サタンちゃまとトモダチ2
ボーイング・小林の土スキルで作った土階段で俺たちは、難なく嵐山公園の壁を乗り越えることが出来た。
関係者以外は立ち入る者がない夜の公園は不気味なほどに静まりかえっていた。
「さぁ〜て、お宝はどこかなぁ?」
手にこびりついた土を払うと小林が周囲を見回した。
「闇雲に探しても拉致があかねぇよなぁ……ここは盗賊スキルの出番だな」
小林は複数のスキルを持っていると自慢していたから特に驚きはしない。
しかし、初期の頃はスキルなしと言っていたのにどうして複数持つことになったのか不思議。
「お宝感知スキル発動っ!」
俺が疑問に思っている側から小林はスキルを発動した。しかし、気をてらわないまんまなネーミングで少しは凝ってもいいのではと思った。
小林の手から銀色のネズミが現れ鼻をクンクンさせてから走り出した。俺たちはネズミの跡を追って公園の奥へと進んだ。
□ □ □
迷うことなくジグザグに前を進む銀ネズミがある場所で止まった。
そこは厳重な柵で覆われたコンクリート製の四角い建物。
「ここで間違いねぇみたいだなぁ……」
しゃがみ込んだ小林は銀ネズミを解除すると立ちあがって振り向き、ニヤリと笑った。
そして柵を見あげると。
「電流でも流れていたら厄介だなぁ……だが問題ねぇ」
土スキルで階段をこしらえ小林が中に入った。そしてドアノブを握った。
「そりゃ鍵を掛けてるよなぁ〜でもそんなことは想定済みさ」
小林は鍵穴に金具を入れて数秒でドアを開けることに成功した。
「んじゃっ入るぞ」
それはいいんだけど、何故か俺も招き入れる小林。幼女なんか入れても役に立たないと思うがまさか、変なことされないだろうかと身の危険を感じた。
まぁ、二人も奥さんをもらってるしロリコンじゃないと思いたいが、異常性欲者だと見境ないと言うし不安だ……。
だから最後尾の俺はそっとステータスを開いた。魔力は相変わらず回復していない。それに水属性以外の悪魔はダメージを負って出せない状態だから、小林に襲われたらアウトだ。
かと言ってなにかされると決まってないのに逃げるのは、声を掛けてくれた松川に悪いから出来ないよな。
仕方ない。ここは従って彼を信じる他ないな。
中に入るとそこにはなにもなく。その代わりに地下へと続く階段を見つけた。
俺たちは慎重な足取りで地下に降りた。
「おおっ!」
「隊長っどうしましたか?」
「見ろっ松川っビンゴだっ!」
真っ暗な地下をライトで照らした小林が指差した先になにかが地に埋まっていた。
それは人型のロボットの頭部。相当時が経過したのか、全体が石灰で覆われていた。
ロボットの顔はアニメの主役級のイケメンだ。俺はそのロボの顔を見ていたら何故か目が涙で潤んだ。
サタン城で見た記憶映像で最後まで俺を守ってくれたロボットと同じ顔だからだ。
そして、記憶が徐々に戻ってロボ、いや彼のことを思い出してきたから涙が出たのだと思う。
「これはロボットか?」
「ええ、ちょっとボロいけど政府が厳重に隠す位ですから貴重なお宝に違いないですよ隊長」
「確かにな……しかし、首から下の胴体は地面に埋もれているみたいだな……」
小林は考えたあと、リュックをおろすと折りたたみスコップを二つ取り出し片方を松川に渡した。
俺は流石に見ているしかないよな。
小林がロボットを掘り返そうとスコップを地面に刺した。
それを見ていた時、頭にある記憶が浮かんだ。
それは俺をかばって勇者の剣撃を受けたロボットが、バラバラになって散った映像。
そのロボットが今足元で埋まっている顔と同じだった。しかしバラバラにされたハズなのに首と胴体が繋がっているのは疑問に思った。
「こりゃ人力じゃ掘り起こすには骨が折れるぜ」
数掘りでスコップを放り出した小林が根をあげた。
「だったらコイツの召喚悪魔を使って掘り起こすのはどうです?」
指差しコイツ言うな松川。
「なるほど、お前が言っていたソイツの悪魔ガチャスキルのことか……」
小林がニヤニヤしながら呟くと俺の方に振り向いた。
「にゃっ!確かに穴掘り悪魔をゲットしてるにゃ、しかし前日使用したので今すぐ出せにゃいにゃっ!」
「出せないとは本当か?」
「隊長っその話は本当みたいですよ。一度召喚した悪魔は使用時間によって最大一日はステータスファイルの中で休ませないと再召喚が出来ないみたいです」
松川が俺の代わりに説明した。
「……じゃあ、俺がコイツの悪魔ガチャスキルを使えば新たな穴掘り悪魔をゲット出来る可能性はあるわな……」
「にゃっ……」
一体なにを言っている小林は……。
大体悪魔ガチャは俺固有のスキルだから他人が使える訳がない。
すると松川がチラチラと俺の様子をうかがいながら小林に耳打ちした。
「とりあえずお前の悪魔ガチャスキル奪うか……」
「にゃっ!?」
首を鳴らした小林が俺に近づいて来た。
悪魔ガチャスキルを奪うってどう言うこと?
危険を察知した俺は踵を返すと走って逃げた。
「逃すかよっボディストップスキル発動っ!」
「にゃっ!!」
小林の声を聞いた俺の身体が、金縛りに掛かったように停止した。
両手をあげバンザイ姿勢のまるでマネキン状態の俺は、身動き取れなくなっていた。
「へへっ……松川が教えてくれたスキルは便利だぜ」
「ありがとうございます隊長」
一体なにを言ってるんだこの二人……。
間違いない。このスキルは剣山の常連冒険者のシン・中島が使っていた体内時計を十秒だけストップさせるスキルだ。
しかしこのスキルは中島固有のスキルだから何故小林が使えるのか不思議だ。
すると小林が手を伸ばし俺に近づいた。
「なんで俺が複数のスキルを使えるのか知りてぇようだなぁ……それはなぁ、俺は他人のスキルを奪うことが出来る。技能掴みスキル持ちだからさ」
「にゃにっ!」
「へへっ、で、今からお前の悪魔ガチャスキルを俺がいただくって訳さ」
『にゃんと駄目だっ!』これは俺と悪魔《部下》との絆を繋ぐ大切なスキルだ。
それをこんな奴に奪われてたまるか!
だけど、奴に体内時計を止められ絶対絶命のピンチだ。
しかも誰も助けに来てくれないからどうしよう……。
俺はパーティーを抜け出し、松川を信じてほいほいここまで来たことを後悔した。




