サタンちゃまと異世界転移24 アウェーなステージ
「ちょっと待ちなさい」
「にゃっ……」
女同士の合戦が始まったと思った矢先、リーザが右手をあげると俺たちの足を止めた。
「にゃんにゃリーザ?」
「今回の闘技場はアタシたちに合わせた特別仕様なの……」
目を瞑ったリーザがそう言うとパチンと指を鳴らした。すると彼女たちが立つ場がせりあがり一瞬でステージ土台が完成した。
スポットライトにスピーカーが備わりそれはまるでアイドルステージだ。
「フフンッ驚いたか? 実はね、アタシの祖父はこの闘技場のオーナーで有利になるように頼んだら、この素敵なステージを特別に用意してくれたのよ」
まさかリーザが闘技場オーナーの孫だったとはな。通りで育ちが良そうだった。
しかし素敵って言ったが自画自賛。俺たちから見たらアイドルチームが有利な卑怯なステージだよ。しかもオマケに客席とアイドルファンまでせりあがって現れた。厄介ファン要らん。
「にゃむ〜〜……」
ちょっと厄介だな。困った俺は腕組みした。何故なら今回の戦いの舞台は、ステージと客席が入ったコンサート会場仕様の対戦相手レインボーガールズに合わせた闘技場だった。しかも客席には彼女たちのファンが招待されて2000ほどの席を埋め尽くしていた。
そんなファンたちからすれば俺たちは敵だ。だから一斉に振り向くと敵意の目で睨んできた。
「おいおいコイツはとんだアウェーじゃないか?」
異様で場違いな雰囲気に圧倒されたヒューイがお手あげ状態で肩をすくめた。
「ちょっと戦い難いステージね……」
「そもそもアイドルチームに有利な戦場だな」
戸惑うメリーに犬飼が冷静に答えた。
「それってアイドルチームの希望通りのステージが作られたってこと?」
「まぁそうだろ」
「ズルいっ! なんで運営は敵チームにだけ有利なステージにするのよっ!?」
「う〜ん知らんけど運営は、予想外に勝ち続ける俺らのこと良く思ってね〜んじゃねえの? 知らんけど……」
「……結局どっちよ」
曖昧な犬飼の意見にメリーは納得せず呟いた。まぁ彼女は相当イライラしてんな。
「確かにやり難いにゃ、にゃが要にゃ勝てばいいのにゃ」
俺が言ってやった。扇子があれば優雅にあおいでいたよ。
「簡単に言うけど見なさいよあたしたちを睨む厄介なファンたちの視線」
メリーが客席を指差した。全員男でいかにもな風貌のアイドルオタクたちが敵意を向けてくる。
ちょっとでも彼女たちに傷をつけたらブーイングの嵐は容易に予測出来る。
「皆んなー〜ーっ良く集まってくれたわねー! 今日は精一杯歌うから最後まで聴いてよねーっ!」
赤が専用カラーのリーダーのリーザがマイクを持って手を振った。我がチーム唯一現地人のミルトが言うには、魔力が動力源の魔法のマイクだそうだ。
「『うおぉぉーー〜ーーっ!!』」
立ちあがったファンたちが一斉に叫んで反応した。しかし興味のない者からしたら正に騒音だ。俺はたまらず両手で耳を塞いだ。
「……あらっ、誰かと思ったら、サタンなんとかチーム一向じゃないの? 生憎アナタたちの席はないから退場しなさいよ」
「『そうだ。そうだぁぁーーっ!』」
『にゃっ!』リーザの挑発に厄介ファンたちが呼応するように叫んだ。対戦チームとしてはとてもやり難い構図。でもこれで分かった。彼女たちが準決勝まで勝ち進んだ秘密がね。
「戦う前にこのステージの特別ルールを教えてあげるわ」
「にゃんにゃ特別ルールにゃんて?」
「ふふっ出たわね。背の低い可哀想なちびっ子が……」
「……仕方にゃ〜だろっ? アタチは万年幼稚園体型にゃんだから……」
性格の悪いセンターが痛いとこ突いてくる。しかし身体的特長をからかうのはよろしくないな。
「あ〜可哀想っ」
「……まだ引っ張るかリーザ……」
「あらっ、お気に召しませんでしたか?」
「『そうだそうだっ! リーザの言うことが気に食わないのかーーっ!!』」
しかしリーザのあおりにファンが同調するのがウザいな……。
「さて、特別ルールについてですが……今回特別にアタシたちのコンサートに招待したお客様に一人でも傷をつけたらそのチームは失格となります」
「にゃっ、にゃんにゃあ……おみゃえらに有利なルールで卑怯にゃ」
「あらご不満な様子で……」
口に手を当てたリーザがほくそ笑むとファンたちが加勢し騒ぎ出し、俺たちに向けて物を一斉に投げてきた。
「ちょっとヤバいわよっ!」
