サタンちゃまと沖縄クエスト7
救出されたメリーと紅蜘蛛とエイトさんの天使はもちろん無事だ。とは言っても麻痺して動けなくなって下手したらメリーは溺れ死んでいた。でも魔界業商人から貰った魔法の水着のおかげで難を逃れたみたいだ。
だからメリーは本当に運がいい。
でももしかして……魔界業商人はそれを予期して俺たちに無償で水着を渡したのかも知れない。
だって、タダじゃないと受け取らないし、着もしないだろうね。特にケチな聖女さまなら尚更だったよ。
さて、とりあえず自分のステータスチェックをしておくか。
『ステータスオープン』と心の声で唱え俺は指でタップして表示させた。
【 職業サタンちゃま レベル133 魔力1028 攻撃力413 力398 体力177 素早さ300 幸運1553 特殊スキル 悪魔ガチャレベル23 魔石ガチャレベル15 】
まぁ、スキルレベルもあがってないし、これといって劇的な数値の変化もないからこんなもんだろう。
慣れとは怖いモノで俺は、喜びもせず落胆もせずに平常心でそっとステータス表示を消した。
で、皆んなを乗せた漁船は港に向かっている途中なんで、キョロキョロ見渡した俺は甲板に寝かされているメリーの元に向かった。
ほっとくと冷たい悪魔と思われたくないからな。
俺はメリーの側に寄ってしゃがむと顔を覗き込んだ。
「メリー大丈夫にゃ?」
「…………大丈夫だったら寝っ転がってないわよ……」
あお向けに寝たメリーが額にのせた濡れタオルを外すと、気だるそうな表情で俺の顔を見て言い返した。
「港に着いたら海水浴場に行きたいかにゃ?」
「無理っ……さっさとホテルに帰って寝たい……」
「にゃるほど……」
身体を回すと俺に背中を向けてそう言った。
彼女の性格からして港に着いたらはしゃいで、海で泳ぐと無茶言いかねなかったので用心して聞いたんだが、その心配はなかったみたいだ。
さてメリーは心配いらなかった。そうなるとタコに捕まった二人の天使の容態が気になるな。
俺は振り返り紅蜘蛛とエイトさんを探した。すると二人はピンピンしていて、谷川シェフが振る舞っていた漁師飯を味わっていた。
俺は側に寄ると不思議そうに顔を見あげた。
「あら、なによサタン」
「……」
相変わらず紅蜘蛛は好意的じゃないな。ま、好かれても嫌だし、この距離感でも別にいい。
さて、一方エイトさんはしゃがみ込んで俺と目を合わせてくれない。彼女の場合は俺に対し嫌いと言うより、なんか恐れてる様子だな。
自分で思うのもなんだが、こんな可愛らしい幼女を何故恐れる?
やはりサタンだからか……そんな俺の過去を知る日が、残り二つのクエストクリアで迫っていた。
「天使にゃのににゃんで捕まったにゃ?」
目を合わせないならそれでもいい。しかし、気になることは今すぐエイトさんに聞くべきだと思った。
すると彼女が振り向き眠そうな目を俺に向けた。
「ワザとに決まってるのだ」
「にゃっ……?」
「……紅蜘蛛と相談して大タコに捕まって君がどう行動するか試していたのだ」
「……で?」
「不本意ながら合格なのだ……もしもあの時君がコレを好機と見て、気を失った天使の命を奪おうとしていたら……」
そこでエイトさんは口を閉じた。と言うか居眠りしている。
なるほどねぇ、俺を試すためにワザとタコに捕まったんだ。まぁ、そんなことは一ミリも脳裏に浮かばなかったけど、一歩間違えれば天使を敵に回していたな。
しかし、その心配は俺には最初からなかった。何故なら彼女たち天使は心強い仲間と思っていたからだ。
俺たちを乗せた漁船が港に到着した。
メリーのために病院に行こうとしたが、彼女自信拒否してホテルに休みたいと申し出た。
命には別状ないと判断した聖女さまが、彼女の意見を尊重してホテルに戻った。
