サタンちゃまと防衛クエスト7 最終試験
メイドのサガネさんの正体は太陽天使騎士セブンさんだった。彼女は本来悪魔と敵対する関係で当然俺は彼女に弓矢を向けられた。
しかしそれは敵意ではなく、これまで一緒に旅をして失われた記憶を知り、新たな危機を知らされたうえでの最終試験に思えた。
「世界の危機を知った今、サタンはこれからどの道を進む?」
やはり聞いてきたか……。
全てを見通す天使の目に誤魔化しは効かない。なら思っていることを正直に答えるしかない。大体俺は嘘をつけない不器用な性格だからな。
「……アタチは……これまでにゃってきた罪をつぐにゃうために……魔王を倒し世界を救いたいにゃっ!」
小さな両手を合わせモジモジさせた。
つい緊張すると無意味な動作をしてしまう。
「その言葉に嘘偽りはないだろうな……?」
「アタチは本気にゃっ!」
「そうか……ならば、お前への最終審判は、このジャッチメントアローで確かさせてもらう」
セブンさんが弓を精一杯引いた。
「ちょっと待って!」
メリーが突然前に出て俺をかばった。
覚悟はしていた。だが、誰も見てるだけだったら悲しかったけど、メリーが心配してくれて嬉しいよ。
やっぱりトモダチだな。
「審判の最中だ。どけメリー」
「嫌よ。だってもしちびっ子が死んじゃったらどうするのよ?」
「人間が悪魔の味方をするとはな……まぁ、共に旅して来たから情が湧いたのか……しかし、これは俺とサタンとのジャッチメントだ。邪魔をするな!」
「嫌よっ!」
お前そこまで俺のことを……なんだか勘違いしそうな展開だな。だけど幼女な俺は友人止まりだな。
「悪いにゃメリー退いてくれにゃ……」
「ちょっとちびっ子正気? アンタ悪魔だから確実に死ぬわよっ!」
「にゃっ……それは承知にゃっ……だけどアタチはこの審判を受けにゃいと新たな旅に望めない気がするにゃっ!」
今まで嫌なことから逃げて来た。だからクラスの皆んなと比べ出来ることが少なかった。
だからこのジャッチメントだけは逃げてはいけない。俺は異世界冒険での旅を気持ち良くスタートするためにそう誓ったんだ。
「ごめんにゃメリー退いてくれにゃ」
「なんでよちびっ子!」
「……大丈夫にゃ、アタチはこんな序盤で死なないにゃっ」
まさかの主役一話退場とは言わせない。
「分かったわよ……絶対生きてあたしたちと新たな冒険始めるわよ」
メリーがやっと引いてくれた。
さて、正直矢を向けられビビッてるけど昔、死の覚悟すら与えられずに悪魔に殺された人々に比べたら怖がってちゃ失礼だ。
覚悟を決めた俺はセブンさんを見据えた。
「過去のアタチは多くの命を奪った。それを謝っても失った命は戻らにゃい。だからせめて聖女さまの魔王討伐の手助けして世界を救って罪を償うにゃっ!」
「それがお前の覚悟かっ!ならば歯を食いしばれ」
弓を引くセブンさんの手が離れた。
俺は決して目を閉じなかった。
ヒュンッ!
ストン!
『にゃっ……』
俺の胸を貫いた矢がすり抜け後ろの木に刺さった。
痛みはない。つまり……。
「まさかジャッチメントアローが効かない悪魔は初めてだぞ。しかもそれが悪魔王サタンとは正直驚きだ。しかしお前の反省は嘘偽りのない本物だったのかこの弓矢が証明した」
「じゃあ?」
「フンッ……合格だ。これからの旅もよろしく」
俺はセブンさんと握手して気持ち良く和解した。そのためか若干他の天使騎士の俺を見る目が柔らかくなった気がした。
「やったねちびっ子!」
「にゃあっ!」
歓喜したメリーが抱きついて来た。
『お前そこまで俺のことを……』マジ勘違いしそう。とは言え、身体がおっさんだったらこんな夢みたいな展開はないな。
「さて、この姿だと目立つので私はサガネに戻るぞ」
「にゃっ!?」
『私?』さっき俺って言ってたセブンさんが元のメイド姿に戻った。あ、違った。元が天使姿だったね。
とは言え一人称が、冷静な『私』と男勝りな『俺』の二つあるのは変だな。
もしかしてセブンさんは二重人格?
「良くやったわね猫」
「にゃっ!」
遂に猫呼ばわりですか聖女さま。
「これでわたくしたちの使命がハッキリして新たな旅に挑めます。しかし、魔王討伐の期限が一年と厳しい条件ですが、頼もしい仲間がいるおかげで必ずなし得ると信じております」
聖女さまはスッと手を胸に当てて瞳を閉じた。
『ああそうじゃっワシもちゃんとついて行くから心配するなじゃゾイ』
「異世界大陸での旅に料理人の俺も当然必要だな……」
「ホホッ!セブンちゃんとエイトちゃんのためにもアタシも旅に同行するわよ」
「……正直逃げたけど……Sドラコスのいる日本に残るよりマシなのだ……」
『当然トモのためにミーも力になるぞ』
皆怖気づいて旅から脱落する者はいなかった。
そして最後にメリーと目が合った。
「ちびっ子……」
「にゃっ……メリー……」
「アンタとの旅は楽しいから、これからもよろしくね」
メリーは両手で俺の右手をぎゅっと握った。
彼女の手は温かった。
あの時聖女さまが勇者パーティーからメリーを選んでくれて本当に良かったと、俺は改めて感謝した。
さて、いよいよ異世界大陸の冒険だ。
ワクワクが止まらないよ。




