サタンちゃまと新たな高レア悪魔
毎度のごとくサガネさんを駐車場に残し、俺と聖女さまとメリーと谷川シェフと、新たに加わった太陽天使騎士のエイトさんの五人でクエストに挑戦する。
警備兵から入場チェックを受けてから竜の口渓谷に入る。警告の横幅は5メートル前後で意外と狭く周囲は鬱蒼とした木々と切り立った崖に挟まれている。
今回の標的のミストサラマンダーは遥か先の鉄橋の下に生息しているそうだ。
そこにたどり着くまで足場の悪い沢を避けながら大自然の道を歩いていくしかない。
「ちょっとちびっ子!」
「にゃあ〜?」
景色に見惚れていたら背後からメリーに頭を小突かれた。俺は頭を両手で押さえ涙目で見詰め抗議した。
「ボーっとしてるからよっ!」
「にゃっ!?」
謝るどころかさらに追い討ち。理不尽極まりないとはこのことだった。
「魔物が出る前にガチャ回しなさいよ」
「にゃあ……ちょっと待つにゃ」
メリーに急かされた俺は渋々ステータスチェックした。
【 職業サタンちゃまレベル10 魔力105 攻撃力27 力22 体力25 素早さ21 幸運90 特殊スキル 悪魔ガチャレベル8 】
ガチャ一回につき魔力が20消費するから5回回せるな。だから出し惜しみなく全て回そう。
その前にカプセル自販機を召喚する必要があるから皆を離れさせた。
なにせ軽自動車サイズの自販機が空中から落ちて来るから危ない。下手したら下敷きになって死ぬ。
特にビビりのメリーがうるさいから召喚する前に注意した。
「じゃっ出すにゃっ」
この瞬間が俺唯一の見せ場の一つ。
空中から出現した自販機が落下した。
ズドンッパシャッ!!
「ギャッ…………」
丁度沢に落下して水しぶきがメリーに炸裂した。顔から水を被ってびしょ濡れの彼女が前屈みで、呆然と突っ立っていた。
「ちょっと!ちびっ子……」
「にゃっ……」
なにか言いたげのようだが不可抗力のトラブル。だから俺は知らない振りして無視した。
メリーが固まっている内にガチャを回してしまおう。
まずは一回目。
ポコンッ
銅カプセルで中身はレッドデビル剣型か。当初は喜んでいたが、ハズれの常連になりつつあるので無感情で次に期待した。
二回目もレッドデビル。
三回目はユニコーンラビット。これも低レアだしすでに持っているのでハズれだ。
次四回目。
ポンッ!
「にゃっ!」
また銅カプセルが出たので思わず声が出る。そして最後の一回となり、メリーの刺さるような期待が背中からヒシヒシと感じた。
「ちょっとちびっ子!あたしをびしょ濡れにした分。最後の一回当たりを引き当てないと許さないからねっ!」
「にゃっ……んにゃ無茶な……」
メリーに脅された俺は震える手でハンドルを回した。
ガチャガチャガチャッポンッ!
「にゃっ!」
最後の最後になんと!初の星5のプラチナカプセルを引き当てた!
だから嬉しくて思わず声が出た。
そろそろ高レア悪魔を引き当てておきたかっただけに、当てた喜びもひとしおだ。
さて、肝心の中身はなにかな?
カプセルが震えてパカッと開くと何かが飛び出した。シルエットは人型だ。しかも小柄で細い身体つきからして女性型と確信した。
光りが薄れその姿が明らかになった。
黒光りする西洋甲冑をまとい黒生地のロングスカートを履き、黒髪ロングヘアに額当てを着けて、白い肌に切れ長の目で17歳位のお姉さん系。
かなりの美人系だ。
しかし背中には真っ黒なコウモリのような翼を生やしていた。なんとなく闇落ちした天使のイメージだ。
とりあえずステータスチェックだ。
ピッ
【 悪魔騎士クレナレベル1 特殊スキル暗闇武器レベル1、バイアタック魔法レベル1】
「にゃっ!」
特殊スキルが二つもある。しかも暗闇武器って天使騎士の聖なる武器に匹敵するんじゃないか?
ちょっと気になったんでエイトさんをチラ見すると怯えていた。
やっぱ天敵なのかな?
で、クレナと目が合った。
すると彼女は俺を前にしてひざまづいた。
「我が名は悪魔騎士クレナでございます。お久しゅうございます我が主君ことサタン様。三百年前の戦に敗れ地獄から馳せ参じました」
「にゃっ……そ、そうにゃか……済まぬな……アタチは過去の記憶を失っていてこんにゃ反応しか出来にゃくて……」
「きっ記憶をっ!」
俺の言葉を聞いたクレナがハッとして立ちあがり、うしろを振り返るとエイトさんを睨んだ。
そして腰に帯刀していた剣を鞘から引き抜き抜いた。刀身が漆黒のカッコいい剣で、その切っ先をエイトさんに向けた。
「天使騎士よ。サタン様になにをした?」
「……エ、エイトはな、なにもしてない……あの戦に参加もしてなかったから無関係なのだ……」
「なにを言うかっ!同じ天使騎士なら無関係とは言わせないぞっ!」
「……喧嘩は困るのだ……」
争いごとを避けたいエイトさんに知ってか知らずか剣を向けるクレナ。
悪魔と天使は相容れない敵対関係だ。しかし仲良くして欲しいのが正直な気持ちだ。
さて、俺が記憶喪失だと言ったせいで二人の決闘が始まろうとしていた。