□ □ □
「皆様方。今日はお疲れさま」
ホテルのロビーで聖女さまが皆んなの前で頭をさげた。世間一般的には高貴な印象な彼女だから威張らない。その振る舞いに皆感心していた。
まぁ、聖女さまのウラの顔を知っている俺はその隅っこにいて、冷めた白い目で眺めていたよ。
「明日は次のクエストのために徳島県に向かいます。ですから夕食を取ってお風呂に入ったら速やかに就寝するようにお願いしますねっ!」
「にゃっ!」
何故か聖女さまが俺の方を向いて強く言った。それを言うならヤンチャなメリーに言って欲しいな。
「お腹空いたわ。あたしについて来なさいちびっ子」
「にゃあっ!」
前屈みの姿勢で辛そうなメリーが俺の手首を掴んで引っ張った。いやいや休んだ方がいいと思うが、空腹には勝てないのかまたは、彼女の飯に対する執念の強さがそうさせるのか俺は驚いた。
「お前らも食いに行くのか?」
一階にあるレストランの夕食券を握り締めた谷川シェフが話し掛けて来た。
俺とメリーは返事を返すと彼も一緒に食事をすることになった。
「ブュッフェ形式か」
レストランに入った谷川シェフが言った。店内のテーブルに大皿に乗った様々な料理が並べられていた。
「ブュッフェってなに?」
なにも知らない異世界人のメリーが聞いた。すると谷川シェフが『決められた時間内なら、ここに並べられている料理は好きなだけ食えるって意味さ』と分かりやすく説明した。
するとメリーの目が輝いた。
「なにそれ楽しいっ!行くわよちびっ子!」
「にゃっ!?」
せっかちなメリーは俺の腕を引っ張りブュッフェコーナーに向かった。
その後、俺が取り方を教えながら好きな料理を皿に盛って席に座った。
「美味そうじゃないの。ねえっ谷川っコレ食べたらお代わりしてもいいのっ?」
「ああ、好きな分だけお代わりしてこい」
年上に呼び捨てかよ。
しかしなぁ、メリーが皿に盛った料理を見て食えんのかと思った。だって鳥の唐揚げとハンバーグとミートソースパスタとグラタンをこんもりと盛り付けて、食い放題で序盤から失敗するパターンじゃないか?
まぁ、楽しむのはいいけど、後半食べ切れなくて後悔するなよ。
「しかし、いよいよ残りクエスト二つか……」
やや緊張した面持ちの谷川シェフが言った。
クエスト終了後に、いよいよ魔王軍の死将に連れ去られた奥さんと娘さんを救う。異世界大陸の旅が始まるのだから。
気持ちは分かる。俺もクエスト終了後に全ての秘密を知ることになるのだから……。
そんな中、友人の松川から一通の電話が入った。
「にゃっ……もしもし」
「ちびっ子なに一人ごと言ってんの?」
脳に埋め込まれた通信デバイスで会話してるから、なにも知らないメリーにとっては独り言に見えるのは仕方のないことだ。
しかし、大事な話みたいだから無視した。
「にゃんにゃ松川っ?」
『ああ良かった。今どこにいる?』
「にゃっ!今沖にゃわにゃが……」
『沖縄か遠いな……』
陽気な松川が俺のあざとい猫口調に対しツッコミを入れるハズなんだが、一切返さず声のトーンが暗い。
まさかなにかあったのか?
「にゃんにゃ急に松川?」
『いや実は、パーティーが魔物の群れに襲われて俺以外全滅しちまった……』
「にゃんとっ!」
『い、今はギルドに保護されて無事だがその……悪いが俺をお前んとこのパーティーに入れてくれないか?』
「にゃっ……分かったにゃ、あとで聖女さまに聞いてみるにゃ」
『ああっお前がいて助かったありがとう。いい返事待ってるぜ』
そう言って松川から通話を切った。
いい返事はしてみたもののどうしようかと正直困った。だって彼は凡人だから聖女さまが仲間に受け入れるかは難しいと感じたからだ。




