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サタンちゃまと飼い主聖女

サタンちゃまはラストまで成長しないで、幼女の姿なので安心してください。

 

 白銀の聖女パラルに選ばれた生徒は俺が初らしい。だからか教会をあとにする際マスコミに囲まれた。


「……お退きなさい」


 すると聖女さまはなれているのか入り口を塞ぐ記者たちに対し、やんわりと退かせた。


 いや、と言うか笑顔で、棒の先にトゲトゲ球体が付いた撲殺武器モーニングスターを握ってビビらせたんだ。


 もしかしてこの女、性格も行動もヤバイ奴なのかも……。


 まぁ決めつけるにはまだ早いが、ヤバイと判断したらすぐに逃げる覚悟はしておこう。しっかし、この小さな足で逃げ切れるか少々不安ではあるな。


 が、そうこう考えている内に手を引っ張られた。『これは逃げるチャンスを逃したか……』


「さぁ行きましょうかサタンちゃま」

「にゃっ……」


 サタンちゃまって初めて言われた。しかも聖女さまに……。


 聖女さまは俺の手を握ったんで顔をあげると笑顔で話し掛けてきた。『いや人さらいだろ』怖くなったんで小さな足で踏ん張り拒否した。


「にゃんにゃっ!」

「あら……」


 不満があったから地団駄踏んで抵抗した。それに俺の名はサタンじゃない。神崎英太だ。


 それにマスコミの前でそのおかしな名を言ってもいいのか疑問だった。コンプライアンスが厳しい世の中においてサタン呼ばわりは問題ですよ。


 まぁ、聞き流したのか記者たちは気にも止めないで諦めて立ち去って行った。『ちょっと助けてよ』


 『仕方ねぇ』ついて行く振りしてスキがあったら逃げ出すか……俺は一旦深呼吸して気持ちを落ち着かせてから聖女さまの手を引っ張った。


「ねぇねぇっ聖女さまぁ〜今からどこにいくのにゃ?」


 俺は聞いた。相変わらずあざとい猫口調だが……しかしワザとじゃねーぞ。コレは仕様みたいで頭に思ったことを声に出すと、どうにもこのふざけた口調になるんだ。


 だから諦めた。とは言えその不本意な口調はどうにも慣れないな……。


「あらっまずはサタンちゃまのご両親に挨拶よ。で、お家はどこかしら?」

「む、にゃっ……」


 場所も分からずに俺の手を引っ張ってたのか。


「あっ浅草だにゃっ!」

「あらぁ〜観光名所じゃない。良かったら案内してよサタンちゃま」

「むう〜う……」


 この姿で家族と会うのは怖い。 


 果たして俺と認めてくれるのか不安だ。


「その前にトイレに入りましょう」

「あっ!確かに(たしゅかにっ)!」


 教会に入ってから色々あってそれ以降トイレに入ってなかった。それで俺は男子トイレに入ろうとしたら、聖女さまに腕を掴まれた。


「なっなんにゃあっ!」

「駄目よ。女の子なんだから男子トイレに入っちゃ」

「にゃっ!」


 俺を注意すると微笑んで女子トイレを指差した。確かにそうだけど心の準備が……。


 やっぱり慣れた男子トイレがいい。良くあるだろ? 保護者が幼女を男子トイレの個室に入れる場面がね。


「待つにゃっ!アタチはコッチでよいにゃっ!」

「駄目ですよ。さっ入りましょう」 

「にゃあっ!」


 聖女さまに担がれた俺は抵抗虚しく女子トイレに入った。なんちゅう力持ちだよ。


 女子トイレに入った。当たり前だけど、全部個室で見慣れた立ちションベン器などない。


 初めての女子トイレは全体的にピンク色で、芳香剤の匂いが鼻口を刺激して頭がクラクラした。


「さて、とりあえず奥の個室に入りましょうか」

「にゃにゃっ!そんにゃ奥でなにゃにするつもりにゃっ!?」

「あ〜ら、とりあえず身体検査よ」

「にゃにっ!」


 急にお姉さんに悪戯されるドキドキする展開に俺は焦った。


 だって俺の姿は幼女だぜ。いくらサタンにだって幼女にナニするのは犯罪だぜ聖女さま。


 手洗いの鏡の前に立たされた。そういえばまともにTSした姿見てなかったな。


「これがあなたの姿よ」

「お…………」


 鏡に映った幼女の姿は俺だ。

 あり得ない水色の髪が背中まで伸びたハーフアップヘア。エメラルド宝石のように輝くクリクリお目々に白い肌の可愛らしい幼い顔。


 俺は鏡の前で目をパチクリさせた。ロリコンじゃないが、マジで可愛い。


