022 ラックはバンジージャンプの紐を切られる
「うあっ! ………………むぐうう!!」
僕は今真っ暗な穴に落ちている。
辛うじて命綱はありミリアさん達から、魔物がいた場合困るから叫ぶな。と、言われているので必死に口を手で押さえいる状態だ。
コレまでの事を思い出す。
そうでもしないとすぐに叫びたくなるから……ええっと馬車を降りて数日、クアッツルの案内で名も無きダンジョンに入った。
入口は厳重に封印されていてクアッツルが封印を解いてくれた。僕達が入ったのは裏口で表から入るよりも地下に簡単にいけるらしく、封印してるのは逆に地下から魔物が這い出ないようにだっけかな。
入ったメンバーは僕、ミリアさん、クアッツルにリバー。リバーに関しては置いていきたかったけどダンジョンの外に待たせるのも危険なので連れていく事になった。
ミリアさんにリバーの安全を頼んだら白い目で見られた。
いやだって……僕じゃ守れないし。
僕の仕事はダンジョン内部の壁などに小さい目印をつける事だ、これで万が一何があっても逃げる事が出来るかもしれないし、生存率もあがる。
色々無能だな。と事実をいわれていたけど3年も冒険者をすればこれぐらいは出来るよ?
僕達は地下へと進む、途中で魔物の群れなどに襲われてはミリアさんとクアッツルが何とかしてくれた。そして見つけた大きな井戸のような竪穴。
底が見えなく僕が冗談で「ロープがあれば入れそう……ミリアさんちょっと入って確かめてみませんか?あっでも重いですよね」と、提案したら、色々あったあげくに僕が入る事になった。
冗談だったのに……と何度も言ったのに……場を和ませたいだけだったのに……
ゆっくりと降ろしてくれて上を見上げると覗き込んでいたリバーの顔がもう見えなくなっていた。
逆にその代わりに足元が少し明るくなっていく。
ロープは2本巻き付いており1本は僕の命綱でもう1本は合図用のロープだ。
空洞があるって知らせたほうがいいかな……もう少し下の様子を見ておきたい。
僕がゆっくりと降ろされると大きな場所に出た。
まるで野菜などを入れるボウルを逆さにしたような巨大な空間。真下には大きなトカゲがいて首を回して僕を見ている。
……………………やばい。
まってまってまってまって! 大きなトカゲは僕を見ては大きな口を開け始めた。
僕は必死にロープを何度も引っ張るとゆっくりであるけど僕の体は上へと上がるけど、間に合わないよこれ!
「ラックーーーーーー!」
「はい?」
突然呼ばれたので首を回すと、壁際にグィンがいた。
他にもサーリアとツヴァイの姿見えた。
何ヶ月ぶりだろう……手をふるとグィンの左手が赤く燃えるのが見えた、あっ魔法だ。
僕がそう思った瞬間グィンの魔法が僕に飛んで来た、突然に落下する僕。
魔法の矢でロープを切ってくれたらしい。
大きなトカゲの背を転がり落ちて足元に落ちるとツヴァイが僕の襟首をつかみ一気に引っ張りだした。
「いでっ痛い。ツヴァイあの! お尻が痛いし歩けるからっ」
「地底竜に食われるでござるよ?」
「竜…………えっドラッ! ドラゴン!?」
僕が釣り下がっていたロープを食べると首を回しては獲物を探している。
その間に僕は岩陰に連れ込まれた。
「ヒール!」
足元に小さい魔法陣が現れ光が伸び僕のすり傷が治っていく。
顔を上げるとサーリアだ。
光が消えると3人が僕の顔を覗き込んだ。
「グィン」「ラック」
…………グィンと被った。
深呼吸してから話したほうがいいよね。
「「なんでここに!」」
…………また被った。
サーリアが手を2回叩く。
「ラックその……久しぶり……ええっと、元気してた?」
「まぁうん」
…………会話が止まった。
「あっ! そうだ!」
「な、なに!?」
話したい事があったのを思い出して口を開く。
「皆、僕の借金は冤罪だよ……きっと誰かかミスしたに違いない。借りた覚えも無いしグィンが立て替えてくれたんだよね。そのありがとう、結局抜ける事になったけど……うん、仕方がないと思っているし」
「………………ラック。本気で言っているのか?」
あれ。グィンの顔が怖い。
サーリアを見ると僕と視線を合わせないし、ツヴァイは煙草を吸いだした。
「本気も何も……事実を」
「追放した奴に馬鹿にされるとはな……」
「え?」
「気にするな。ラックお前がそう思うならそう思っておけ」
差し出された手を取って僕は立ち上がる。
「ええっと、地下を見に来たパーティーってグィン達?」
「……そうだ。まさかと思うが、ラックが救助隊か?」
僕は頷くと、グィンはため息をだしてサーリアも終わったわね。と喋りだした。
「D級冒険者をよこすとは……いやサーリア諦めるな。一番ランクが低いラックが天井に開いた穴を調べて来いとロープを垂らされた感じか。他の仲間はランクは? 何人いる?」
「冒険者は僕だけで、エルフの子と僕より強い女性と、あとメイドの子と一緒に」
グィンは剣を抜くと僕の足元ぎりぎりに突き刺してきた。
お、怒ってる!?
