サタンちゃまと沖縄クエスト1
「着いたーーっ!」
沖縄に到着して青い海を見たメリーがジャンプしてはしゃいだ。
俺も実は海が好きで砂浜にダッシュで行きたかった。だけどメリーが先にはしゃいだから気持ちを控えた。
しかし、異世界人だからってそんなに海が珍しいのか疑問が湧いた。
確かに生臭い匂いのワカメが打ち上がるような灰色の海より、エメラルドブルーの白い砂浜の南国の海は格別だ。特に北国の人間は南国の海はほぼ未経験で憧れてると思う。
逆に南国の人が北国の雪に憧れる気持ちと同じだなよな。
ちょっと気になるから本人に直接聞いてみよう。
「にゃあメリーの国には海はにゃいのか?」
「失礼ねっ海位あるわよっ!」
「にゃっ!」
「んーー……でもね。あたしが育った村は山奥で海は遥か遠くで縁がなかったわね」
「にゃっ……」
何気に自分語りしてるがメリー。お前は田舎者だったのか……。
「なによ。バカみたいに口開けてちびっ子。それより今からどうするの泳ぐ? それとも潮干狩りする?」
「……」
なんでメリーが潮干狩り知ってんだよとツッコミたくなった。
大体真夏は時季じゃない。ま、まぁ、南国の潮干狩りは興味は無いとは言えない。聞いた話ではクモ貝とか南国特有の海産物が採れると言うじゃない。
とは言え、俺たちは遊んでいるヒマはない。
とにかく冒険の依頼で来てるのに、使命を忘れたメリーは早速海で泳ぐ気だ。
「駄目よメリー」
考えが俺と同じで聖女さまがメリーに釘を刺した。
言わんこっちゃない。ダダこねて怒られても知らないからな。
「あっ聖女様……ですよねー。だったらクエスト終わったら?」
「駄目よ。一週間以内に三つのクエスト終わらせる必要があるの。だから遊んでいる時間はないのよ」
「そんなぁ……じゃっじゃあ、今日は遅いから冒険は無しですよねぇ?」
「そうね……今日は遅いので夕食を済ませてからホテルに向かいましょう」
「ゆっ夕食っ!!」
喜ぶのがそっちかい。
しかし、沖縄のホテルとはコレまた豪華だ。とはいえケチな聖女さまのポケットマネーから全員分出すとは思えないから、多分依頼主の政府負担だな。
流石は聖女さま。政府負担ならここぞとばかりにホテルを利用する。この図太さは見習うべきか……。
「で、メリーはなにが食べたい?」
谷川シェフがメリーの肩にヒジを乗せ、気楽な態度で話し掛けた。
しかしまぁ、なにも知らない異世界人に、ましてや滅多に行けない沖縄で聞くか?
まぁ無茶振りするオヤジだ。
「……え〜と、ソーキそば食べる」
「おっ!」
『谷川シェフがなんで知ってんの?』と言うような、ちょっと驚く表情を見せた。
まぁ、言ってないけど、俺は人の心の声が聞こえる。
「お前良く知ってんなぁ〜?」
「えっ、だってあの本に載ってたよ」
「本だと……?」
「ちょっと待って」
メリーが車に戻ると一冊の薄い本を持って来た。その色鮮やかな表紙には、『沖縄旅行』とレイアウトされていた。
「かあっ!ガイドブックかよっ!コイツは一本取られたぜ。しかし、なんで沖縄を調べる気になったんだ?」
確かにそうだ。
これまでも観光地に行ったけどメリーは、わざわざガイドブックを買ってまで調べることは無かった。
だったらなんで沖縄なんだろな?
確かに毎年の観光地人気投票で、五本の指に入るほど人気なのは分かる。ただ、メリーは異世界人だから知りようがない。
だったら考えられる答えは一つ。誰がメリーに知恵を吹き込んだに違いない。
□ □ □
ホテルのチェックインを済ませてから全員で、ソーキそば屋に行くことになった。
しかし外出するにはどーしても目立つ仲間がいる。それは派手な化粧と真っ赤でセクシーな忍者服の紅蜘蛛だ。
まぁ、確かに駄目とは言えないが、そこは他人の目が気になる。(冒険者が多い。異世界大陸なら問題ないけど……)
とにかく日本の日常だと紅蜘蛛の格好は目立つ。だから俺は同族のエイトさんに頼んで注意してもらうことにした。
彼女は心良く俺の頼みを聞き入れてくれた。流石天使さまだ。
「皆んなと一緒に食事したいか紅蜘蛛?」
「なにを急に……どう言う意図があって聞いてるのよ。返答次第とあっちゃタダじゃおかないわよ……」
「……」
元悪のくノ一だけあって、なんでも後ろ向きに考える紅蜘蛛がエイトを横目で睨んだ。
ほらっ内向的なたこ焼き天使が黙ってしまったよ。どうでもいいけど、ウチらの天使はロクな性格の奴いないな。
会う前までは、天使と言うと清楚で優しく完璧なイメージだったけど、特に紅蜘蛛見ていい印象が崩れ去ったワ。
嫌だけど仕方ない。時間がないから俺が助け舟を出すか。
「紅蜘蛛っエイトさんを困らせるにゃっ!」
「あら、サタン……貴女死にたいの?」
「にゃんっ!」
紅蜘蛛に睨まれた俺は両手をあげて、聖女さまのうしろに隠れた。
脅しにしてもその目は本気で怖かった。
過去に俺が天使軍になにをしたのかは記憶にないが、折角仲間になったから、いつか和解して仲良く冒険したいな。
「紅蜘蛛っちょっとその格好は目立つから普通にして欲しいのだっ!」
エイトさんが勇気を振り絞って紅蜘蛛にちゃんと言った。しかし、話しが通じてないのかくノ一は首を捻った。
「普通ってなによ?」
「そ、それは……」
想定外の質問に答えを用意してないために、また黙ってしまったエイトさん。
分かるよ。それは特にコミニケーション経験値不足のボッチ特有の悩みだね。
「とにかくその派手な化粧と服装はこの日常ではアウトなのよ。だから目立たない格好になれるかしら?」
横で見ていて剛を煮やしたメリーが紅蜘蛛にハッキリ言った。
流石陽キャの彼女はズバズバ伝えてくれる。なんと言うか、戦力的にはアテにはならないけど、こう言うトラブルの仲裁とかに頼りになる存在だ。
だから、誰一人無駄な人員なんていないんだ。そう。追放なんてもっての他だね。
素直に受け取った紅蜘蛛は私服に着替えて化粧も控えめにした。
すると凄い美人さんになった。もちろん派手時も美人だけどなんと言うか、今の彼女は清楚な美人なんだ。
「ひょっひょっひょ〜♡ それではソーキそば屋に行きましょうか?」
甲高い声で笑う中身は変わらぬ紅蜘蛛さん。
黙っていれば最高の美人さんなんだけどな……。
そして俺たちは、那覇市の有名ソーキそば店に入った。




