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【補助魔法士】ラックは仲間と幼馴染から追放されてしまったので辺境でひっそり暮らしたい【増量版】  作者: えん@雑記


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005 非ヒロインな人間嫌いの毒舌エルフの子

レギンスマナアップ(魔力ブースト足)

「あっ…………これは、その、気持ちいい。……かもしれないな」



 場所は再び戻ってミリアさんの家。

 温泉で匂いと汚れを洗い流してから足を引きずるミリアさんの家に戻り、補助魔法をかける事になったのだ。

 僕としては治療ではなくあくまで補助ですよ? と言ったのだけど。いいからかけて。と、言われたのでこの状況になる。


 ミリアさんの甘い声が聞こえちょっとドキっとする。

 僕はうつ伏せになったミリアさん右足の太ももを触って補助魔法をかけた。息を吐きちょっと上をみればお尻の丘がちらちらと。


 知らない人が見たらいつも補助魔法使うのに女性にも触ってるんだろ! って言うかもしれないけど、僕が補助魔法をかける相手はいつもお爺さんやお婆さんが多い。


 それも腰や肩が多い。

 ミリアさんみたいなちょっと若い人以下の人に掛けた事はない。その理由は簡単で触られたくない。との事。


 ミリアさんのお尻を何度も見た後に手を離した。



「はい、終わりです」

「…………もう終わりか? 魔力切れ……という奴か?」



 魔力切れじゃなくて回数の問題なんだけど。

 僕に補助魔法を教えてくれた師匠からは、補助魔法の効果時間は人によって違うと思うよ? 効きにくい人もいるだろうしねぇ。かけすぎても死にはしないと思うけど……まぁ、死にはしないと思うよ? と何故か二度言われている。


 どうしよう。


 僕としては魔力切れ特有の疲れはない。

 と、いうかそもそも魔力切れの疲れをした事がない……サーリアなどは脱水症状の後に全力で走って煮詰めたハチミツを飲んだ気分が段々と強くなるの。それで最後に魔法が発動しない。と、言われたことがある。

 冒険者ギルドで会話した他の魔法使いの人もおおむねそんな感じだ。


 一度は味わうべきなんだけど、そもそもそんなに補助魔法をかける相手もいない。



「かけすぎると良くないというか、少し時間を置いたほうがいいかも…………たぶん」

「煮え切らないな。いや、文句を言ってすまなかった。ええっとラックさんだったな」

「……さん? ええっと何か変な気分がしますね。ここは一つラックたんで」



 もちろん冗談だ。



「ラックでいいかな」

「あっはい……」



 外したらしい。

 ミリアさんの顔が険しい、場をなごませようしただけなのに。

 こういう時どんな会話したらいいんだろう、っていうか僕は今日どこで寝れば。




「とにかく。助かった、足の痛みも軽くなり足首も自由に動く感じがする」

「どうも……あくまで補助魔法ですので、自身の肉体の限界以上は力は出ませんし、定期的に行えば走るぐらいはできると思います」



 師匠から教わった説明が口からすらすらでる。

 あくまで()()()()は回復魔法じゃないよ君。と言う師匠の顔が思い浮かんだ。今はどこで何をしているのかは知らない。



「何にせよ杖無しで歩けるのであれば気分がいい」

「後はですね……」

「まだ説明があるのか?」

「はいっ! 補助魔法で限界を引きだした状態なんですけど、その人物の限界を超えすぎると体に負荷がかかりすぎて逆に壊れる場合が……あっ! だ、大丈夫です。今回は僕の魔力を少なくしてますし、負担になるような事はしてないです」



 たぶん。

 そもそも人の限界が何所までなのか僕にはわからない。

 師匠に聞いた事はあるが、師匠も人によりけりで知らないよ? と、軽い感じで返された。



「その辺は信じるしかないか……。でいくら必要だ」

「はい?」

「いくらだ。と言っているんだ」

「ああっお金!」



 思わずポンッと音を立てて手を叩いてしまった。




「そうだ。これでも貯えはある。一般的なヒーラーの相場も知っているつもり。値段を言ってくれないか?」



 言え! と言われても……善意だし。

 そういえば一般的なヒーラーの相場は僕は知らない。

 よくサーリアが他のパーティーに頼まれて魔法を唱えた後に、グィルとツヴァイがそのパーティーに向かって行ったけど、徴収していたのだろうか。



「ラック、君は相場を知られていると知ったら、無言はよくないな。金貨十枚、私としては相場の倍と思う、それでいいかな?」

「ええええええええええええ!」

「っ!」




 僕が驚いて叫ぶとミリアさんが耳を防ぎだした。

 金貨十枚って十枚だよね? 宿にいた時、泊っているお祖母ちゃんの肩こりを治した時は銀貨一枚だよ!? ダンクさんの腰痛をやわらげた時は夕食に林檎のかけらが一つ増えただけだし。

 ここまでの旅費がたった1回の補助魔法かけただけで終わってしまった。

 もしかして僕の事をからかっているのかもしれない。

 ほら、僕の村でも行商人のおじさんが、珍しくもないお菓子を売る時に100万ゴールドだよ。って良く冗談を言って来たし。




「見かけによらず交渉術を使うんだな、二十枚だ。これで文句はないだろ?」

「ぶええええええええっ!」

「煩い」

「す、すみません」



 増えた。

 増えたよっ!



