サタンちゃまと異世界転移25 まさかの助っ人
試合が終わった束の間、何故か観客席が騒がしい。不審に思った俺が客たちの様子を見ると、皆空を指差していた。
「にゃんだUFOにゃっ……」
『否っ! UFOではござらんぞちびっ子よ』
「にゃっ!」
真上から話し掛けられビックリして空を見あげると、全長約18メートルの和兜を被った黒鉄色のドラゴンが翼を羽ばたきホバリングしていた。
「にゃんとっ!!』
二度ビックリしてヒックリ返った。『う〜む』今日は雲一つない晴天だな。
『……なにをしじみと空を見ておる』
「にゃっ、シジミにゃにゃい。しみじみとにゃっドラゴン」
俺はヒョイと立ちあがってドラゴンにツッコミを入れた。
『ふふ、間に受けるでない。今のは某の冗談だ』
「にゃんと……」
ずいぶんユーモアセンスに溢れたドラゴンだ。しかし口調が侍風で腰に馬鹿でかい日本刀を帯刀して、上半身に和風鎧を身に着け左眼を眼帯で隠している。まさかコイツは……。
するとドラゴンが翼を羽ばたきながら、ゆっくりと降下して行き着地した。
『拙者は七竜に属す鋼鉄竜ギガントメイル。訳あって勇者アルベート殿に手を貸す仲間なり』
「やはり鋼鉄竜にゃ」
これまで出会った七竜と比べ、言葉を喋って意思疎通出来る知的レベルが高いドラゴンだ。
「会話が出来るにゃら話しが早いにゃっ、すまんにゃアルベートに言ってつい最近拐った女神さまを返してくれにゃいか?」
上手くいけば決勝で勇者と戦わずに済む。
『……それは出来ぬ。ここだけの話だが、ここ最近のアルベート殿は生き生きしておる。それは何故か? そう、お主と闘える絶好の機会に心躍らせておる故誠にすまぬが……どうか彼と手合わせしてくれぬかサタンちゃま殿よ』
「にゃっ!」
鋼鉄竜が律儀に正座して俺に頭をさげた。こんなことされると断り辛いな……。
「余計なことするなサタン」
隅っこで腕組みしていたフードの女がスタスタと俺の側に寄って文句言った。正体を隠すこの女はなにやらアルベートと因縁があるらしい。だからなんとしても決勝で決着をつけたいらしい。
「にゃむ〜〜相手は最強の猛者揃いの勇者チームにゃ、戦ったら大変にゃことににゃるにゃ」
「フンッ! むしろ好都合。こちとら復讐の機会をうかがい三百間鍛錬を積み重ねてきたんだ。ああ、それをお前は台無しにする気かい?」
「しゃっしゃんびゃく年っ……アタチと同じにゃにゃいか……」
フードの女の気迫に俺はたじろぎ同時に境遇が同じと知って共感した。
『ミーも同じだ』
三百前アルベートに破壊されたアルマーが同意見を述べ、ツインアイを真っ赤に輝かせた。
『う〜む』俺とアルマーとフードの女はアルベートが共通ってことだな……。
「……分かったにゃ、帰ったらにゃアルベートに首を洗って待っとけにゃと伝えとけにゃ」
俺はそう戦線布告してから、鋼鉄竜に向かって指を差した。すると奴は何故か笑顔になった。
『良い驚きでござる』
「にゃっ……」
古風な侍口調なのにちょくちょく英語混じりだな。
『良き良き。お主の果し状、帰ったらアルベートに伝えておくとしよう。では……さようなら」
「にゃっ」
鋼鉄竜は翼を羽ばたき上昇しどこかに飛んで行ってしまった。て言うか次の試合鋼鉄竜の出番だぞ。
「ちょっとちびっ子」
今度はメリーが話し掛けてきた。次から次へと話し掛けられる俺はひょっとして人気者か?
『う〜む……モテ期の到来だな』
「ちょっと聞いてるちびっ子!」
「にゃんにゃメリートイレかにゃ?」
「ウンコじゃないわよっそれより」
「にゃっ……」
乙女がウコ言うんじゃない。ちょっとビックリしたよ。
「で、にゃんにゃ?」
「怪我したザレオンさん大丈夫かしら……」
「……みゃあ命には別状にゃいみたいにゃ全治二週間ってとこかにゃ」
「ちょっと! だったら二日後の決勝選に彼女出れないじゃないのっ」
「……そうだにゃ」
「呆れた。なに呑気に答えているのよ。一人でも欠けたら決勝に出れないの。今から代理冒険者探さなきゃ」
なるほど、メリーの心配ごとはそう言うことか……。
「探さにゃくても、レベル1の長谷川がいるにゃろ?」
「駄目よあんな情けない男。戦力外だわ」
『可哀想な長谷川』あーあ、メリーに言われちゃっているよ。
とはいえ早く代理メンバーを探さないと失格になるな……。
「クク……私がその代理メンバーになっても良いのだぞ」
「にゃっ!」
背後から話し掛けてきたのがなんと魔界行商人。
身長2メートル以上でスーツの上に黒のコートを着て、ロングシルクハットを被ったワカメ風黒の長髪の男。
コイツは魔道具を1メートルの鋼鉄の行商鞄に詰めて魂を引き換えに人間と取引きする魔人で無茶苦茶悪い奴だが、何故か俺たち冒険者チームの一員に入っていた。そう入っていたんだ。それがいつの間にか姿を消していたところにヒョッコリ現れた。
しかも呑気に腰をおろしてコーヒーを淹れてやがる。しかし消えたと思ったらしれっと姿を現すし、自由過ぎる男だ……。
「おみゃえ今までどこに行ってたんにゃ……」
「ハハッ! この私をお前呼ばわりとは流石悪魔王サタンと言ったところかオーケー、とりあえず淹れたてのホットコーヒー飲むか?」
魔界行商はニッと白い歯を見せ、波並みにコーヒーが注がれたティーカップを俺に差し出した。いや、火傷させる気か……。
「ちょっとアンタ呑気にコーヒー淹れてる場合じゃないでしょっ! パーティー無断で抜けて今までどこに行っていたのよっ!」
「……」
メリーに文句を言われた魔界行商人がスッと立ちあがった。
「なっ、な、なによ……」
彼を見あげビビるメリー。なにせ奴はデカいし形相だからな。
「クク……オーケー黙れ小娘」
「な、なによ……」
「クク、コレを見ろ」
魔界行商人は懐からギルドカードを取り出して見せた。
「冒険者カードって、アンタいつの間に!?」
「クク、相変わらず騒がし小娘だ。そうだよ。こんなこともあろうかと、ついさっきギルド本部に行って冒険者登録済ませてきた。だから分かるな?」
カードを懐に仕舞うと魔界行商人が鋭い目で俺を見つめた。
「まさかおみゃえ……」
「クク……この私が代理でチームに入ってやると言っているのだよ」
魔界行商人がニイッと白い歯を見せ、包帯で巻かれた右手を掲げた。どうでもいいけどその包帯手はモロ厨二病だな……。
ここはツッコミを入れないと気が済まないんで俺は奴の手を指差した。
「クッソ厨二にゃ」
「…………オーケー黙れポンコツ悪魔王……」
「にゃっ!」
魔界行商人が真顔でキレた。
他人を馬鹿にするのはいいが、自分が馬鹿にされるのは許さないタイプだな。
とりあえず魔界行商人が代理メンバーに加わることになった。まー奴はふざけているが底知れぬ強さで頼りになる。
ピンチはチャンスと言うが、奴がザレオンさんの代わりに入ったことでよりチームが強化された。




