タイムマシンの運命
「はっ!?」
うなされていた男は夢で何かをしていたようだったが、何も思い出せずにいた。
今まで、趣味で何かを作っていたはずなのだが、どうにも思い出せない。
ふと時計に目を移す。普段より1時間も遅く起きてしまったのだ。
「あ、ああ...まずい、もうこんな時間だ、メーカーとの会議に遅れる。急がないと!」
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これには、話を未来に遡る必要がある...
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「あいてて...」
私は科学者。タイムマシンを作り未来までやってきた。
どうやら実験は成功したらしい。
「おや、見慣れない服装の方、大丈夫ですか?」
奇抜な髪型をした男がずいぶんと早口で話しかけてきた。
「ああ、大丈夫だ。てて...ここは何年何月何日だ?」
奇抜な髪の男は不思議そうに答える。
「何年...?ああ、あなたは過去からやってきたんですね、私はエフ。あなたは?」
「ハストだ。もし良ければこの世界を案内してくれないか?私は未来の世界をどうしても見たくてここまでやってきた」
私にはエフが軽く頷いたように見えた、扉のようなものを指してこう言った。
「わかりました。私の家にあなたが来たのも何かの縁でしょう、どうぞ」
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エフと一緒に外に出ると灼熱のような暑さを感じる。
出た途端に汗はダラダラ。全身の毛穴という毛穴から汗が吹き出すのを感じる。
横に視線を伸ばすと、エフは汗1つかいていないように見える。
エフは少し残念そうな顔をし、独り言のように小声で呟いた。
「やはり、こちらの時代に来るのが早すぎるのかもしれませんね...」
私にはそれを理解するよりも、この暑さから逃れたい一心で近くに駐車されてあった車のようなものに乗り込んだ。
エフは考え事をしていたのか、私が車に乗り込んだのに気付かなかったようだ。
車の中はとても快適、涼しい。未来の車であるものの、私が以前乗っていたそれと同じような操作感に見える。
「恐らくこれがハンドル、これがブレーキか。おや、ここにあるボタンは...?」
そう思い、ボタンに手を伸ばして押そうとした瞬間。
とてつもないGが全身を襲う。車が動き出したのだ。
訳のわからないまま車は前を走っていく、周りの景色のすべてが認識できないほどの超高速だ。
「ああ、あああああ...ああ!!」
車を止めたいが、強烈なGでまともに動く事ができない。
そうしている間にどこかに衝突したであろう車は止まり、私は気を失ってしまった。
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しばらくした後、車のようなものに乗って追いかけてきたエフが事故現場に到着する。
「やはり、この世界を見せるべきではなかった。過去の人間が認知、判断、操作のスピードが遅いという文献はその通りだったか」
未来の車は、認知、判断、操作のスピードが早くなった新人類に調整されていたのだ。
当然、現代の人間に扱えるわけがない。
少し考えた後、エフは空を仰ぎ見ながら決断する。
「よし、この男は過去へ戻そう。彼にとっての未来である今を脳が記憶したパターンは消すのはもちろん、タイムマシン制作に関する記憶も消した上で過去へ戻す必要も出てきた。やれやれ、せっかくの休暇で家に戻ってきたのに全く面倒な事に巻き込まれた」