サタンちゃまと京都クエスト
剣山クエストが終わって友だちの松川と別れた。それはなんでも常連冒険者の中島と意気投合して今から二人で居酒屋で飲み明かすらしい。
メリーは『あの二人怪しいわよ』と良からぬ疑念を口にした。異世界人がなんの影響受けたか知らないけど、流石に松川に限っては女好きだからボーイズラブの心配はないだろう。
「あーあ、今日は疲れたわ」
しんどそうに腰を曲げたメリーが言った。いや君は戦闘に参加せず見ていただけだろう?
まぁ外野で、仲間にツッコミを入れたりギャーギャー騒いでたからそら疲れるよな。
気を取り直したメリーが背を伸ばして聖女さまに話し掛けた。
「もう休もう。ホテルの予約は取ったの?」
「……それがねぇ、ついさっき日本政府から連絡があってすぐに京都に向かってくれと連絡があったのよ」
「え〜っそれって休み無しなの?」
聖女さまがうなづくとメリーがヘナヘナと崩れ落ちた。気持ちは分かる。俺もクタクタで一晩寝ないとMPが回復しない。
それで緊急らしく徳島から徹夜で京都に向かうことになった。だからその間に車内で眠って体力を回復するしかないな。
移動中の車内で俺はベッドの端で座っていると、聖女さまが目線に合わせて身をかがめ俺に話し掛けて来た。
どうやらステータスチェックしに来たらしく、俺がステータスを表示させると口に手を当て黙った。
「魔力を使い切ったのね……しかも召喚悪魔ファイルほぼ全てが真っ赤な赤線引いてあるわね……」
「にゃっそれにゃ……」
思わず聖女さまに躾けられると思って俺はビビった。だから焦って必死に訳を話した。
すると彼女は相槌を打ち俺の話を最後まで聞いた。
「魔力を使い切ったのは穴掘り悪魔を引き当てるためにガチャスキルを使ったから、そして全て例の勇者チームの攻撃を受け水属性以外の悪魔が行動不能にされたのね……」
横を向き表情が曇る聖女さま。
そして『こんな時に不味いわね』と独り言を言って立ちあがると『せめて京都に到着する間寝てなさい』と言われた。今回は思いのほか優しかったな聖女さま。
それで俺はベッドに潜ったけど、興奮して中々寝つけなかったな。
□ □ □
翌日の朝京都四条河原町に到着した。
何故最終クエスト地が四条河原町なのか疑問を残しつつ俺たちは、メイドのサガネさんを残し政府が管理するゲート前に向かった。
ゲートには一際目立つ全長15メートルの人型機動兵器アームド・チェイサー四機が二機ずつ左右に配備されていた。ちなみにこの兵器はエイトさんによると、三百年前並行世界の超科学技術を取り入れて開発が可能になったのこと。
しかしねぇ、異世界だの並行世界だの突拍子もない話だけど、コレが現実だから混乱した気持ちの整理が追いつかない。
それにしても、あんな物騒な巨大兵器を配備して一体なにを警戒してるんだろ? 魔物相手なら冒険者に任せれば済む訳だし、コレはまるで戦争用だな……。
「どうぞ中へ。くれぐれもご注意を」
ライフルを肩に掛けた兵士さんがそう言ってゲートを開けた。俺たちは会釈すると中に足を踏み入れた。
さてこれだけの警備だ。どれだけ凄い魔物が潜んでいるのか今から不安だ……。
現在の俺のMPはたったの15だ。昨日の夜は寝つけなかったせいで回復出来なかった。
だからこれでガチャは回せない。入手済みの悪魔たちも使えないし、困ったものだ。
こんな役立たずな俺が一緒について来ても足手まといにしかならないと思ったけど、聖女さまはなにも言わず俺の手を握って道を進んだ。
しばらく歩くと前方にスーツ姿の女性が俺たちを待ち構えていた。彼女の顔に見覚えがあった。
日本政府異世界対策本部広報の朱雀さんだ。黒髪ショートカットのボーイッシュな美人さんだ。
そんな彼女と俺たちは軽く会釈した。
「良くぞ最終クエストまで来てくださりましたね。喜ばしいことです。さてこれからクエスト地を案内する前に偽っていたことをお詫びさせてもらいます」
そう言って朱雀さんが俺たちに対して頭をさげると右手をあげた。そして全身が眩い光りに包まれ服装が変わった。
Tシャツの上に黒革のジャケットを羽織り、下は黒色のジーンズを履いたお堅いスーツとは真逆のラフな格好だ。
あと髪型は変わらないが、腰に剣を帯刀していた。
「朱雀と言う名は偽名で、私、いや、僕の名はガブリエルだ」
「ガブリエルってまさか、七大天使のか?」
驚きの表情を浮かべた谷川シェフが聞いた。異世界人のメリーはなんのことかキョトンとしていたが、エイトさんや紅蜘蛛とかは知ってるらしく再度もっと深く頭をさげた。
俺も詳しくないけどその大天使の名は聞いたことがある。聖書の中だけの存在かと思っていたけど、こうして変身した姿を見ると信じる他なかった。
「僕について来て」
谷川シェフの疑問に答えることなくガブリエルさんは背中を向け歩き出した。
困惑した俺たちは顔を見合わせ仕方なく、あとを追うことに決めた。
「さて、今から君たちに挑んでもらうのが」
しばらく歩くとガブリエルさんが振り返って後方に指を差した。
「ちょっ……なによアレは……」
前方にある巨大なモノを見たメリーが絶句した。
鴨川四条大橋前で西洋風のお城が傾いて放置されていた。
驚いたのはその大きさで大阪城の二倍位。しかも良く見ると翼と無数の砲台と船底があって、それは空飛ぶ城に見えた。
しかし馬鹿な。こんな代物がこの世に存在する訳が……異世界大陸出現以降なら、あるんだよなぁ……。
もう麻痺しちゃっているのか俺はこの現実を素直に受け止めた。
そしてガブリエルさんが俺の顔を見てこう言った。
「今回のクエストはこのサタン城の中に入って秘密の研究室の鍵を開けること。そしてその鍵を唯一開けられるのがこの城の城主の悪魔王サタン。そう君が行かねばならないのだ。元、神崎英太君」
「にゃっ!」
俺はガブリエルさんに名指しされた。




