サタンちゃまと仲裁する者
副将プグナを倒したエイトさんを見た俺は、
「天ちちゃまぁ〜〜」
なにを血迷ったのか両手を広げて側に駆け寄っていた。
ガインッ!
「にゃっ!?」
突然エイトさんが俺に向かって斧を振りおろした。間一髪背中からひっくり返って避けた。
しかしどうして驚くと後ろに転がるんだ……不本意な猫口調といい忌むべき仕様だ。
しかし状況は無茶苦茶ヤバい。
エイトさんが俺に攻撃したのは当然で、悪魔と天使は敵同士だからな。
とはいえこの状況をなんとかしたい。
「にゃっ……よ、よすんにゃエイト……」
「……三百年前なにをしたか分かっていて命乞いをしているのかな悪魔王サタン?」
エイトさんが斧を振りあげた。
「にゃっ!」
「天に使えし天使騎士の名においてお前を成敗するのだっ!」
まるで話しが通用しない。マジで斧で頭カチ割られ殺される。だからか翌日に載った俺の殺害記事が頭に浮かんだ。『……』たこ焼き屋に殺されるなんてカッコ悪いな……。
だから俺は生きるっ!
「やめるにゃっ!」
「くどいっ!またここ物質界を侵略する気なのだろ?」
「にゃっ……」
物質界……なにを言っている……それは俺たちが生きている世界のことだよなぁ……。
ガインッ!
「にゃあー!」
足元スレスレに斧が打ちおろされ、間一髪避けてすってんころりんした。
もうワザとじゃねーぞ。このクソ仕様が……。
「待ちなさいエイト」
そう観念した瞬間誰かが俺をかばった。
俺が顔をあげるとそこにメイドのサガネさんの背中が見えた。
しかしなんで聖女さまでなく、サガネさんが俺をかばったんだ?
「……そうか……ここに居たんだ……セ、」
「これ以上言ったら殺す……」
「ひっ!」
サガネさんの刺すような目で睨まれたエイトさんが縮みあがり硬直した。
確かにサガネさんは近寄り難いし怖いイメージだ。しかしだからと言って、エイトさんがここまで恐れるのはなんでだろう?
頭にクエスチョンマークが浮かんだ俺は首をかしげた。
「ハイハイそこまでっ!」
手を叩きようやく聖女さまが割って入った。飼い犬のピンチに今までなにしてたんだよぉと彼女を見ると、右手に焼き鳥、左手には缶ビールを握っていた。
『……』流石腹黒聖女。飼い犬の危機そっちのけでバーベキューを堪能してたのね。
「……神に仕えし聖女ともあろう者が、寄りによって悪魔王をかばうのかな?」
表情を変えず斧を握り絞め。殺意だけは隠さないエイトさんは聖女さまに問い正した。
すると彼女は目を瞑りながら首を横に振った。
「お座り」
「にゃんっ!」
聖女さまに命令された俺は強制正座させられた。
「見ての通りこの犬は、あたくしがしっかり首輪をつけて躾けていますから殺す必要はないのでは?」
「……絶対服従の首輪……どうして魔人具を聖女が……まさかあの魔界行商人から闇の取り引きを?」
エイトさんはなんだか意味不明なことを聖女さまに聞いた。
「魔界行商人なんのこと?」
困ったように笑う聖女さまが肩をすくめた。
「……とぼけると聖女さまでもお仕置きなのだ」
無表情のエイトさんが斧を振りあげた。意外とこの天使聞く耳持たないな……。
と、思ったらエイトさんは斧をさげた。
「その真剣な瞳に嘘はないようなのだな……」
「分かって貰えて光栄でございます天使様。この首輪はあたくしの故郷ブルースフィアのとある街の商人から金貨五十枚で手に入れた物ですわ」
「……ブルースフィア……巨ジンの故郷隣に立つ地球のことなのか?」
意味深に一人で専門用語を呟くエイトさん。とにかく彼女は色々と情報を知ってそうだな。
「もう争いはお開きにしない?」
聖女さまがやんわりとエイトさんに和平を申請した。
「……せ、聖女さまが悪魔王の手綱をしっかり握っているなら任せるのだ……」
両腕をさげたエイトさんが斧を消した。
『……』しっかし、消されたり出されたりと斧も大変だ。
「ところで今貴女が言った巨ジンとはもしや魔王のことでは?」
聖女さまが聞いた。確かに俺も気になる。
するとエイトさんは身を震わせた。
「確かに巨ジンと魔王は魂が繋がっている。だけどお互い居場所は遥か遠く離れているのだ。しかし……巨ジンは魔王より恐ろしい……君たちには分からないだろうが……全ソウルワールドの危機に直面しているのだ……」
またエイトさんは専門用語を言って本気でその巨ジンに怯えていた。
「エイト、いえ、エイトさん。それ以上の真実は、聖女様の課せられた日本クエスト終了まで黙っていただきたい」
「!」
サガネさんに言われ『ハッ!』するエイトさん。この二人知り合いか?
まぁ、俺の新たな認識ではメイドのサガネさんはダダ者じゃなく警戒すべき人物ってことだ。
「わ、分かったのだ……しばらく悪魔王には手は出さない……」
反省したエイトさんがそう言ってたこ焼き屋台に戻って帰ろうとすると、
「お待ちなさい」
「!?」
聖女さまが呼び止めた。
「な、なんですか……お、お金なら無いのだ……」
「…………」
悪事を疑われ絶句する聖女さま。まさかカツアゲされると思ったのか?
『いや、まてよ……』金に汚い腹黒聖女さまならあり得る話だから笑えない。
「違います」
キッパリ否定する聖女さま。流石迷いのない返答だ。
「それで提案です。良かったら貴女。あたくしの仲間になりませんか?」
「……もし、嫌と言ったら?」
まだ聖女さまを疑ってるのかエイトさん。
確かにそうだ。まるで聖女さまの犬にされたばかりの過去の俺を見ているようだ。
すると聖女さまが微笑んだ。
「うふふ……拒否したら貴女が天使だと世間にバラすわ」
「聖女っ…………脅し良くない」
メッチャ発言溜めたけど、動揺してないかエイトさん?
「うふふ、どうする天使………………………さま?」
『さまを引き離すなっ!』これじゃほとんど呼び捨てだろっ!
「……分かったのだ。遅かれ早かれエイトは君たちを守る。そして魔王軍との戦いにおいて勝利に導く役目があるのだ」
「あら嬉しい。天使様がサポートしてくれるなんて心強いですわ」
「……」
調子のいい聖女さまが手の平を合わせて微笑んだ。
こうして半ば脅される形で天使騎士エイトさんが仲間に加わった。




