サタンちゃまと沖縄クエスト2 ソーキそば屋の珍客
サタンちゃまの猫口調記念。
2月22日22時22分(にゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃーにゃー)に投稿。
地元民に訊いてソーキそばの名店の暖簾を潜った。すると食堂のおばちゃんが陽気な沖縄弁で接客の挨拶して来た。
名店にしては店内は空いていて、先客は観光客風の家族連れとカウンターに一人コート姿の怪しい男がそばを啜っていた。
「にゃっ!?」
今はバリバリな真夏だぞ。しかも南国の沖縄。これはちょっと……見なかったことにしよう。
とりあえず入って左奥のテーブル席が空いていたので、聖女さまがそこに決めた。
いつも誰かさんが出しゃ張るけど、決定権は一応聖女さまが握っている。
「とりあえずソーキそばは決まりだけど、サイドメニューはどうする?」
楽しそうにメニュー表を開いたメリーが早速仕切り出した。
それにしても、誰もがソーキそばを食べた訳じゃないのに決めつけちゃうのが、せっかちな彼女の性格だと思った。
「じゃあ、サイドメニューにラフテーとゴーヤチャンプルでどうだ?」
谷川シェフが皆に聞いた。
ラフテーとは沖縄流豚の角煮のこと。で、チャンプルーとはゴーヤと卵と島豆腐を混ぜ炒めた郷土料理でいずれも沖縄を代表する料理だ。
流石シェフだけあって誰もが納得する料理のチョイスだ。
注文してから全員分のソーキそばと、分けて食べるラフテーとゴーヤチャンプルーがテーブルに並んだ。
『ほうっ、どれも美味そうじゃのう』
俺の隣に座った竜神さまが匂いを嗅ぐと言った。
「う〜ん……美味しそうだけど箸は使えないわね……」
メリーが言った。
聖女さまは上手に箸を使っているけど、確かに異世界人には厳しい話だ。だからメリーはフォークを借りてそばを食べ始めた。
とりあえず俺もそばを食べた。
ソーキそばのスープは澄んでいて一見薄味に見えるけど、れんげで掬って一口入れるとダシの効いた味がとても美味しい。
「うみゃいっ!」
「にゃーにゃーうるさいわねーちびっ子」
「にゃっ!」
せっかく沖縄料理に感動してるところを水を差すなメリー。
「その口調……昔と変わりませんなぁ……」
カウンターでソーキそばを啜っていたダークコートの男が独り言を言った。
しかしそれは明らかに俺に対して言った言葉で皆、怪しい男に注目した。
「な、な、な、何故あの男が……そこにいるのだ……」
俺の対面の左斜めに座るエイトさんが急に震え始め、男に向かって指を差した。
そしてエイトさんの左隣に座る紅蜘蛛がクナイを握り、やはりコート男の背中を睨んだ。
二人の天使は異様な男を警戒していたが、何故かメイドのサガネさんも鋭い眼光で彼を睨んでいた。
「オーケー。他人に指を差すとは失礼だとは思わないかダメ天使」
「にゃっ!?」
不意にコートの男が立ちあがりエイトに向けて話し掛けた。
『……』
皆は使っている箸を止め振り返り男に注目した。
改めて見るその男の異様な姿に皆黙った。
2メートル以上の長身で黒生地のスーツにダークコートを羽織り、パーマを掛けた黒い長髪にロングシルクハットを被っていて両手に包帯をグルグル巻いていた。火傷かまさか……単なる厨二病か……。
で、足元に直径1メートルの年季の入った鉄製の鞄が置かれていた。
そして、イケメンだけど右眼が真っ赤に怪しく光っていて、白い歯をニィッと見せ凶悪な笑みを浮かべていた。
はっきり言って関わってはいけない部類の人間に見えた。とはいえ、人ならまだ良かった。
「……」
エイトさんが席を立ってこともあろうに、男の前に立って指を差した。
隣に座るメリーが『血迷ったかたこ焼き屋!』とツッコミを入れた。まぁ、気持ちは分かる。わざわざ刺されに行くために狂人に話し掛ける馬鹿はいない。
しかしどうやらエイトさんはコートの男を知っている素振りだ。
そして、指を差しながら小さな口を開いた。
「諸悪の根源……」
確かに初対面の相手に『諸悪の根源』呼ばわりは失礼過ぎる。しかし、紅蜘蛛やサガネさんや竜神さまも立ちあがって聖女さまを守った。
確かにこの男から禍々しいオーラが出ているけど、まずは正体をハッキリさせてから判断した方がいい。
「オーケーオーケー!」
コートの男が両手をあげそして、ハットのツバに手を掛けるとニヤリと笑った。
「エイトの言いたいことは良く分かった。しかしだ。いきなり失礼な天使だ……殺すぞ?」
「……」
蛇に睨まれた蛙のようにエイトさんは額から汗を吹き出し、震えて固まった。
いくらヘッポコ天使のエイトさんだけど、腐っても天使騎士だからなぁ……どんだけやばい男なんだ?
