サタンちゃまと竜神の怒り
実体化した竜神さまが俺たちを激怒した真っ赤な目で睨んでいた。
俺たちが勝手にこの聖域に侵入したからか?
それとも、先ほど言った。この地を汚す者と勘違いして怒っている可能性。
とにかく訳が知りたい。
話し合いして戦いを避けれるならそうしたい。
だから俺は前に出た。
「ちびっ子!」
世話役のメリーが止めよと叫んだけど、悪魔騎士のクレナが睨んだので手を引っ込めた。
ありがとうクレナ。
さて、内心ビビっている俺は竜神さまの前に立った。
『ほう…………サタンが何故人間と天使と手を組み共にする……』
「……アタチは記憶を取り戻すために魔王討伐の旅をしてるにゃ、そして彼らにゃ大切な仲間にゃのだ」
『なるほど……人間に生まれ変わり良心が芽生えたか……それとも……』
「にゃっ!?」
意味深なことを口ずさむ竜神さまの気が一気に高まった。それは真っ赤な怒りの気だ。
鈍感な俺でも可視化出来る凄まじい怒気だ。
『我の怒りの要因は、この地が汚されただけではない……』
目を細めた竜神さまが空を見あげた。
「我の頭上にそびえ立つ橋を見よ」
竜神さまの頭上に、自殺の名所と心霊スポットとして有名な鉄骨の八木山橋がそびえ立っていた。
『我が静かに寝ておると、毎月二名は人が落ちて来る。じゃから昔から竜の口渓谷が穢れる……しかしそれにはわけがあるハズじゃ……異世界大陸の一部がこの表の地球に来てから三年……人々は苦しみ疲弊して、中には混乱に乗じて富を得る者が出て貧富の差が激しくなった。そのせいでか若者たちが犯罪に手を染め世の中がより荒んできた』
「…………」
竜神さまの本当の怒りは、荒んだ一部の人間の魂についてだった。
確かに思い当たる最近の社会情勢。
特殊詐欺、強盗殺人、迷惑行為などそれに関わる若者が増えてきているのも事実。
竜神さまは……。
『本来希望ある若き者が悪事に手を染める。我はそんな荒んだ世を嘆いているのじゃ……』
「違うにゃっ!」
恐れ多いが咄嗟に否定してしまった。
『ほう〜悪魔が我の言うことを否定するか……』
竜神さまが真っ赤な目で俺を睨んだ。
恐怖で身がすくむ。だけど俺は若者を代表して間違いを否定し一歩も怯まない。
「それは一部の若者の行為にゃっ!」
『ほうっ……ではその一部をほっとくつもりか?』
「それも違うにゃっ変えられにゃいなら変えてしまえばいいにゃっ!」
もう自分でもなにを言ってるのか分からなくなってるが、思ったことを口にした。
『なるほど……お主なら荒んだ世を変えられる自信があると申すのだな……』
「……良く分からにゃいが、やれるだけのことをするにゃ」
『そうか……ならばその意志を我に見せて見よっ!』
「にゃっ!」
とぐろを巻き宙に舞った竜神さまが強力な気を放ち戦闘体勢に入った。
するとクレナが盾になって守ってくれた。
「おさがりくださいサタン様。あとはこのクレナが竜神の相手をしますから」
「ま、待つにゃっ!」
俺はポケットから魔石を掴んでクレナに差し出した。
赤色の魔石三個に青色の魔石二個の計五個の魔石だ。何故色違いなのか分からないけど、きっと意味があるのだろう。
「戦う前に魔石を食うにゃ」
俺はクレナに魔石を手渡した。
「よ、よろしいのですかサタン様?」
「構わんっレベル1 じゃ心許ないにゃろ?」
「……分かりました。では喜んで魔石を吸収させてもらいます」
魔石を受け取ったクレナが目を閉じて両手を広げた。すると魔石が宙に浮いて彼女の胸に吸い込まれて行った。
「にゃっ!」
『なんだ』別に食わなくても、こうして優雅に吸収出来るのか。
モスマンに松尾見ているか?
まぁ、彼らは魔石をガリガリ食う方が性に合ってるか……。
『レベルがあがりました』
レベルアップのメッセージだ。
早速俺はクレナのステータスを表示させた。
【 悪魔騎士クレナ レベル6 魔力32 攻撃力230 力69 体力120 素早さ72 幸運27 特殊スキル 暗黒武器レベル2 バイアタックレベル2 】
体力と攻撃力が特に高い。それはどうしてかとちょっと考えた。
恐らく与えた魔石の色が関係あるとみた。つまり青の魔石は体力上昇で赤の魔石は攻撃力だ。
そうなると他の色も調べる必要があるな。
「サタン様のおかげで私は強くなりました」
胸に手を当てたクレナがひざまづいて、真摯な表情で俺の顔を見詰めた。
ちょこっと石やっただけなのにこんなに感謝されると気が引けるなぁ……。
とにかく悪魔は悪い奴だけじゃないんだ。その証拠を俺に代わってクレナにやってもらおうと決めた。
「クレナっ頼むにゃ」
「ハッ!承知しましたサタン様」
返事を返したクレナが立ちあがり背を向け竜神様と対峙した。
『ほう……悪魔が我に挑むか……良かろう。全力で受けて立つ』
クレナと竜神さまの決闘が始まる。
俺たちは安全圏まで退避すると、晴天だった空が急速に暗雲で覆われた。
「ちょっとやだっ!」
ポツポツと雨が降って来たので頭を手で押さえたメリーが叫んだ。
なんだか今日の彼女は濡れてばかりで散々だな……いや、水と言えばむしろ竜神さまに好かれている証拠だな。
カカッ!
「!」
稲妻がクレナの足元に落ちた。
それから立て続けに彼女目掛けて稲妻が落ちていくが、軽い身のこなしで避けていく。
『フンッ中々やりおる』
「まぁ、稲妻を受けても大したことないが、当たってやるつもりもないから全て避けるのだよ」
そうクレナが言うと漆黒の剣を腰の鞘から引き抜いた。
『面白いことを言う悪魔の騎士だ。ならば今度は当たるように我も本気を出さねばな』
まるで本気じゃなかったから避けられたと言いたげだ。
こうしてプライド高い者同士が笑いながら決闘を始めた。
次話完成次第更新予定です。




