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ちびっ子猫口調TSサタンちゃまは悪魔ガチャで頼れる部下を集め、仲間と一緒に異世界大陸を楽しく冒険するにゃん♬  作者: 大空司あゆむ
日本クエスト編

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サタンちゃまと渓谷の主2

 

「レベルが28にあがって嬉しいけどシンドイわ……」


 身体に毒が回ってきたのかフラフラになったメリーが沢の上に寝転んだ。

 まぁなんだ……今日の彼女は水ぶち撒かれてずぶ濡れになったり、毒が回って寝転んで泥まみれになるなど散々だな。

 もしかして場所が場所だけに呪われてる?


「にゃにゃにゃっ♬」


 自業自得とはいえ、不幸なメリーを見ていたら何故か笑いが込みあげてきた。

『不謹慎だって?』いや、笑える不幸だから気にしない。


 しかしメリーのレベルが28かぁ……俺は初心者冒険者だからレベルが高いのか低いのかサッパリ分からん。

 ただ言えるのは、元勇者チームの一員にしてはパッとしないレベルだ。


「マジ死にそう〜あー〜死にたくねーよ〜っ」


 自暴自棄になったメリーが悪態をついて寝転んだまま空を見あげた。

 刑事ドラマの殉職寸前の刑事みたいだけど、そろそろ解毒してやらないと笑えなくなってきた。

 それと負傷した谷川シェフの治癒も必要だ。


「聖女ちゃまっ!」

「誰が聖女ちゃまよっこの犬がっ!」

「にゃんっ!」


 バシャッ!


 ちゃまとつけたのが気に食わなかったのか、聖女さまに強制土下座させられ沢の水でベチャベチャだ。

『もう仕方ね〜だろっ!』頭では聖女さまと言っても口からは聖女ちゃまと猫幼児口調に変換されるんだ。

 だから決して悪気があってじゃない。悪いのはこの仕様なのだ。


「わ、悪かったにゃ……そ、それより早くメリーに解毒を」

「フンッ知らないっ!」

「にゃっマジにゃっ……」


 ご機嫌斜めの聖女さまがソッポ向いて解毒を拒否した。

 開いた口が塞がらないとはこのことで、彼女はメリーの命よりメンツを優先するのかと呆れた。

 しかし改めて聖女さまの心には、なにかが欠落していると改めて感じた。


「回復ならエイトに任せるのだ」


 ムツけた聖女様が動かないので俺が困っていると、後ろからエイトさんが手をあげた。

 回復魔法が使えるのか知らんけど、確かに天使さまならなんとかしてくれる感は凄い。


「なんでもいいけど早く解毒してっ!あたしはまだ死にたくねーのよっ!」

「にゃっ……」



 死ぬ間際に醜態をさらすメリーの姿を見て俺は若干引いた。


「分かったのだ。まずはメリーからだな」


 そう言ってエイトさんが右腕をあげた。


「出よジャッチメントアックス!」

「にゃっ……」


 右手に虹色の斧が握られていた。

 しかしここに来て何故か武器を出す不可解な天使。

 まさかトドメを刺しにきたのか?


「ち、ちょっと……お、斧なんか持ってあたしにナニする気ぃ?」


 なんとか上半身を起こしたメリーが震える声で聞いた。

 すると眠そうな瞳でメリーを見詰めるエイトさんが『解毒させる』と言って斧を振りあげた。


「ひいいっ!」


 火事場の馬鹿力とは言ったもので、麻痺しているにも関わらずメリーは崖下まで後退して逃げた。

『あーもう』泥だらけだよ。


「大丈夫。このジャッチメントアックスは善には癒やしを与え、悪には大ダメージを与える効果があるのだ。つまり、メリーが善人なら癒やしの効果で身体中に回った毒素が一瞬にして消えるのだ」


 その話しが本当なら、回復魔法要らずだな。


「そ、それって本当でしょうね……」


 ここまできて疑り深いのかメリーが聞いた。

 聖女さまといいメリーといい性格に難ありな冒険者が多いな……。


「大丈夫。エイト嘘つかないのだ。しかし……」

「ちょっ……なによ急に口籠もって……」

「メリーが善人なら問題ないの、だが……」

「ちょっ冗談っ!」


 顔が真っ青になるメリー。

 もしメリーが悪に傾いていれば返って死ぬな。


「…………ふうっ〜わ、分かったわよ。もう一刻の猶予がないから決めたわ。あたしはその斧に賭けるわ」


 迷いが吹っ切れたメリーが真剣な目でエイトさんの顔を見詰めた。


「でっ、どうやってその斧で解毒するの? やっぱ光りでパァーッと浴びせるの?」

「……」


 メリーの問いにエイトさんは無言で首を横に振った。そして代わりに斧を振りあげ近づく。


「斧で斬るね」

「ちょっとマジッ!」

「ちぇすとおぉぉ〜〜っ!」

「ちょっとヤメッギャァァァァァァッ!!」


 エイトさんが寝ぼけた掛け声と共に斧を振りおろし、悲鳴をあげるメリーの胸に向かって叩き斬った。


「…………」


 斧を振りおろした状態で動かないエイトさん。斬られたメリーは余りの恐怖に口を大きく開けて硬直していた。

 しかし不思議なことに、あれだけ思い切り斧で叩き斬ったのに血が一滴も出ない。

 それどころか傷一つ負ってない。


「もう大丈夫なのだ」


 エイトさんの体内時計の針が動き出したのか、そう言って斧をメリーから離した。


「あ、あれっ…………? か、身体が動くしなんともない…………」


 自身の身体に起きたことが信じられないのか両手を見詰め、メリーが呆然としていた。

 そして普通に立ちあがると、泥だらけの服を手で払い始めた。


 すると聖女さまがメリーの肩を触って微笑んだ。


「良かったじゃないメリーは善人で」

「どう言う意味よっ!」

「それより……お、俺にもその斧で身体の傷を治してくれ……」


 巨岩を背にして苦しそうな谷川シェフが二人の会話に割って入った。

 あの超人が苦しんでるってよほどのダメージを負ったんだね。


「んじゃあ斬るのだ」


 谷川シェフの前に立ったエイトさんが斧を振りあげた。


「ちょっと、ちょっと待てっ……」


 谷川シェフの顔が青くなる。

 善人には無害で痛みがないと分かっていても、その斧で斬られる恐怖は計り知れない。

 俺ならオシッコちびるな……。


「大の大人なら覚悟を決めるのだ。いくよっちぇすとおおっ!」

「ぎっぎゃあああっーーーー!」


 そこは気の抜けた掛け声で斧を振るんだ?

 とにかく虹斧で斬られた谷川シェフの身体が一瞬で完全回復した。


「いやいやま〜死ぬかと思ったぜ……しかしよ……」


 ホッとしたのもつかぬま、あぐらをかいてタバコに火をつけた谷川シェフの目つきが鋭くなった。

 凄腕のハンターのカンか、周囲からただならぬ気配を感じてるようだ。


 そして聖女さまも感じているようで、手にした十字架装飾のロッドを構えた。


「気をつけて、あたくしたちは今、大勢の死霊に囲まれてます……」


 そう怖いことを告げた聖女さまは十字を切って目を瞑り神に祈りを捧げた。


モデルになった渓谷に昔来たことがある。

真下には供養塔があって、謎の骨が落ちていて昼間でも怖かった。

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― 新着の感想 ―
「むつける」と言う言葉は拗ねるや不貞腐れるの仙台弁らしいですがそちらの方ですか?
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