 あと服装は肌の露出のないフリルと宝石があしらわれた黒いドレス。まるで貴族のお嬢様が着ているように可憐だ。


 しかし頭の上に小さな二本の角が生えていた。可愛いけどやっぱり悪魔なのか……。


「さて入るわよ」

「なんにゃっ!?」


 それでまぁ抵抗虚しく個室に押し込められた。


 ガチャッ


 トイレの鍵を掛ける音が聞こえた。


 ドアを遮るように聖女様が立ち塞がり、幼気な幼女姿の俺は観念して蓋を閉めた便器に座った。


「いい子ねサタンちゃま。さて、貴女が本物の悪魔か身体チェックさせてもらうわよ。ぐふふ……」

「にゃっ……」


 ニヤケた顔で両手をワキワキさせて俺に迫る聖女さま。普段清楚なイメージの彼女とは真逆の痴女に見える……。


 もしかして今の姿こそが彼女の本性か? とりあえず服を脱がされそうだ。


「にゃあぁぁーーっ!」


 結局身包み剥がされ全身をくまなくチェックされた。


 無事ナニもなく終了して着替えた俺は、聖女さまに検査結果を言われた。


「検査結果を報告しますね。まず性別は完全に女の子でした。で、頭の上に小さな角が左右に生えて、背中にコウモリに似た小さな赤い翼が生えてました。


 それと、腰に赤く伸びた尖端が矢状の尻尾が生えてました」

「しっ尻尾!」

「そうね。で、貴女が着ていた黒い高貴なドレスは正にサタンに相応しい服装ね。よって貴女はサタンと断定いたしました」

「んにゃ乱暴な見解……アタチをどうするつもりにゃっ!?」

「あらっ元気なこと……そりゃくそむかつく勇者より先にお前の力を使って魔王を倒すのよ」

「嫌にゃっ!」


 勇者の対抗意識のために死んでたまるかっ!俺は聖女のスキを見て逃げ出そうと、ドアノブに手を伸ばした。


 しかし、背が低いので手が届かない。


「あら残念」

「にゃっ!」


 背後から聖女さまに肩を掴まれた。


「逃げられたら面倒だから、今の内にやっとくか……」

「なっ、なにがにゃっ!?」


 聖女さまが持ち歩いていたバックから赤い首輪を取り出した。


 それはまるで犬の首輪だった。


「なっなんにゃソレはっ?」


 俺は震えてブレる手で指差した。


「これ〜? コレはねぇ、絶対服従の首輪と言って、首にかまされたら最後。強制的にご主人様に歯向かえなくなる首輪よ」

「にゃんと……」


 もし本当なら恐ろしい首輪。


 俺は聖女さまの奴隷にされたら敵わなんと個室の中をチョコまか逃げ回った。


「駄目よ逃げちゃふふ……」

「にゃあっ!」


 壁に追いやられ捕まった。そして半笑いの聖女様が首輪を持って俺に迫った。この聖女普通じゃない。サイコパスか?


「やめ、やめにゃっ!せ、聖女さまがそんにゃ悪いことしたにゃ駄目にゃっ……」

「あ〜ら、あたくしは悪魔にはナニしてもいいと思ってるわよ」


『ナニって何よ?』俺は心のツッコミを入れた。


 だからって『コイツには良心の呵責がないのか!』サディストな笑みを浮かべた聖女さまが、涙目の俺の小さな首に首輪を押しつけてきた。


 アンタこそ悪魔だなっ!


「やめてっ!やめるにゃっ!」

「あ〜ら残念。はまってしまったわよ首輪」


 カチンッ!


「にっにゃああぁぁっ!」


 バタッ!


 あまりのショックに背中からひっくり返ってしまった。

 終わった。


 聖女さまの話が本当なら、俺はサタンちゃまとして聖女さまに一生コキ使われる。


「さっ外に出て早速魔物狩って経験稼ぎよ」


 女神さまがトイレのドアを開けた。


「嫌にゃっ!」


 段々と聖女さまの性格が分かってきた。経験値稼ぎのため無茶なノルマを課せられる予感。


 だから拒否した。


「あらっ……下僕の癖してこのあたくしに逆らう気かしらサタンちゃま……お座り」

「にゃあっ!」


 命令に逆らえず身体が勝手に土下座した。よりに寄ってトイレで土下座を強要するとは、この聖女さまは暴君だな。


 とは言え、なんとか頭だけあげて聖女さまの顔を見た。すると薄ら笑いを浮かべていた。


「にゃっ!」

「コレで逃げられないわよ。うふふ……」


 純金の打撃武器モーニングスターを振り回し俺を脅した。しかしまぁ金にモノを言わせたようなシロモノだ。


 どちらせよ。やっぱりロクな聖女じゃないな。


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