「ラック。今はお前の下手な冗談に付き合う気もない。こっちも命がかかっているからな」
「ラック正直に言って……」
「煙草の変えは何本持ってきてござるか?」
3人に囲まれた。
嘘は言っていないし、煙草の変えはない。あっ一つ嘘と言えば僕が何故かA級になった事だろう。これは言わなくてもいいかな……そのうちランク下がると思うし……
「えっと全部本当で……」
「冗談だろ?」
「冗談だったらよかっただろうね……」
僕が返答するとグィンは背中を壁に預けて目を閉じる。
考えている様子でこの間に僕は何も喋らない、グィンが考える事は僕にはわからないし正しい選択をしてくれると思っているから。
「わかった。ラックあそこの卵を取りに行け」
グィンは僕にそう命令すると卵の場所を教えてくれた。
「大きい卵だね……運べるかな」
「小ぶりなのでいい、それを持って走って逃げろ。当然地底竜は怒るが俺達はその間に向こう側の影に行く」
「え。それって囮……?」
「そうだ。何か文句はあるか?」
「確認だけで文句はないよ、うんわかっうあああっ!」
突然にグィンに胸ぐらをつかまれた。
な、なんで!?
「どこまでもふざけた態度だな。下手をすればお前が食われている間に俺達は逃げるって言ってるんだ!」
「……グィンは逃げないし……僕も死ぬつもりはないよ……?」
それよりも苦しい。
グィンの腕を何度も手でタップする。
「グィン! ラックが苦しがってるわ」
サーリアが注意すると、グィンが手を放してくれた。
よくわからないけどグィンはとても怒っている。まぁ僕は僕に任された命令をこなすだけだ。
ゆっくりと岩かげから足を出して壁沿いに歩く、卵ゾーンまで来ると小ぶりな卵を1つ手に取った。地底竜はまだこちらを向かない。
逆にグィン達は岩かげから動こうとして地底竜の攻撃を受けて引っ込んでいる状態だ。
僕は手に取った卵を抱えて皆の所に戻った。
何とも言えない視線が僕を襲う。
「えっと……僕悪くないよね?」
「嫌お前がわ――」
「流石ラックね! 卵見せて卵! ちゃんと偽物の方持ってくるなんて偉いじゃない。見てみてこれ、ダイヤかしらエメラルドっぽいのも見えるわね。ラックこれ頂戴! いいわよね!? ね!?」
偽物の卵? よくわからないけどサーリアが欲しいというのなら、というより。
「別に僕の物じゃないし……」
サーリアに手渡すと、サーリアは布でくるみ背負い始めた。
結構な重さというのにすんなりと背負うサーリアはやっぱりすごい。
一瞬何かを感じた。
とても大きな……魔力? を感じたのだ。それも天井付近から。
僕は思わず落ちて来た穴を見るとサーリアが「何かくる……?」と、同じく天井を見た。
一人の女性がまっすぐに落ちて来ると剣を抜き地底竜の背中へと突き刺しあっ失敗した。
そのまま背中を滑るように降りると、落ちた場所に地底竜の尻尾が飛んで来た。
ミリアさんはそれをギリギリでかわすと、僕と目が合った、手に持っていたらしい小瓶を捨てると一気に僕達の所へと低空ジャンプで滑り込む。
「ラック! 足は……あるようだな……あれほど勝手に動くなと」
「ミリアさん!」
僕がミリアさんの名前を言うとサーリアの不機嫌そうな声が聞こえてくる。
「自己紹介お願いできるかしら……おば……おねぇさん」
「サッサーリア!?」
わざとだ。絶対にわざとな奴だ。
あれ怒る所かミリアさんの口元が少し笑っているようだ。
「そうだな。確かに命がけごっごをしている子供から見たらおばさんだろう、ラックの友人でミリアだ。退路すら確保出来ない冒険者を探しに来たが……これは思ったよりも大変になりそうだ」
「ミリアさんね……あれ……ミリアって確か……」
サーリアがミリアさんを見ては何かを考えていた。




