サタンちゃまと剣山の大蛇8 勇者の仲間
「ちょっと!なんでこんなところに勇者様の剣が隠されていたのよ?」
「んっ、お前は……」
両腕を広げたメリーが三人を祭壇に行かせまいと聞いた。
「確かにそうだな。とりあえず自己紹介をしておこう。私の名はドルチェル。勇者チームの魔法使いだ」
「ドルチェルって今から三百年前に魔王を倒した勇者チームに所属していた魔法使いの名じゃないの?」
相当有名人らしく、メリーがトンガリ帽子の魔女にそう話し掛けた。
「ああ、だからなにか?」
「憧れていたから真似たの?」
「馬鹿者っ私は決して尊敬でドルチェルと名乗っている訳ではないっ!……それは本人だからだ」
魔法使いが控えめに咳払いしてから名乗った。すると聞いてたメリーが『本人ってなんで生きてんの?』と驚愕して指差した。
『にゃっ!?』どうでもいいけどアンタも初対面の人間に指差してんじゃん。ちょっとあとでぶん殴った松川に謝った方がいいぞ。
「ふんっ別に驚くことではないわ。ほれ……」
そう言ってドルチェルは帽子を取った。するとピョコンととんがった耳が現れた。
「伝説の大魔法使いドルチェルってエルフだったの?」
「君ねぇ……そんなこと常識じゃないか、学校で習わなかったのか?」
「あ……授業中寝ぼけてたかも……」
その理由はメリーらしいな。
「まぁいい。私は長寿なエルフでしかも魔女だからほぼ不老不死で現在の年齢は四百歳だ。ふふ……」
腕組みしたドルチェルが得意げに言った。
普通なら大人の女性は実年齢を隠したくなるが、この美貌で百を越えると誇らしくなって公表したくなるんだな。
しかし、うちのパーティーには優に千年以上生きている仲間がチラホラいるぞ。まぁそれはドルチェルの自尊心を傷つけてしまうのであえて言わないけどね。
「とにかく私は魔女だから先代の勇者のことは良く知っているのよ。で、さっきの質問だけど、何故こんな辺境の地に勇者剣が隠されていたことだけど、今から三百年前に私たち勇者チームがサタンを倒すために助っ人として召喚されたのよ」
サタンを倒すためってなんか穏やかじゃない。恐らく俺のことだから、自分はなんとなくメリーの背後に身を隠した。
「ちょっと!アンタも言うのね。一体三百年前になにがあったの?」
「なにってこの地球で天使軍と悪魔軍との最終戦争がすでに始まっていて、私たち勇者チームは最後の助っ人として参戦したのよ」
「ちょっとなにその美味しい役」
『にゃっ!』最後の助っ人だなんて確かに美味しい役回りだ。
「なによ美味しい役って……まぁ、勇者様のおかげで最終戦争が終わった言っても過言じゃなかったのよ。そして帰還する前に勇者剣が魔王の手先に渡ることを恐れて、この世界の地下深くに隠したのよ」
「でも全く別世界に大事な剣を置いて行ったら回収出来ないわよ?」
「ふんっ!だからこうして回収しに来たんだろうが?」
「あ……確かに……」
あっさり納得するなメリー。だったら回収出来た要因の異世界大陸転移について疑問に思えよ。
どう考えても先代勇者はもう一度この地に戻れると見越して剣を隠して帰還した節がある。
「で、そこの大男とツルッパゲは何者?」
相変わらず口が悪いなメリー。
「ああ、そこのデカイ奴は千年前のブルースフィアで暴れていた暗黒竜バハームトを退治した大英雄ギガロムよ」
「ちょっと!その話が百歩譲って本当だとして、なんで千年前の英雄が生きてるのよ?」
「それは彼は、現二代目勇者様の奇跡によって蘇ったからよ」
「嘘っ……信じられないわよ……」
「フンッ!別に信じなくてもいいが、で……」
次にドルチェルがツルッパゲの紹介をしようとしたら、その彼が無言で手で制した。
「あっそう。じゃあアンタが名乗りなさいよ」
ちょっと顔を引き攣らせたドルチェルが一歩さがった。
「拙僧の名は厳蔵法師。最強の戦う僧侶でごわす」
厳蔵と名乗る僧侶が数珠をつけた手を合わせて一礼した。そしてギロリとメリーを睨んだ。
やっぱりツルッパゲと言われたこと根に持ってたんだ。
「厳蔵って確か有名な坊さんよね……」
「貴様……」
今一ピンとしないメリーの反応に厳蔵は不服のようだ。
分かるよその気持ち。だって男なら女の子の驚く反応欲しいよね?
「仲間の紹介は以上だ。で、勇者剣は我々が回収するがいいかな?」
「えっ!え、え〜と……あの、どうしよう竜神さまっ……て、オイッ!」
指示を仰ごうとしたメリーが後ろを振り向くと、肝心の竜神さまは気持ち良さそうにあお向けで寝ていた。
「ちょっと竜神様っ起きてっ!」
『ムニャッ……やっぱトンボの塩焼きはオニヤンマに限るゾイ。ムニャッ……くちゃくちゃ……」
「肝心な時に役に立たない神様ねぇ〜」
メリーが呆れる位に竜神さまが寝ぼけている。こうなるとどんなに身体を揺さぶってもテコでも目覚めんな……実に気持ち良さそうに熟睡している。
「う〜……分かったわよ。どうぞ」
流石に勇者チームと争うのは命に関わるのでメリーは身を引いた。俺もそう思う賢明な判断だ。
そしてドルチェルが祭壇にあがってなにやら指示すると、ギガロムが宝箱ごと担ぎあげた。
大男とはいえ、3メートル近い宝箱を持ちあげるなんてなんて馬鹿力だ。
俺たちは剣を持ち出されるのを横で黙って見ているしかなかった。
「それはそうと……」
ドルチェルが丁度横を通り掛かった時に足を止め。俺たちに視線を向けた。
「さっきからコソコソしているチビ」
「にゃっ!?」
『俺のことか?』思わずビックリして飛び出してしまった。
「その特長的な口調と姿形……三百年前に見た悪魔軍の総大将サタンにとても似ているわね……」
「にゃっ……にゃ、にゃんのことかにゃあ……き、気のせいにゃ……」
額から汗が垂れ落ち俺はドルチェルから視線をそらした。
「あら〜そんな訳……あるのよねー。だって先代勇者様が倒したハズの魔王が復活する位だから、サタンが復活していてもおかしくはないわよねぇ?」
「にゃっ!?」
ドルチェルが魔法使いの杖を俺に向けて、いつの間に両側をギガロムと厳蔵に退路を阻まれていた。
「にゃっ!ア、アタチがサタンだからと言って今更剣を向ける必要があるのかにゃ?」
「そうね……とりあえず悪い奴はほっとけないわ」
「にゃっ!」
そんな単純な理由で退治されたら敵わん。大体昔の俺がなにをしたのか分からないけど、今の俺は決して悪いことしてない。
むしろ魔物退治していいことしてんだぞ。
「ちょっと待って!このちびっ子と一緒に冒険して来たけど別に悪い奴じゃないわよっ!」
良く言ってくれたメリー。
「そんなのどうでもいいのよ退きなさい」
「くっ……話位聞いたって……」
俺をかばうために、剣の柄を握り抜刀するか躊躇するメリー。
確かに相手は勇者チームの英雄たちだからメリーでは勝ち目はない。
だったら俺は……。
「悪魔ファイルオープンッ!」
水属性以外ファイルの悪魔を全て出した。
雑魚が大多数だけど、これだけの大軍勢なら勝機は充分アリだ。




