス戦法じゃん】

【ダブルス戦法アホ過ぎて好き】

【馬鹿が考えてそうだな、その戦法】

【名前からしてもう馬鹿】

【あくまでも、優秀なのは秘書だけ】

【性格に難有りだぞ。その秘書】

【優秀ならオッケーです】


 さて、さっさと始めよう。え?賭け金は当然満額だか?ビビるな。もしもの時は借金をしろ。借金語らずにギャンブル出来るかよって話。


 まぁ、借金知らずともギャンブルは普通に出来るし、借金してまでギャンブルはしない方が良いですよ。俺の知り合いに居ます。ギャンブルに人生賭けてそうな人。


「で。雑談を始めていくんだけどさ。その前にお知らせをば」


『俺と先生。ゴールデンウィークの4日間は旅行行くから配信しないかも。もしかしたらやるかもだけど、基本しねぇわ。よっしゃ。ブラックジャック』


 は?おいちょっと待て。何でこの流れでブラックジャックしてるんだお前。え?ダブルしてただろ。何でそうなるんですか?どう考えても飛ぶ場面でしょ。


《コメント》

【は?】

【え?】

【おいおい】

【待て待て】

【情報量ェ…】

【情報量で殴らないと生きていけないのかお前等は】

【本当にダブルだし、それでブラックジャック決めるはアホ】

【運任せじゃねぇか!】

【何で18からダブル出来るんですかね…】

【↑馬鹿だから】

【誰か旅行について触れてやれよ】


 それな!何の為の雑談配信だよ。別にブラックジャックの為じゃないんだぞ。ブラックジャックはオマケだからな!


「つ、次は負けねぇ!」


『幾らでも来いよ』


 余裕綽々じゃねぇかウゼェ。コイツ、何で21になったのかも分からない癖に、俺の事を舐め腐りやがって…運ゲーじゃ無ければ勝てるもん!


「一応、予定では草津の方に行くんだけども、なんかお勧めの場所とかある?因みに、オフ会はしません。0人になりたくないので」


 いや、1人追っかけて来そうな人が居たな。まぁ、でも彼女は高校生(多分)なのでね。グンマー帝国にまでは来れる訳ないでしょ。うん。


『草津温泉とか、趣味渋いよな』


「お前じゃい!」


 知ってるか?コイツって結構趣味渋いんだぞ。温泉好きだし、将棋も囲碁も大好きでそこそこ上手い。ついでに早朝の散歩が日課らしい。


 因みにだが、かなりの酒豪で日本酒が大好き。ベロンベロンに酔いながら配信してる姿見たら、流石に笑っちゃうよね。


『煩いぞ。お黙り。はいブラックジャック』


「はぁ?」


 何?舐めてんのコイツ?俺の事馬鹿にしてる?


《コメント》

【またしてもダブルス戦法で草】

【なんか、ダブルス戦法強くない?】

【ブラックジャックってこう言うゲームか…】

【全然違うゾ】

【アカン。わろてまう】

【お前。もうカジノ行けよ】

【カジノの方が、配信するより儲かりそう】

【それはそう】


 だから、旅行!旅行の話に触れてよ!誰か触れてくれよ!何の為の雑談配信だよ!


「漸くこのラウンドが終わったな。このゲームで初めて見た点数だわ舐めてんのか。こんなんやめやめ。テキサスポーカーしよう」


『いいぞ。ルール教えてくれ』


「コールしてたら良い」


 負け顔晒させるまで終わるかよ。借金しろ借金。さっきはお前の所為でドベだったんだよ。許さねぇからな。レイズは……俺が安易に賭けられなくなるので無し。


《コメント》

【おい!待て!】

【酷過ぎて笑う】

【ちゃんと教える気ゼロで草】

【コールセンター戦法させるの酷い】

【コールセンター戦法で草】

【コールしかしないんだろうなぁ…】

【あまりに酷いネーミングセンス】

【ルール知っててもコールセンター戦法してそうだから問題なし】

【ルール知ってたらレイズだろ…】

【めちゃくちゃ馬鹿にしてて草】


 因みにだが、俺はポーカーが大の得意。まぁ、ポーカーをやる相手が居ないのだが。でも、少なくとも、ルールを知らずにコールしまくる奴には勝てるでしょ。


「後さ。最近人生が楽し過ぎるわ。弟との同居は良いぞ。同棲って言いたいくらい楽しい」


『ほへ〜。旅行の話はやめたんだ』


「誰も興味無さそうだし?じゃ、今回は俺の勝ちだねフォーカード」


 コレに勝てる奴いる?居ねぇだろ。コレが俺の本気ってもんなんで。舐めてもらっちゃあ困りますよ奥さん。


『良かったな。でも、俺の勝ちらしいぞ?』


「え?」


 おまっ!マジかよ!ストレートフラッシュ?冗談じゃねぇ!何でルール知らねぇのにそんな事になるんだよ!


 はぁ!?しかも、ふざけんなテメェ!満額からのコールばっかで、配当がヤベェ事になってんじゃねぇか!良かったー。レイズを教えなくて。


《コメント》

【草】

【コレはしゃーない】

【そら間抜けな声も出るわ】

【フォーカード。強いんだけどなぁ…】

【ストレートフラッシュとか、そうそう見れるもんじゃ無いんですが…?】

【レイズを教えなかったのはぐう有能】

【やはり秘書は有能なんだなって】

【だとしても、負け犬属性が極まってて好き】


 何なんだよ。負け犬属性が極まるって。初めて聞いたわそんな言葉。俺の事馬鹿にしすぎでは?いいか?脳筋プロテインを馬鹿にするのは良い。だが、俺を馬鹿にするのは許さん!


