番外編 革命ロボ E-アルマー
サタンちゃまの友だちの四段変形ロボE-アルマーのサタンちゃまと出会う前の話を公開します。
一話では無理なので、番外編として本編に挟んで公開していきたいと思う。今回は世界観説明とアルマーとの出会いの第一話です。
俺の名は並木真斗非正規と呼ばれる日本人の両親から生まれた非正規日本人男子だ。年齢は27歳とおっさんスレスレだ。
いや、まだおっさんじゃない……。
しかし何故非正規日本人が生まれたかと言うと、祖国日本は戦後から勝戦国の圧力から非正規労働者が生まれ、日本人同士差別し合い分断された。
あれから100年が経過し、奴らの圧力で日本政府が更なる分断政策を実行した。
それが非正規日本人。ある一定数の高額納税を支払わない者は子を含めて非正規認定される。
非正認定された日本人は決して正規日本人と関わってもいけないし、正規向けサービスも受けられない。当然仕事も非正規で主に工場勤務だ。
俺たちは奴らが眠る時間に仕事に行き、安い賃金で強制的に働かされる。
全て強制。収容所のような寮に閉じ込められ、日曜日以外毎日夕方に決められたルートを通り仕事場に向かう。
しかし何故ルートが決められているかと言うと、それは正規日本人に不快な俺たち非正規日本人の姿を見せない政府の配慮かららしい。
外国人には優しい外面のいい日本人が日本人を差別する政策を決めた、全くもって腐った政府だ。
そんなクソみたいな世界に生まれた俺が唯一自由になり、正規、非正規関係なく自己アピール出来る場所がある。それが道路だ。
俺たちはバイクにまたがり高速道路を爆速する。まぁスピード制限守って運転してもパトカーが追って来る。何故ならこの道路は正規日本人と外国人様専用だ。だから非正規日本人は走行禁止されてる。
それが気に食わない。
クソッタレな禁止事項なんて守らない。ま、当然パトカーが取り締まりに来るが、俺と相棒の鉄矢が組めば奴らに負けねえよ。
今夜も鉄矢が運転するバイクのうしろに俺が乗って、敵対する暴走族の車に並走しボンネットに飛び移り鉄パイプでフロントガラスをブチ割った。
俺の奇襲で焦った運転手が一直線の道路でハンドルを切り壁に激突した。まぁその前に俺は相棒のバイクに乗り移って脱出済みだ。
「やったな真斗!」
「おうっ! だが、そろそろずらかろうぜ?」
まだ暴れたいが、遠くからパトカーのサイレンが鳴り響く。もし捕まったらただでは済まない。ましてや身分が低い非正規日本人だと、豚箱にぶち込まれたら二度と出られない。
鉄矢のバイクが高速を抜け出し太平洋側の非正規日本人用道路に出る。あとは入り組んだスラム街に紛れてパトカーの追跡を巻いた。
路地裏で鉄矢がバイクを停めた。
「ところで直人」
「なんだ……」
鉄矢からもらったタバコを咥え道路に座った。
「いつ動くんだ?」
「いつって、もうやらねーよ。リーダーなんて」
非正規日本人は何度かレジスタン組織を結成し、この民族同士の分断をやめさせるべく反乱を起こした。しかし例外を残し全員捕まり結成するたびに潰されていった。
その例外こそ、俺がかつてリーダーを務めていた革命軍だ。多少仲間の犠性があっても組織は生きている。ただ俺が怖気づいたんで活動休止中で鳴りを潜めていた。
どんよりとした有害物質入りの曇り空の14時目を覚ました。これから夜勤が始まる憂鬱な目覚めだ。
とりあえずパンを食べてから出勤時間まで睡眠を取り、渋々着替えてアパートを出た。
非正規日本人自治区の非正規専用の道路を歩く。もし間違えて正規日本人専用道路を通ったら、即座に通報されてブタ箱送りだ。
全く同じ日本人同士なのに俺たち非正規日本人は人間扱いされてないってことさ。
□ □ □
仕事場の工場に通じる非正規日本人用の道は正規日本人用の道の真上に通っている。普通は逆だと思うが、正規様たちは非正規の姿を視界に入れたくないからそうなっている。
高さ10メートルほどの空中通路を一本の手すりを頼りに歩く。安全なんて配慮されていないから、足を踏み外したら地面に真っ逆さまであの世行きだ。
「はぁ〜〜安い賃金で死ぬほど忙しい職場かぁ……行きたくねーけど、ほぼ強制だからな」
週に一回の休日を除いて休むことが許されない。例え風邪を引いても班長にドヤされ出勤だ。
だから心が病む者もいるわけで。
「んっ……」
「はっ、はっ、はっ、はっうがぁぁぁああっ!」
人の気配がしたので振り返ると、作業着姿の男が絶叫しながら走って来た。この状況に耐えられず混乱しているんだろう。
巻き込まれるわけにはいかないんで、俺は道を開けた。するとコイツは通路から飛び出し落下した。
その直後肉が弾け、骨が折れる音がした。
恐らく助からない。
彼はこの理不尽な世界を生きるより楽な死ぬことを選んだ。だから俺は止めなかった。
「理不尽な差別から死んで逃げたくなる気持ちはわかるよ……だけど俺は……」
正規日本人のまるで鬼軍曹のような班長にドヤされながら、ベルトコンベアーの地獄のような流れ作業を終えて深夜、ヘトヘトになりながら帰った。
自暴自棄になって自ら命を絶った見知らぬ男。気持ちは痛いほど分かるが、俺はまだ生きるのをあきらめてはいなかった。
このまま奴隷のように差別されて働き続けるか、このクソったれな世界をぶっ潰してやるかの二択しかねぇよな……。
俺はふと夜空を見あげた。
「んっ……」
すると満月を横切る戦闘機に気づいた。
それがUターンして俺の方に凄いスピードに飛んで来た。
「なっ、なんだっ!?」
あっという間に俺の前に空中停止した戦闘機。しかし違和感に気づいた。戦闘機にしては小型だ。全長は4、5メートルだ。
『並木真斗……それがユーの名だな』
「せっ、戦闘機が喋った!?」
ビックリして思わず空中通路から落ちるところだった。まぁなんとか手すりにしがみついて踏み止まった。
喋る戦闘機。
コイツは一体なんなんだ?
正規日本人が作った秘密兵器か?
それは分からないが、とにかくコイツの正体を知りたくなった。
「なんで俺の名を……」
『それはミーが博士からの命を受け、この世界を変える救世主の力になれと来た。だからユーの名を知っているのさ』
「お、俺がきゅっ、救世主だと……確かにレジスタンスのリーダーだが……今は活動停止中だ……」
『ミーと友だちになれば、世界を変えられる』
「無茶言うなっ! お前が何者か知らねーが、奴ら正規日本人政府が持つ最新鋭の兵器の数々に俺たちレジスタンスは太刀打ち出来ねぇんだ」
『それを承知でミーが来た』
「なにを根拠にっ……!」
戦闘機が突然変形してロボットの姿になった。全長5メートル、白と青の機体色にヒロイックなツインアイの顔。
まるでヒーローロボのようなデザインだ。
ソイツがゆっくりと降り立つ。
ボロい非正規通路がキシミを立てて崩れるかと一瞬ドキッとしたが奴の足元を見ると、わずか5センチほど中に浮いていた。
「なんなんだお前……」
『遠い星から来たミーの名は、E-アルマー(気楽な兵器)。真斗っ友だちになろう』
アルマーと名乗ったロボットが俺に右手を差し出した。まさロボに友だち申請されるとは、生まれ初めてだ。