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悪逆皇女の始め方  作者: 濃姫
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攻略対象その4

 走り込みに息切れせず日常的に呼吸を止めることができるようになった憑依1年後。ついに歴史的大飢饉が起きた。


 帝国の被害も小さいとは到底言えなかったが皇女名義で買い叩いていた食料を定価で売ったことにより民からの印象は最高潮となった。


 第一皇子勢にこの大飢饉を予測できたものはおらず、私から定価の十倍で買い上げるという汚泥を飲む結果となった。

 それも民に配る予定だった食料であったためにこちらは民の不評を盛大に買ってしまった。つまりは私の一人勝ちである。


 そして宰相が陛下に進言し、極秘に進めていたレオノール王国侵略計画は順調に進み大飢饉への対策に間に合わず経済が破綻したレオノール王国は綿密に準備してきた帝国に為すすべはなく、半年もかからずに属国と化した。


 王族は外交で国を離れていた第一王子とまだ胎児であった第四王子以外皆殺しとなり、また彼らはレオノーラ王国の代表として帝国の貴族入りが決まった。


 本来であれば敗国である王族全員が皆殺しである。しかしこれは私が宰相に進言した制度。前世の歴史書にあったのを思い出したのだ。


 王族全員を処刑しては、民への反感心を高めるだけである。しかし1、2名ほど残すことによってまだ希望はあると惑わせる。さらに生かすことにより帝国の寛大さを見せつけることにもなる。これが最善にて最良である、と。


 今回の件については、私の完全勝利である。この計画が成功したことによって私は大々的に陛下に褒章され、宰相との繋がりもできた。民からの忠心も余すことなく受け入れた。


 さらに私が戦争の指揮を担当したことで圧勝した事実は劇的に印象付けされ一種の有名談となり舞台にもなった。

 智に優れ、真に民を思いやり、カリスマを持つ。何故今まで【無能皇女】と呼ばれていたのか研究者の間でも議論になっている。


 見る人に見れば私は「悪」だろう。始めてから全てを知っていて本来回避できる未来を利用した。私が隣国を助けようと思えば帝国の利益が少なくなろうと戦争をせずに済んだ。


 それでも私が戦争に起こしたのは、ただひとえにゲームの展開通りになるのが気に入らなかったから。

 ゲームでは大飢饉の影響をあまり受けなかった他国がレオノーラ王国を支援しその影響でかなり親しい関係を結んでいた。


 だけど私は、一刻も早く攻略対象その4である「王子」を消したかった。しかしここで厄介だったのはゲームでの名称が『隣国の王子』だったこと。


 だから4人いる王子の中で誰が攻略対象だったのかは分からない。設定も学園の生徒ではなく秘密裡に潜入していたというため年齢すら分からないという訳だ。本当にふざけた設定である。この設定のせいで私がどれだけ悩んだことか。


 しかも私は攻略対象その3までしかしていない。未攻略のキャラクターは影のシルエットで映されるためその姿も確認できず。


 友達に聞いた特徴はレオノーラ王族全員にある特徴のため役には立たず…。もう一度言おう。本当にふざけた設定である。


 褒章のための式典が終わり、本格的に私が皇位継承者に名乗り上げたとなれば、真っ先に諸手をあげて喜んだのは皇后である。無能で役立たずであった皇女にようやく価値が生まれたことに歓喜言いまわっているらしい。


 私も実際部屋に呼ばれて道具として褒められた。なんの価値もないただ遺伝子上の親というだけで。

 これほどまでに不愉快なことがあろうか。皇帝になったら真っ先に消してやろうと誓った。そして、私は敗戦国の第一王子ヴェルナスの監視という名目で側使いとして任命した。

 

 流石まだ8歳という幼子であるが王子であっただけある。感情を隠すのが上手く祖国を破滅に導いた私に跪き忠誠を誓う仕草に一切の隙は無い。


 にっこりと愛想の良い笑みで背後を狙う第一王子、ヴェルナスは見ていて飽きない玩具のようだ。

 だからあえて私は隙を見せることにした。変な派閥の者を側近に迎えるよりは考えが見え透いている者のほうが気が楽だから。


 次の計画はもう決まっている。大国一の商業国、マルケイドの市場占領である。ここは商人たちの結束が固い分年数を踏まえる必要があるため今のうちに手を付けておいた方がいい。


 それについての報告書を宰相に出し議案に持ち出さなければならないためようやく使えるようになった部下と急ピッチに進めている。

 ヴェルナスにも簡単な事務作業を与え帝国語も順調に習得しているようだし、最近では剣術の良い練習相手になっている。


 最初は講師から猛反対されたがヴェルナスの剣の才能は天性のものでありここで失わせるには惜しいものを感じたため私が半ば強引に押し進めた。

 もちろんヴェルナスは模擬戦に乗じて私を殺す浅はかな性格ではない。きっと折を見て10か、20年後に事故死として処理されるよう殺すだろう。


 それは一種の信頼にも置けるものであり下手な忠誠より信用性があるものだ。

 やはり好敵手がいるというのは良い刺激になるというもので講師に教えてもらった技を試す練習台としても良く機能していった。



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