ガタッ!
突然谷川シェフが立ちあがってコートの男を睨んだ。
「まさかお前っ魔王の手先かっ!?」
「それは違いますよ。ミスター谷川」
「じゃあなんだってんだよアンタ普通じゃねーぞ?」
「オーケーでは自己紹介しよう。私の名は魔界行商人。名はクロウリング・ケイオス」
「魔界行商人だぁ……」
聞いたことのない職業に谷川シェフは首をかしげた。
でも、クロウリング・ケイオスって這い回る混沌って意味だよね。確か……いや、すっごく邪悪なネーミング。もしくはコレも厨二入っている。
悪魔と天使がいるなら、他にもヤバい奴もいるよなぁ、魔王もいるくらいだから。
だったらこの男は……。
「諸悪の根源とは失礼だなぁ……」
「おいっ……」
魔界行商人は勝手に俺たちのテーブル席に着いて、ソーキそばを啜り始めた。
「彼が諸悪の根源とはどう言う意味ですか天使様?」
聖女さまがエイトさんに聞いた。
「……い、い、今は詳しくは言えないのだな。だ、だけど……千三百年前に行われた天使軍と悪魔軍との第一次最終戦争でこの男は、魔王レプリカ二体を兵器として製作し、天使軍に売り払ったのだ……」
「ちょっと魔王のレプリカッて!」
アホのメリーもそのヤバさに気づいて立ちあがった。
「落ち着くのだメリー。天使軍はサタンを倒すために魔王レプリカを購入したのだ。そして主人に忠実な魔王レプリカは暴走しなければ安全な兵器だったのだ……」
『んっ?』
エイトさんの最後の言い方に皆が気になって顔をあげた。
「暴走しなければ安全ってなによ?」
メリーが聞いた。とりあえず気になることは真っ先に彼女が動いてくれるから楽でいいな。
「そ、それは……一体だけ悪魔軍に奪取され鬼として兵器利用されたのだ……」
確か空からスーパードラコスが落ちて来るとか言ってたな。
厄災って悪魔軍に魔改造された魔王レプリカのことか……。
「オーケー落ち着け」
ソーキそばを平らげた魔界行商人がそう言って右手をあげた。
「お前っ!」
警戒したエイトさんが虹斧を出して握った。
これ一応必殺武器だろ? 初っ端からソーキそば屋内で出すなよ。
それだけに警戒すべき男か……。
「おばちゃんソーキそばお代わりだ」
「どうもね。ソーキそば追加やー」
どう見ても怪しい客のお代わりに応じる食堂のおばちゃん。しかしまぁ、手をあげるから何事かと思ったら、なんてことはない。お代わりかよ。
肩透かしを喰らった俺たちは、もう少し魔界行商人から詳しい話を聞くことにした。




