002.5(冒険者ギルド職員リン視点)リンは高収入の彼氏が欲しいです
王国中央に位置するアスカルラ王国。
外には大小さまざまな魔物がいたり、自然発生や突然発生などのダンジョンもあったりするけど比較的平和な国。
ここ百年ちょっとは大きな戦争もなく、いまは亜人とも表面上は和解した国として発展中だ。
そんな国での冒険者ギルドはとても大盛況。
そこで働く人は皆の憧れの的! なはずなのに気づけば更衣室で下を向いていた。
「リン、何ため息ついてるのよっと!」
「いっ! ったあああ……背中! 背中叩いた!?」
振り向くと同じ冒険者ギルド職員のスミレが背中を叩いてたのがわかる。
高身長で私を見下ろしてくると、しれっとした顔で私に向き直る。
「叩いてないわよ?」
「嘘言わないでよっ! 背中アザになってない? なってるわよね?」
「………………なってないわね」
絶対に嘘だ! 隣のロッカーを開き着替え始めるスミレの尻を思いっきり叩いた。
「あんっ」
「………………」
「情熱的♪ 今夜一緒のホテルでもどう?」
冗談はよして欲しい。私はノーマル! ドノーマルで彼女よりも彼氏が欲しいのだ。
「半分冗談よ。それよりも昼間のあの子残念だったわねぇ、それで落ち込んでいるんでしょ?」
「く……だてに同期じゃないわね」
全て見抜かれていた。
昼間のあの子というのは。冒険者パーティ名、双剣の翼のメンバーラックさん。冒険者ランクはDであり得意な魔法は……補助魔法? そんな専門魔法使いは珍しくまれにみる変わった魔法使い。
黒髪で誠実そうなだけど、同じパーティーメンバーである回復魔術師のサーリアと親し気なのを何度も確認していた。
でも。
私の調査で恋人ではないのはやっと確認しおえ、今度会えたら食事でも誘うかと思っていた矢先だ。
そのラックさんが多額の借金をしていたなんて……。
その借金を返すためにグィンさんがギルドに相談してきたのは昨日の話だ。
すぐに銀行ギルドの係を呼んで、証人として私も出席。無事に返す算段が決まった所で私の仕事も終わった。凄く感謝されお礼に食事でも。と誘われたけど。
グィンさんは「俺には恋人がいるから、困った事があれば連絡を」と1枚の紙と金貨を貰ったのだ。
うん。
思いっきり不正。冒険者ギルド職員は冒険者から金品を受け取る事をしては駄目。と教えられている。
不正なんだけどグィンさんはカッコいいし他にも……そうギルドマスターだって一部の冒険者からそう言う物を貰っているし、冒険者の前に友人だ。という裏技がある。
「リン。あんた借金は嫌いだもんね」
「計画性のある借金は好きよ? それに突然ギルドに走って来て、Dランクの仕事何枚も受けようとしたり、衣服もボロボロだったり、あと結構匂いきつかったし。なんていうか嘔吐物の匂い。
あと髪もぼさぼさで目なんて血走っていたわよ」
「ご愁傷様。ほれっぽいリンも流石にドン引きするレベルだったってわけね」
誰も惚れっぽくはない。
こっちは計画に計画を重ねてやっと食事に誘う段取りをつけたのに、おかけで予約してあるお店とホテルが無駄である。
「よっ! 肉食系!」
「あら、わたくしは草食系ですわよ♪」
私の着替えが終わり、ロッカーを静かに絞めると、隣にいるスミレが笑い出した。
なんでよ! まったく……。
で、私の前にだされている手の平は何の意味があるのだろうか?
「これは?」
「いやーどうせリンの事だから予約したお店とホテルあるんでしょ? さっきの話半分は本気よ、もち飲み食いのほう。偶然私も明日は休みなのよ」
「偶然……? 予約は月単位だし別に急がなくても……ってスミレって確かまだ明日も仕事あったわよね? 」
「んー鑑定士オルグさんが四日後、結婚記念日で仕事なんだって、変わってあげた」
「そう……で?」
着替えの終わったスミレがロッカーを力強く締めると私の肩に腕を回してくる、暑苦しい!
「で。じゃないし。だから半分払うし、飲むわよ! 恋人いない組として!」
「はぁ!? スミレあなた確か……」
「何?」
クビがしまってそれ以上の言葉が出ない。苦しい! 私はスミレの腕をタップするとやっと解放してくれた。そう……スミレは別れたか喧嘩でもしたのね。
スミレの彼氏が完全に別れる事はないとして、いつもの喧嘩だろう。
仕方がない、お金も出してくれるっていうし私も飲みたい気分だし丁度いいわ。




