サタンちゃまと沖縄クエスト6
ちょっと喋り方に癖のあるイルカ型悪魔のデビルドルフィンを引き当てた。
悪魔らしくサングラスで決めたチョイ悪な風貌だけど、外すと粒らな瞳がなんとも可愛らしい。
で、俺の代わりにクレナがデビルドルフィンことデビドル(なんか略すとグラドルみたいだな……)の背中に乗って巨大タコに戦いを挑むことになった。
「頼むにゃデビドル」
「……」
勝手に名前を略したのが気に食わなかったのか彼は黙った。
だけどしばらくして振り返った。
「失礼ですがサタン様。ワタシをレベル1のままで戦わせる気でしょうか?」
「にゃっ!す、すまんっ忘れてたにゃっ!」
俺は慌ててモスマンを呼んで、口から溜めていた魔石を吐き出させた。
それでまぁ、十五個ほど手渡した。
「……」
「にゃっ!」
それを見ていたデビドルがまた黙った。気のせいか顔がより真っ青になっていた。
「失礼ですがサタン様。モスマンのインフィニティーストマックはアイテムを無制限に収納出来る便利な機能なのは承知です。しかし、流石に口に入れる物を出し入れするのはいかがと思います」
「すっすまにゃいお前たち。正直そこまで考えてにゃかったにゃ」
俺は部下から指摘された非は素直に認め、頭をさげた。なんて行儀の良いちびっ子な自分。
「サ、サタン様っそ、そんなつもりじゃありませんでした。頭をあげてくださいよ」
「本当気が回らなくてごめんにゃ」
俺は魔石を海水で洗い、恐縮したデビドルに渡した。やれやれ、神経質なイルカだ。
「え、ああ……洗ってもらえると助かりますね。丁度塩味が効いて美味しいですなぁ……ボリボリ」
「にゃっ!?」
洗ったとたんデビドルは、色とりどりの十五個の魔石を飴を齧るように平らげた。
すると彼のレベルが30になった。
ステータスをチェックしようと思ったけど、現場はそれどころじゃないので、早速二人の背中を押して戦いに向かわせた。
「ではサタン様。参ります」
「頼むにゃクレニャッ!」
「ハッ!」
デビドルにまたがったクレナが俺に忠誠を誓ってから、颯爽と大海原に飛び出した。
目を覚ました巨ダコが、余った触手を伸ばしクレナを捕まえようとする。本当女好きのエロタコだ。
あと俺に手を出さなかったのはロリコンじゃないと言えよう。
「おいっ!来たぞっ!」
「まぁ、慌てなさんな。海の上では最速のスピードを誇るワタシがタコなんかに捕まりはしませんて」
「ちょっと待てっ!そ、それも困るっ!」
絶叫系マシンが苦手なのかより焦ったクレナがデビドルの背ビレにしがみついた。
そして猛スピードで海面を泳いで迫る触手をかわした。
「ばっ馬鹿っ速すぎるっ!コレでは剣を振るえないではないか?」
「おやっ? 悪魔騎士様なら片手で剣を振るえるとワタシは思ってましたので、仕方ありません。スピードを緩めますか?」
「……私を舐めるなっ!」
イルカに煽られプライドに火がついたクレナが左手で背ビレにしがみつき、右手で剣を振りあげすれ違いザマにメリーを捕らえていた触手を切断した。
「ハハッ!なんてことはないな?」
やれば出来る子のクレナの調子が乗ってきた。
そしてアレよコレよと次々と触手をぶった斬っていく。
「今何本か?」
斬ることに夢中で数える余裕がないのか、クレナはデビドルに聞いた。
「八本です」
「それじゃ全部か?」
「コイツが生物としてのタコと同じなら恐らくそうです」
「ならストップだ!」
クレナの指示でデビドルが急停止した。目の前には全ての足を失った巨ダコが顔を真っ赤にして睨みつけていた。
しかし、スタートから早いもので、全ての足を斬るのに1分位しか掛からなかったと思う。
それだけスピーディーだった。
俺は今回のことでつくづく思うことがあった。
それはなにも攻撃力が高ければいいって物じゃないこと。彼の最大の武器は泳ぐスピード。ただし、それだけだと体当たり位しか攻撃の手段がない。
そこにクレナの剣の技術が合わさると自身の力を超えた攻撃力を得ることになる。
そう。なにごとも組み合わせが大事で今後の戦略の参考になった。
『シュシューーッ!』
怒った巨ダコの管のような口が膨らみ。クレナたちに向かって真っ黒な墨を吐いた。
「こりゃたまらんっ!」
「くっ!貴様っ!」
デビドルが海中に潜って逃げたので、足場を失ったクレナが翼を広げて飛んだ。
目の前には頭だけの巨ダコが口を尖らせている。
「腕の無い貴様は敵ではないわっ!」
『ギュッ!』
大上段で剣を振りおろしたクレナは巨ダコを脳天から真っ二つにした。
物凄い水しぶきをあげ二つに割れた胴体が海に沈んでいく。
そしてレベルアップの知らせが鳴った。召喚悪魔が魔物を倒せば自動的に経験値が俺に流れる仕組みだ。
俺のレベルが133になった。
人間と違って悪魔だけに、まだまだ伸びていく気がするな。
「良くやりましたね」
「にゃっ!」
珍しく聖女さまが俺を褒めてくれて頭を撫でてくれた。でも普段褒めないから、裏でなんかあるのかと身構えてしまう。
一方クレナは相変わらず聖女さまに敵意を向け。いつでも剣を抜けるように柄を握っていた。
「あら、そんな怖い顔しないで仲良くやりましょう?」
「フンッ!我がサタン様の首に犬の首輪をハメる奴など信用出来るか」
「あらぁ、それは猫用よ」
「どうでもいいっ!それに意味は一緒だ!」
聖女さまの屁理屈を一喝するクレナは振り向いて俺と目を合わせた。そして、『これ以上いると怒りに任せて剣を抜きかねない』と言って自らファイルに戻りたいと言った。
「分かったにゃっクレナありがとうにゃっ!」
「はいっどういたしましてサタン様」
俺にだけ見せる笑顔のクレナが消えてファイルに収まった。そのあとに他の悪魔たちも続き消えた。
その度に俺は寂しさを覚えた。
しかしいつか、四六時中彼らと一緒に過ごす日々が訪れることを夢見た。
沖縄編のバトルはコレで終わりですが、あと一話沖縄編です。




