サタンちゃまと防衛クエスト4 集結する者3
「奴らかっ!」
上空に現れたフードを被った男女の魔王直属の幹部を見た谷川シェフが、身を乗り出し叫んだ。
確か夜想曲と呼ばれる幹部に二人の息子を殺され、妻と娘を連れ去られた過去があるから冷静ではいられなくなったんだな。
「おいっ!あの色情野郎はどこ行った!?」
「……なんだあの男はなぁ、協奏曲よ?」
「約一名心あたりがあるが……ほっとけよ小夜曲よ」
「なるほど……あの男は奴に女を寝取られたから必死なのだな……」
二人の幹部は谷川シェフを見おろしながら談笑していた。
「遂に魔王軍の幹部自ら降臨。我々はそのために呼ばれたのですね?」
「いや……」
聖女さまがガブリエルさんに話し掛けると彼女は歯切れが悪く否定した。
「それはどう言う意味なのでしょうか?」
「我々が恐れているのはあんな者ではない……」
「……まさか、魔王自ら……」
「魔王ではない。しかし、魔王と同等いや、魔王以上かも知れないね……」
「そんな化け物が?」
流石の聖女さまも目を丸くして驚きを隠せない。
「来たか……すまない話はあとだ。『機動兵器部隊第一師団、第二師団、第三師団に告ぐ。ターゲットが鞍馬山霊道を通過中っ直ちに戦闘態勢に移れ!』」
聖女さまとの話の途中ガブリエルさんが無線で指示を送った。すると待機していた六十機近くの人型機動兵器が陣形を取り銃口を空に向けた。
「ハッ!メタルゴーレムに乗った人間共が我らを見て焦ってやがる」
コンチェアトーがフードをめくって素顔を見せた。青白い肌に額に一本の角を生やした大柄の男だ。
顔はまぁ、悪くはないけど、俺が苦手とする体育会系だ。
「フンッどれだけの数で来ようが我らの敵では……んっ?」
「どうしたセレネイド?」
「メタルゴーレムの銃口の照準が我らからソレている気がするのだが……」
「馬鹿を言うな。だったら奴らの銃口はどこに向けていやがる? ……まさかっ!」
周囲を見回すコンチェアトー。しかし、それらしき対象物が見つけられない。それでしばらく考えたあと、不意に空を見あげた。
「なっ!?」
コンチェアトーが目を見開き驚愕した。
奴らのさらに上に一人の男が浮いていたからだ。
その男の風貌は一目で異常と分かった。
身長はおよそ3メートル。しかも全身が筋肉の塊で腕や足が丸太みたいに太い。背中には悪魔の翼と腰に先端が矢印形の尻尾を生やしている。
服装は上半身裸に黒のパンツ一丁に手甲とブーツを履き。そして頭部は、古代ローマを彷彿させる左右に角が生えた兜を被っている。
表情に関してだと、目は兜の影で隠れ、精悍な顔立ちの口元はM字型に閉じていた。
この無骨な男の正体は俺の悪魔王時代の記録にあった。
そう忘れる訳がない。
この男の名は巨ジン兵鬼。天使軍から奪った魔界レプリカ兵を魔改造して手下として重宝していたんだ。
ドラコスは悪魔五将軍に匹敵する強さで、天使騎士を次々と葬ってきた。(我々は別名天使キラーと呼んでいたほどだ)
しかし奴は本能優先で好みの女に突進する癖があった。無論味方には手を出さないが、底抜けの馬鹿で欲望優先で行動するから手に負えない男だ。
とは言え奴は俺の部下だから呼べば答えてくれるかもな。
「おいっ!ドラコスッアタチだっサタンだにゃっ!」
デッカイ声で呼び掛けた。
「…………」
「にゃっ!?」
しかし奴は無反応だった。
「ちょっとちびっ子!あのマッチョと知り合い?」
「いやぁ〜あ、知り合いと言うにゃ……かつての部下にゃったにゃ……にゃにか様子がおかしいのにゃ……」
「なによそれ……じゃあ味方じゃないのね?」
「……不確かにゃが、メ、メリーは特にアイツに近づいちゃダメにゃ……」
「なんでよ?」
「う〜……すぐに分かるにゃ……」
「はあっ〜?」
アイツは極度の女好きの底抜け馬鹿の変態とは流石に説明し辛かったんだ。
まぁ、実際見てもらった方が説明するより早いと俺は判断したんだ。
ちなみにドラコスはロリコンではない。その逆だ。聖女さまの陰に隠れて震えている胸の大きなエイトさんなんか特に好みだろう。
「その姿はまさか魔王様っ!」
「…………」
コンチェアトーが叫んだ。
しかし言われたドラコスは仁王立ちして無反応。
「いや待てコンチェアトーッ!奴は魔王様ではないっ!」
「なんだって?」
「……我らの魔王様に凶々しいコウモリの翼や悪魔の尻尾など生えてはおらんっ!ええいっ!魔王様の真似をする不届き者めっ我がセレネイドが成敗してくれるっ!」
セレネイドがフードを脱ぐとスタイルの良い女体をさらした。しかも胸の谷間が全開の露出高めの衣装でおまけにかなりの美女だ。
『これはいかん』奴から見たらドストライクだ。
「不快なお前っ私の狂乱の特大火球で吹き飛ばす!」
自分より大きな火球を作り出したセレネイドがドラコスに向かって投げ放った。
ズバンッ!
火球に飲まれるドラコス。
「やったか!」
右拳を握り笑顔を見せたセレネイドだが、その勝利の確信は一瞬だった。
炎の中仁王立ちのドラコスは微動だにしなかった。
「フンッ!」
「なにっ!?」
ドラコスが気合いを入れると、身体にまとわりつく火を一瞬で消した。
少し舐めていたとは言え、いとも簡単に攻撃を弾かれたセレネイドに余裕の笑みが消えた。
そして、この男ドラコス(仮)はジッとセレネイドを見つめていた。
そして長くガン見したあと、一言こう呟いた。
『……………………………………………好みだ♡』
「バッなにをバカなことを言ってんだテメー!」
「おっおいっ!セレネイドッ!」
激怒したセレネイドがドラコス(仮)に向かって突進した。一方コンチェアトーは彼女を止めるべく追い掛けた。
するとドラコス(仮)が唸った。
「おおお〜〜おおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおお…………………………………………たぎる」
「なにっ!」
「フンッ!!」
ズドンッ!!
「『 !! 』」
両腕をさげた仁王立ちの姿勢のドラコス(仮)が常人では見ることが出来ない第三の腕で、セレネイドとコンチェアトーをまとめて叩き潰した。
第三の腕はいわゆる気の塊みたいなモノでとんでもない破壊力だ。本当あの魔王幹部二人を一撃で葬るとはな……。
しかし、俺の知っているドラコスの力を遥かに凌ぐ力に見えたぞ。
俺が眠っている間に一体……ドラコスになにがあった?
すると空を見あげるガブリエルさんが口を開いた。
「あれこそが我々が恐れていた厄災。サタン細胞に侵され暴走した二体目の魔王レプリカ。その名はスーパードラコス。アレは天使でも手に負えない……」
「にゃっ!?」
サタン細胞って俺のことじゃないの?
それを聞いた皆んなが一斉に俺を見つめた。
『ちょっと!』誤解だ。サタン細胞って奴に埋めこんだ覚えがないから……。