 尚、この後も俺は惨敗したらしいよ。あっ。将棋や囲碁。チェスなどの運ゲーじゃない物は勝ちました。まぁ、当然。


———

——


 弟side。


 この学校も、後数回来ないのだろうか。そんな事を考えながら、僕は廊下を歩いていた。今は授業中じゃないので、廊下の端々に人が何人か屯って、談笑を弾ませているのが目に入る。


 その人達からの挨拶に、当たり障りの無い返事を返して、僕は職員室へ向かう。学校へは母と合流してから来たのだが、用を足す為に少し寄り道していたのだ。


 キーンコーンカーンコーン。


 渡り廊下に差し掛かった辺りで、授業前の呼び鈴が鳴り、廊下の生徒達が慌ただしく走り出す。それを横目で眺めながら、僕は渡り廊下の先に立つ人物に目を向けた。


 こちらに気付いている様で、話していたであろう友達の後を追わず「先に行ってて」と、言葉を交わして、自分1人だけこの場に残る選択をしていた。


 そして、他の生徒達が急いで教室へ向かう中、僕の視線の先に居る人物は、焦っている様な顔でコチラを眺めている。僕は「ちょうど良かった」と思いながら足を止めて、10メートルくらいは離れている距離でその人物に声を掛けた。


「呼び鈴は鳴ってるよ。授業には出なきゃ」


「…な…何で……」


 怯えた表情を浮かべ、後退りを始めるその人物。それは、あの放課後の時に僕を問いただして来た後輩だった。自分から残っておきながら、この場から逃げようとしている様で、ゆっくりとした後退りは、今も尚速くなる一方だ。


「何で?何でって。それは転校する為だよ。少なくとも、今の家には住めなくなったからね。今のまま住んでいたら、僕があの画像の人で無かったとしても、勘違いされてしまうだろうから。コレは仕方ないんだよ」


 わざと強い罪悪感を持たせる様な言葉を掛け、彼女を怖がらせる。酷い恐怖心は彼女の顔に現れ、後退りすらも出来なくなってしまったのか、その場に立ち尽くした。


 兄は、僕が彼女にどう言う言葉を掛けるのか分かっていた様で、あの場では無かった話にされてしまったが、今と言う恵まれた状況になったのだから、当初の予定通り遂行すべきだろう。


 そうでもしないと、彼女は再び同じ事を繰り返す可能性がある。例え、小さな悪戯心。自分を見て欲しい承認欲求。世論を操りたい話題性に釣られたとしても、僕や家族に迷惑を掛けた事は理解して貰わないと、それは公平であると言い難いだろう。


 だからこそ、彼女と言う杭が飛び出し、他の大人数に袋叩きにされる前に、僕が自分の手で打たせてもらう。実家の住所を、俳優の住所として漏らしたその時点で、それはもう、鳴いてしまった雉なのだから、撃たれてしまうのは当然の摂理だ。


「大丈夫。別に気にしてなんかないよ。たった1回引っ越して、たった1回転校するだけなんだから。それ以上、余計な事をする人が居ない限りはね」


「で…でも……!」


 何か言いたい事があるのかと、暫くの間待ってみるが、何も言葉は聞こえて来ない。でも、それは当然だ。彼女は一言も喋っていないのだから。


 全くもって理解に苦しむ。「でも」と言ったのだから、何か言いたい事があるのは確実なのに。本人に言う気がない。このままではただの時間の無駄だ。


「話が終わったなら、もう行っていいかい?人を待たせてるんだ」


「…あ…あの…」


 僕が職員室へ向かおうと、彼女が立つ方向へ足を踏み出した時、彼女は申し訳無さそうな顔をこちらに向けた。雰囲気から察するに、この事を謝ろうとしているのだろう。しかし、それでは彼女の罪悪感が薄れてしまう。彼女には悪いが、謝罪の言葉は受け取れない。


「待った。この話は、君が謝ってお終いでは無いんだよ。謝った事で引越し費用や、転校費用が帳消しになる訳でもないし、君が謝ったところで、君が世に放った疑念が消える訳でも無い。暫くの間、僕の実家は不特定多数に観察され、僕自身も街中では顔を隠さないといけない。全ての責任も取れないのに謝られても困るよ」


 少し話を盛りすぎたか。引越し費用なんて電車代の微々たる物だし、別に実家が不特定多数に観察される事も確定ではないだろう。しかし、罪悪感を持たせると言う意味では上手くいった。それは彼女の表情を見れば一目瞭然だ。


「それじゃ。さっきも言った様に人を待たせてるから」


 今度は、彼女からの静止の言葉は放たれない。背後から膝を地面に落とした様な音が聞こえたが、僕には関係のない話だ。それこそ、腰が抜けたのなら、ここは人通りが多いから、10分もしないうちに先生や用務員に見つけて貰えるだろう。


 コレで、報復というにはあまりに細やかで可愛らしい物だが、彼女への報復が終わった。もう、この高校でやり残した事はない。新しい高校では同じ様な結果にならない様、十分に気を付けないと。


 そう強く胸に決めたこの春。校門の桜は満開に咲き誇っており、後1週間もすれば直ぐに散っていくだろう。だが、それも、この高校の学生で無い僕には関係のない話だ。もう、どうでも良い話でしかなかった。



 もう直ぐ1章が終わるので、軽いキャラ紹介でも作ろうと思っています。


 何か知りたい情報が有れば、感想でも何でも送って貰えると助かります。


 例え、無茶な質問でもしっかり答えるので、気が向いたらどうぞよろしくお願いします。


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