サタンちゃまと剣山の大蛇7
「鑑定するわよっ!」
地下神殿の宝箱を護る機械仕掛けの大蛇に対し、メリーが鑑定スキルを発動させた。
すると大蛇の前の空間に文字が表示された。
【 メタルボア レベル72 魔力48 攻撃力1322 力741 体力1500 素早さ365 幸運103 鉄属性 】
「ちょっとケタ外れの強さよコレ!」
メリーが驚くのも致し方ない。だって谷川シェフを超えるレベルとステータス数値だからだ。
これまで旅して来た中で化け物級の大ボスだ。しかし、そんな魔物が護る宝箱の中身は相当貴重なモノなのは確かみたいだ。
逃げる手もあったけど、恐らく剣山のクエストクリアの条件がメタルボアを倒しお宝をゲットすることだ。
それに皆んなヤル気だ。
『ホッホッ♬ コリャ面白くなってきたゾイ』
「にゃっ!笑ってる場合にゃのか竜神さまっ?」
「なんじゃいちびっ子。ほれあの黒髪の女騎士を呼び出さんかい」
『にゃっ!』ちびっ子のアンタに言われたくない。とは言えまぁ、流石にこのメンツだと戦力的に厳しいのでクレナとモスマンを呼び出した。
「サタン様お呼びでしょうか」
「サタン様ピンク色のメスモスマンを引き当てたと風の噂で聞きました」
「にゃっ!?」
二人並んでひざまづいて俺に忠誠を誓ったが、モスマンお前は不純だ。
とは言え無視する訳にもいかずモスマンに魔石を吐き出させた。
「特大魔石二つと小魔石少々ですか、チョイとお待ちを……オエッ……ンボアッ!」
コロン、コロンコロン……。
「…………」
転がる魔石を引きつった目で追うクレナ。
「サタン様……アレを私に食えと命令しますか……」
「にゃっ!やはり嫌にゃよにゃあ……でも洗う場所がにゃいから困ったにゃ……」
「……致し方ございません……わ、私が魔石を食べてレベルアップを望まないと戦況は厳しいのでしょう?」
「にゃっ……す、すまんクレニャ……」
状況を察したクレナは意を決した。
せめて魔石をビニールに包んでモスマンの無限胃袋に収納しておけばと後悔した。
『どれ、ワシが洗ってしんぜよう』
「竜神さにゃっ!」
『そんな驚く顔するでないちびっ子。ワシは水の神じゃぞ』
竜神さまが人差し指を立てた右手をあげた。すると地下水を右手に集め魔石を洗った。
『ホッホッホ!コレでどうじゃ?』
「かたじけないっ竜神よ。ほ、本来なら敵対する者同士なのに……」
『ホッホッ、良い良い。頭をあげい黒騎士』
「かたじけないっ!」
クレナが顔をあげると目が潤んでいた。それはきっと竜神さまの懐の温かさに触れて感動したからだな。
俺もちょっと目が潤んできたぞ。彼女の方が見た目年上なのになんだか保護者の気分だ。
では、クレナに食わせる魔石をチェックしよう。
魔力アップ紫色魔石小2
力アップ緑魔石小4
攻撃アップ赤魔石大1
赤魔石小3
素早さアップ黄魔石大1
黄色魔石小4
体力アップ青魔石小3
幸運アップ虹魔石小2
の以上だ。
「これはありがたい。では……」
クレナは直接噛み砕いて食べるのでなく、全ての魔石を体内に吸収した。
だったら洗わなくてもいいと思ったが、それでもやっぱり気にするか……。
え〜と、クレナは潔癖症とあとでメモしなきゃな。
それでレベルアップした現在のクレナのステータスはこうだ。
【 悪魔騎士クレナ レベル60 魔力198 攻撃力1159 力467 体力1152 素早さ488 幸運204 闇属性 特殊スキル バイアタックレベル8 加速増加スキルレベル4 】
と以上だ。
中々彼女は成長したが、まだまだメタルボアの方が数値が高いな。しかし技量は間違いなく彼女が上だし、竜神さまだってついているからあとは見守るしかない。
『コヤツはチト手強そうじゃからメリーは下がっておれ』
「分かったわ。頼むわよちびっ子竜神様」
メリーは俺の手を引っ張って柱の陰に身を隠した。ふと横を見ると、すでに退避していた松川とシン・中島と目が合った。
情けない。どうした常連は口だけか?
『では仕掛けるゾイ』
「私はいつでもいける!」
『なら同時じゃっ竜神の雷を喰らうが良いっ!』
「剣技ダクネスラッシュ!」
バリバリバリバリッ!
ズバズバズバッキンッ!
