サタンちゃまとくノ一天使紅蜘蛛
「ひょっひょーーっくノ一天使騎士こと、紅蜘蛛参上よっ!」
『…………』
紅蜘蛛が甲高い声で笑ってクナイを構えた。
その独特なノリについて行けない俺たちは一瞬黙った。しかし果敢にも沈黙を破ったのがメリー。
「ちょっとアンタッ凄く怪しいんだけど、なんなの?」
眉を釣りあげチョイキレ気味のメリーが紅蜘蛛に詰め寄った。『なんなのって?』一応名乗ったのに、人の話し聞いてないなこの女は……。
まぁ、確かに天使にしてはなんとも異色感。例えるなら、昆虫ヒーローシリーズにトカゲヒーローが混じっている違和感に近い。
そうか……紅蜘蛛は天使界の中でマンネリ化を払拭するために生まれた異色枠だな。
「ひょ〜ひょっひょ〜っ心配しないで、アタシは味方よ」
「ぜん全然っ味方に見えないわ!」
「……ほほっ!」
笑って誤魔化し、謎の自信で乗り切ろうとする紅蜘蛛。とはいえそっぽ向いたとはいえメリーはとりあえず警戒は解いた。
しかし説明皆無だったけどな。
『天使騎士か……上の階層はどうなっちょる?』
竜神さまが空を指差すと紅蜘蛛に聞いた。和風繋がりで、まさかの知り合いか……。
「あらっ竜神さまじゃな〜い♡ ……だけど、ちびっ子形態は趣味じゃないわ」
『お主の性的趣向に合わせる気はないんじゃい。それより各階層の状況はどうなっちょる?」
しかしまた階層とか俺たち地上人にはサッパリ分からないワード出されても困るな。
例え天使に聞いても、特にたこ焼き屋とかお茶を濁して教えてくれないしな。
だからネタバレなんか構わないから、早く秘密を教えて欲しいよな。
「ヤバいってもんじゃないわよ。現在地ソウルワールドを暴れまくっているスーパー鬼は天使軍を蹴散らし第五階層に進行中。近いうちココ第四階層に進行するのは時間の問題よ……」
『なんとっ!あの魔王レプリカが暴走……して原因はなんじゃっ?』
またこの二人は知らないワードを連発した。おかげで俺とメリーは置いてけぼりだ。
ただ、竜神さまの驚く様子を見て、魔王軍進行より深刻に感じた。
「今までならなんとか天使騎士の力でドラコスを倒せたのよ……しかし、とある細胞を取り入れてからあの巨ジンは無敵になったのよ……」
「にゃっ!?」
紅蜘蛛はそう言ってから振り向き俺を睨んだ。
意味は分からないけどまるで俺に原因がある素振りじゃねーか……。
本当に俺は悪くない。過去になんかした記憶ねーからな。
『この世界に降臨するのは時間の問題か……むーーっ天界の神々はどんな事態でも介入しちゃいけんからのう……』
腕組みして考え込む竜神さま。
介入しちゃいけないってアンタ俺たちにガッツリ絡んでんじゃん……。
野良神はいいのか?
「ひょっひょっ、とりあえず手は打ってあるから大丈夫よ」
『お主ら天使軍が手回ししとるならいいのじゃが……そうなると早う魔王を倒さんとな……』
相変わらず二人の会話は意味不明だった。
そもそもスーパードラコスなる者と魔王はどんな関係あるのか不明。
しかし紅蜘蛛が気になるワードをポロッと言ったな。それは『魔王レプリカ』だ。以前エイトさんが巨ジンと魔王の魂が繋がっていると言ってたけど、それと関係ありそうだな。
「さっきからなにをごちゃごちゃ言ってるのよ」
鉄格子越しに痺れを切らした極悪女将が俺たちに話し掛けてきた。
ああ、そうだった。すっかり小者の存在忘れていた。
「そうよっ!あたしたち閉じ込められてるのよっ!それにあの金ピカスライム増殖する一方よっ!」
アタフタして慌てるメリーが、竜神さまの背中を叩いてスライムに指を差した。
何度も思ったがメリーは怖いモノ知らずだ。背中を叩いている相手は神さまだぞ……。
まぁ、慌てるのも仕方ない。この中で真っ先に死ぬ可能性があるのが半端な力のメリーだからな。
言っといてアレだけど、俺自身も実は無茶苦茶弱い。しかし、サタンだけあって耐久力がある。しかも頼もしい部下たちに守られているから死ぬ可能性は低いのだ。
『ギャーギャーうるさい娘じゃのう……分かったワイ。ここじゃ狭いから場所を移すとするかのう……』
「そこのお前っ!なにをする気だっ!?」
竜神さまの金色の目が光ったので、警戒した極悪女将が指差し叫んだ。
ところでいい加減名前を名乗って欲しいよ。だって何回極悪女将と呼べばいいんだろうか?
『なにをってスライムとお主ら相手にするにはここはチト狭いのでのう……もっと広い場所に移ろう』
「なっ!ドラゴンッ?」
幼女姿の竜神さまが元の竜神の姿に戻した。
だからその10メートルサイズの巨体が洞窟牢獄一杯になって鉄格子が圧力でひしゃげた。
『今じゃ、お主ら我の背中に乗れっ!』
「えっ……マジッ!」
真竜になった竜神さまに怯えるメリーが背に乗るのに戸惑っている様子。
しかしその間にも洞窟が崩壊寸前だったので時間はない。だからか紅蜘蛛がメリーに近づいた。
「ほっほっ♡ 早く竜神さまの背中に乗りなさ〜い。さもないと……んふふっ遊んじゃうわよ♡」
「ぎゃああーーっ!」
紅蜘蛛に耳元で妖しくささやかれたメリーは、一目散で竜神さまの頭の上に乗って避難した。
「失礼ねぇ…………」
紅蜘蛛は複雑な表情を浮かべ呟いていた。
しかし竜神さまより怖がられるってよっぽどだぞ……。
『全員我に乗ったな。ではしっかり立髪に掴まっておれ外に出るぞイ』
俺たちはうなづき返事をすると、竜神さまが鉄格子に体当たりして突き破る。おまけに魔王の手下たちをつき飛ばし地下室の床を突き破って外に出た。
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