物はモノでも短剣とか斧とか凶器が飛んできたので慌てふためくメリー。
「慌てんにゃメリー。たかが凶器が飛んできただけにゃ」
「ざけんじゃないわよちびっ子!」
「にゃっ……」
「クソ頑丈なアンタは平気なんでしょうけどあたしらは頭に当たったら致命傷なのっ!」
もっとなことを反論するメリーが背後に回って俺の背中を盾代わりにした。
「おみゃえにゃ〜……」
「きゃあっ痛っ!!」
「にゃにっ?」
飛んできたレンガに頭をぶつけたザレオンが悲鳴をあげた。彼女は額から流れる血を押さえヒザを突いた。
「大丈夫かザレオンッ!!」
すかさずヒューイが駆けつけ彼女の身を支えた。流石リーダー動きが早い。
「た、隊長…………だ、大丈夫です……」
「……こんなに血を流して顔が真っ青だぞザレオンッ一旦退場しろっ!」
「ま、まだいけます。ポ、ポーションを使えば」
「ならんっ! そんな応急処置するより一旦身を退いて治療に専念しろ」
「しかし隊長っ!」
「大丈夫だっあとは我々に任せろ」
「……分かりました隊長……」
ヒューイの説得に応じたザレオンは救護班に連れられた退場した。まぁ口には出さないが、彼女が抜けたところで戦況が不利になることはない。
あの厄介なファンを上手くかわしてステージまで到達出来れば、俺一人で充分だな。
「さてあのお嬢さん方、俺たちがファンに一つでも危害を加えたらチーム全体失格だとよ。どうするサタンちゃま?」
ピンチなのにウイスキー飲みながらヤケに楽しそうな犬飼が聞いてきた。
「……要はファン共かわしてステージにあがって一気にレインボーガールズを倒すんにゃ」
「侵入を易々許すファンじゃね〜だろ?」
「にゃからアタチとアルマーがやるにゃ……」
『ミーとか? 寝耳に水だぞ友よ』
ロボットの癖に古風な四文字熟語を使いこなすアルマーが困惑し、ツインアイを点滅させた。
「にゃっ、まずにゃおみゃえの背中に乗った俺がファンのスキを突いてステージに降り立ち。部下を召喚し、得意の頭突きで一気に片付けるにゃ」
『なるほどいい考えだ。では早速作戦開始だ』
ガッキンッ!
アルマーが戦闘機形態に変形した。それで俺は彼の上に飛び乗った。
今回女子に出番を作ってやろうと思ったけど、どうもそんな余裕が無くなった。だから活躍するのはいつもの俺だ。
「妾も乗せろ」
リオンが珍しくヤル気だ。
「にゃんにゃおみゃえ張り切ってんにゃ?」
「……あんなチャラチャラしたアイドルチームなど、この妾のシールドロッドで一撃で吹き飛ばしてくれる……」
「ロッドを向けるにゃ危にゃいにゃっ!! しかしいい考えにゃ……良しノった。特別にアタチのうしろに乗るがいいにゃっ」
「なにを偉そうにちびっ子が……」
リオンは不満そうにブツブツ言いながらアルマーの背中に乗り、俺の肩を掴んだ。座席もシートベルトがないから仕方ないが、背後から首を絞められそうで怖いな……。
『さて、乗ったなユーたち?』
「準備OKにゃ」
『では浮上して一気にステージに飛び降りるんだ』
「分かったにゃ」
作戦通り俺とリオンを乗せた飛行形態のアルマーが浮上し、ステージ上空を旋回した。
「ちょっとなによ……」
リーザたちが困惑しながら見あげていた。
『今がチャンスだっ!』
「分かったにゃっ、降りるにゃリオンッ!」
「仕方ない。貴様らに付き合うとしようぞ」
俺とリオンは3メートルの高さから飛び降りなんとか無事に着地してすかさずリオンがシールドロッドの先を、唖然と見ていたレインボーガールズたちに向けた。
「悪く思うな」
「『キャアッ!?』」
シールドロッドからエネルギーバリアが展開し、彼女たち全員一気に吹き飛ばした。そして全員気を失い俺たちの勝利を告げる鐘が鳴った。
あまりにも呆気ない突然の勝敗に客席のファンたちは皆口を開け絶句していた。
「にゃんにゃ呆気にゃかったにゃ」
「妾のおかげじゃのう〜サタンちゃま……」
そう言ってシールドロッドを床に突くように置いたリオンが俺に手を伸ばした。
「にゃんにゃリオンその手にゃ……?」
「ご褒美のたい焼きで良いぞ」
「にゃっ今は無理にゃっ」
「……なんじゃとサタンちゃまぁぁ……」
「にゃあっ!」
俺は、たい焼きの腹いせに首を絞めようと手を伸ばすリオンに追い駆け回された。
『やれやれ』とにかく俺たちは、楽に決勝進出を果たした。準決勝なのにとんだボーナスステージだったな。
とはいえ負傷したザレオンの容態が心配だ。