『ギギギッ!?』
攻撃を受けたが、効いてる素振りを見せないメタルボアの頑丈な鉄ボディ。そしてようやく動き出したメタルボアが祭壇から離れて赤い目を光らせた。
そしてクレナに狙いを絞って突進して来た。
「喰らうかっ!ハアッ!」
回転してかわすとついでにメタルボアの脳天を剣で切り裂いた。
ガガガガッ!と金属同士が削れる耳をつん裂く嫌な音がして、俺はたまらず耳を塞いだ。
『う〜む……傷一つつかぬとは実に硬い装甲じゃのう……しかし、一体なんの金属なんじゃ?』
神でも知らない金属で作られたメタルボアに疑問を覚えた竜神さまは考え込んだ。
『三百年間稼働出来る動力源はなんじゃ……魔力かそれとも地球外科学の無限エネルギーか……』
なんだか竜神さまが荒唐無稽な動力源の仮説についてブツブツ言ってるが、魔法も地球外科学も存在する今となってはおかしくない説だ。
『ええいっもうどっちでもええゾイッ!』
「竜神っどうした?」
考えるのがめんど臭くなったのか、竜神さまはヤケクソ気味に投げた。
気持ちは分かる。無い頭絞ってフル活用すると脳みそショートするもんな。
『奴の装甲を破壊するのはヤメじゃっ』
「ではどうしろと……?」
『見ろっ奴の関節を狙うんじゃ』
竜神さまはメタルボアの蛇腹関節に指差した。確かに装甲に比べて強度は低そうだけど、配線とか剥き出しの関節なんか見当たらないスッキリした未来的な関節だ。
「了解したっ敵の装甲が強固ならコチラは強化すれば良い。さあっバイアタックスキル8発動っ!続いて加速スキルレベル4発動っ!」
クレナが発動させたバイアタックとは攻撃力をレベルに合わせて倍にするスキル。それと加速スキルは言わずもがだ。
『ワシも雷と水で敵を弱らせるゾイ!』
竜神さまが雷と水を掻き混ぜたトルネードを地下空間で発生させた。地下だろうと自然現象を起こせるなんて流石竜神さまだ。
『ギギッ!』
竜巻がメタルボアに直撃して動きが止まった。そのスキをついてクレナが腹の下に回り込んだ。
引き締まった表情を浮かべたクレナが剣を両手で構えた。そして口角をクイッとあげると黒い翼を広げ跳躍した。
狙うは一点。
腹部より致命的な首回りの関節部分。
「喰らえっダクネスラッシュ!」
ガキィィィィィィンッ!!
『ギギギッギイッ!』
惜しいがまだ攻撃が浅い。動きを止めたがメタルボアの目がギロリと下を向いた。
「クレニャッ!」
「お任せをっ!ダクネトルネードスラッシュ!」
竜神さまが繰り出した竜巻に乗ったクレナが高速回転する。そして、剣の先がまるでドリルとなってメタルボアの首関節を削っていく。
『ギッ……』
「終わりだっ!」
ガインッ!!
ドスッ!
「ハッ!」
遂にクレナがメタルボアの首関節を砕き斬った。大人の身長ほどの巨大な頭部が先に落ちて、続いてクレナが颯爽と着地した。
「ふうっ〜中々の難敵ではあったが……コレで終わりか……」
『ギッ……ギギ…………』
メタルボアの目の輝きが消え、機能停止を確認したクレナが厳しい顔からクールな表情に変え剣を鞘に収めた。
て、アレッ……あんだけ強敵だったのに俺のレベルがあがらなかった。と言うことは、メタルボアは魔物ではなかった訳か……謎が深まるな。
さて……。
「やったな!これで安心してお宝を拝見出来るぞ」
安全になった途端にシン・中島が顔を出し偉そうに腕組みした。
調子のいい奴だけどお宝はお前だけには渡さない。
『さて、あの宝箱の長さからして恐らく聖剣が収められてるハズじゃ』
「確かに……しかし、一体誰が?」
クレナの問いに竜神さまは『思い当たる節がある』と言って祭壇の階段に足を踏み入れた。
「待ちなさい。神聖なる祭壇を下賤な者が足を踏み入れるのは、決して許されないわよ」
背後から俺たちに話し掛ける若い女の声がした。だからゆっくり振り返ると、見慣れない男女三人組の冒険者が神殿の入り口の前で見つめていた。
まず中央に、いわゆる魔法使いが被る大きなトンガリ帽子を被って、紫色の髪を肩あたりまで伸ばした色白小顔の十四歳くらいの魔法使いの少女。
かなりの美少女だけど鋭い目の形から性格はキツそう。
その左に身長訳2メートルで鍛え抜かれた上半身裸のドレッドヘアーの屈強な戦士が大剣を握っている。
そして右にスキンヘッドの仏教系の僧侶が数珠を持って手を合わせていた。
全く知らない面子だったけど、三人のただならぬ雰囲気に俺たち息を呑んだ。
雰囲気だけで分かる強者のオーラを三人がまとっていたからだ。
唖然として俺たちが固まっていると中央の魔法使いの少女がクスクスと笑ってこう言った。
「メタルボアを倒すなんて想定外。だけど、そこの宝箱に納められている勇者剣ガルゼロードは、勇者様の子孫である現勇者アルベード・ヒィルナ様が持つべきモノよ」
「にゃっ!」
勇者剣ガルゼロード……その名を初めて聞いたのに、何故か俺の心をざわつかせた……。
異世界人の名前は苗字、名前と日本式と一緒です。
あと、ステータス数値についてはかなり大雑把に設定してます。あと、最後に出てきたスキンヘッドは追放モノじゃないけど大抵嫌な奴として出て来るので出してみた。