「払う代わりに、その迷惑な願いと思うが、もう少しこの足に補助魔法をかけて欲しい。それ込の値段だ、それとも何か予定はあるのか?」

「無いです」

「そこははっきり意思表示するんだな」



 イジメられてるのだろうか……。

 でも、予定はないし……ここに十日ぐらいのんびりして、後は別の街で冒険者……出来るのかな。その予定しかなかった。



 僕が黙っていると、テーブルの前に金貨が重ねられていく。

 丁度二十枚。

 節約していけば100日は暮らせる。

 え、あと3回で1年は遊んで暮らせる……。



「もしかして追加でかけるには足りないか?」

「たります! あります!! そ、それよりも本当に……いいんですか……いや。あの! やっぱいりません!」



 これじゃ押し売りだ。

 そりゃ魔力や魔法は貴重かもしれない、でも僕がミリアさんの足にかけたのはお金のためじゃない。僕が人の役に立ちたかったから。



「わかった。見かけによらずに肉食系なんだな……こんな辺境ではお金もいらないか。それはそうかもしれない。私の考えが浅はかだった」

「えっ!?」

「じっと見られるのは、私でも恥ずかしい。それにしても……歳をとっているが私の体を要求とはな」



 え!? えっ!??

 ミリアさんが立ち上がると、勢いよく上着を脱いだ。

 傷だらけの体で大事な部分は下着は付けてある。次に下のズボンを脱ごうとしている。



「まってまってまって」

「…………なんだ。着けたままのほうがいいのか?」

「はい! ………………じゃなくて。違います」

「じゃぁ私は何を返せばいいんだ!」



 ミリアさんがドガっとテーブルに座ると腕を組んでにらみだした。

 と、言われても……。

 元気な足でテーブルの脚を小さく蹴ってるみたいだ。コンコンコンコンテーブルが揺れ始めている。



「どうせ私の体は傷だらけ、女の価値もないのかもな」

「それも違います! すごく綺麗でした」



 傷はあったけど、それがどうした。というぐらいに綺麗だった。

 引き締まった肉体は戦いの女神、そういうイメージが僕の頭の中で浮かび思い出す。



「そ、そうか……ありがとう……」

「っいえ……」



 お互いに何故か沈黙してしまった。




「ママ大変!!」



 ミリアさんの家の扉が叫び声とともに開いた。

 女の子が入って来てミリアさんの胸に飛び込んだ。



「ま……ま……?」



 それはまずい。

 ママと子供がいるという事はパパがいるからだ。


 知らない男が家に入ってベタベタと妻の体を触っていては不味いだろう、しかも半裸も見たのだ。こんな傷だらけで戦闘狂にみえるミリアさんの旦那はきっとジャイアントベアーぐらいな体系できっと顔にも傷が何本もあるような男に違いない。



 わかった。



 これは罠だったんだ。

 仮に僕が先ほどの誘いに乗っていたら、そんなパパから『俺の妻になにしてくれてんじゃ?』と出てくるに違いない、無一文の僕はミリアさんに一生補助魔法を使い続ける、それでも用が終わったら温泉に埋められるのだ。



「客の前だよ、クアッツル」



 たしなめるように女の子にいうと、女の子は僕を見て小さいスカートを摘まむ。



「あら、お初にお目にかかります。エルフのクアッツルと申しますわ。クソみたいな人間」



 あれ。聞き間違えたかな? こんな可愛い子が変な言葉を言っていたような。気のせいだよね?



「ど、どうもラックです…………エルフ!? ママってあのミリアさん人間ですよね、旦那さんがエルフだったんですね、ええっとおめでとうございます」

「私は未婚だ」



 エルフのクアッツルは僕に微笑むと床にペっ! と唾を吐いた。

 突然唾を吐くとか、道でもしないよ。



「もしかして、エルフの挨拶って唾を吐く事……ごめん。僕も急いで吐くよ。かぁあああああっ」



 ドン! とテーブルが叩かれた。



「ラック! ここは私の家だぞ!」

「ええ、ですから。里に入っては里の掟にしたがとうと……今吐きますから邪魔しないで下さい」

「唾を吐くな! と言っているんだ!」



 ミリアさんが怒鳴ると、エルフの少女が耳を垂れながら謝ってきた。



「ご、ごめんなさいママ。この人間が喧嘩を売ってきましたので買ってしんぜようと、今拭きますので」

「売っているのはクアッツルだろうに、すまないがクアッツルはちょっと人間が嫌いな所がある」

「あら。ママ聞いてくださいまし、わたくしは人間が嫌いのではなくて、つまらない人間が嫌いなんですよ? こんな黒髪で暗そうな冗談の一つも言えないような人間にはツバですら温情ですわよ」

「はぁ」



 冗談とか知らないし――。

 悲し気な顔のエルフの少女はハンカチを出すと床に吐いた唾を拭きとり始めた。



「クアッツルは辺境エルフの子だ、なぜか私の事をママと呼んでな……で、何があった?」

「あっそう! ママ逃げて。はぐれスライムが暴れてるの」

「まずいな……」

「倒せばいいんじゃ?」



 僕が案をだすと、クアッツルの耳が上下動くと次に睨まれた。



「倒せる物なら倒してますわよ! ママ。なんなのですかっこの人間は」

「…………なんなんだろうな本当に」

「…………なんなんでしょうね本当に」



 僕とミリアさんの言葉がかぶった。


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