サタンちゃまと日間賀島のタコとモスマン
「よっしゃっお前たち準備はいいか?」
ハンター装備の谷川シェフが皆に聞いた。
「ええ、よろしくてよ。今回のターゲットは戦艦岬付近に棲息するビックバードよ」
聖女さまの言う戦艦岬とは、島の中央に米国空母が何故か突き刺さっていることからそう名づけられた。まぁ正式には空母岬なんだけど、覚え易さから戦艦岬と呼ばれるようになった。
経緯は不明でサビだらけの放置された空母は三百年前の物だと伝説になっている。
これも悪魔王サタンとなにか関係があるのかも知れない。
「ええっ!ビックバードならいい肉取れそうねっ」
バーベキューに使うつもりか、メリーはビックバードと聞いて目を輝かせた。どうでもいいけど、口元のヨダレは拭け。
ちなみにビックバードとは全長2メートルから5メートルの大型鳥魔物。性格も獰猛で肉食。だけど肉は食料になって美味しい。
この前谷川シェフが作ってくれた親子丼に入っていたのがビックバードの肉だ。
レベルアップしたし本当美味しかった。
出発前に事前に俺はステータスチェックした。確か北海道でのクエストでレベルがあがっていたはずなんだ。
『ステータスオープンッ!』俺は両手をあげ叫んだ。
【 職業サタンちゃまレベル9 魔力95 攻撃力25 力20 体力22 素早さ19 幸運80 特殊スキル 悪魔ガチャレベル7 】
順調に成長している。
魔力が95で四回ガチャが引ける。だから俺は前もって引こうと思いガチャスキルを発動させた。
「ガチャスキル発動にゃっ!」
空から巨大なカプセル自販機が出現。
ズズズンッ!
「ギャアッ!!」
メリーの目の前スレスレに落ちて来たんで悲鳴をあげ転倒し、尻もちついた。
「にゃっ……」
『ちょっと危なかったな』一歩ズレていたら、今頃メリーはタコ煎餅のようにペッシャンコだ。
「ちょっと!」
すると起きあがったメリーが血相変えて向かって走って来た。
「ちょっとちびっ子! あたしを殺す気かっ!?」
「にゃっごめんにゃ」
「……謝って済んだら正義の勇者要らないのよ」
「にゃっ……」
どこかで聞いたことのある屁理屈だな……とはいえ、俺を指差すメリーの説教が続いた。
「ガチャスキル出すなら皆んなに伝えてからにしてよねっ!マジ踏み潰されるかと思ったわ……」
そう言って腕を組んだメリーは『フンッ!』とソッポ向いた。
本当に死ねばいいのに……まぁ冗談だけど。
それよりガチャを回そう。
「今からガチャ四回回すにゃっ」
「別にいいけどちびっ子!今度こそレア引き当てなさいよっ!」
「無茶言うにゃっ過度な期待されても困るのにゃん」
「いいから早く引きなさい。今日は忙しいんだから!」
なにを急いでるのかメリーさんが煽る。だから連続して四回ガチャを回すことにした。
ガチャガチャッポンッ!
この動作が四回続く。
出たカプセルの色が銅、銅、銅、銀といわゆるハズレだ。どうやら今日は運がないみたいだ。
で、内容は、レッドデビル剣型(ダブった!)、レッドデビル槍型、レッドデビル剣型(またお前かっ!) 、デビルフラワー(コイツは初だ。花に牙を生やした口がある食虫植物悪魔だ) の扱いに困る悪魔が出ても正直困るな。
「…………」
「ちょっとちびっ子っ!なぁ〜に連続ハズレ引いてんのよっ!」
「ごめんにゃちゃい……」
俺は上目遣いで人差し指同士くっ付けモジモジさせた。
あざといけど可愛らしい利点を最大限に使う。
「……かっ可愛いからって許さないんだからねっ!」
「…………」
頬を赤らめながら俺に指を差すメリーさん。以外とデレるのか、効いてる効いてる……。
とりあえず松尾とモスマンを呼び出した。
「おうっ!サタン様っおはようございますっ!」
「これはこれはサタン様。お呼び頂きまして誠にありがとうございます」
不作法だが豪快な松尾と見た目に反して紳士的なモスマンの対象的な二人が俺に挨拶した。
この二人は俺のお気に入りで中レアだけど意外に使える。
俺は二人の前でまな板胸を張った。
「うにゃっ頼りにしてるにゃお前たち」
『ははっ〜〜ありがたき幸せでございますサタン様ぁ〜』
二人がひざまづいて忠誠を誓った。
『う〜ん』いい気分だ。
日間賀島中央を目指してしばらく歩いていると、先頭の谷川シェフが足を止めた。
「おいっ!気をつけろ。魔物の気配がするぞ!」
「えっ!どこにっ!?」
剣を両手で構えたメリーが周囲をキョロキョロ見渡した。
「海からだっ!」
「なーんだ。海からならコッチまで来ないでしょう?」
気が抜けたのかメリーは剣をおろした。
「馬鹿野郎っ油断すんなっ!海岸から陸地にあがって来るぞ!」
「えっ!」
確かに遠くの浜から上陸して、コチラに向かってくる二匹の魔物の姿を確認した。
しかも見覚えのある形状だった。
それは軟体動物のタコ型魔物だ。全長3メートルのソイツが八本の足をクネらせながら向かって来た。
いやしかしなにも日間賀島名物に合わせる必要ないのに……。
「キモいっ!」
「なにっ!?」
タコを指差しメリーが言うとモスマンが反応した。
「アンタもだけどっ違うわよっ!」
「……」
否定するもしっかりけなすメリーにモスマンが絶句した。
『ジュルッ!』
「ギャアーーッ剣が効かないっ!」
近づいて来たタコに剣を振るうメリー。しかし、弾力のある軟体が切っ先を弾き斬ることが困難。
キモさも相まってすぐさま後退するメリー。
「デビルオクトパスか……コイツは厄介だ」
そう呟くと谷川シェフはアゴを摩った。彼必殺の鉄杭も貫通出来なさそう。
しかしデビルオクトパスって悪魔の親戚か?
「ちょっと弱点はあるの?」
「あるにはあるが……奴は熱に弱い」
「……残念だわ。あたしはファイヤー系攻撃魔法は使えないの」
使えないのは攻撃系魔法全般だろ?
元勇者の冒険者だから期待したけど、残念なのはメリーの方だよ。
とはいえ熱と言えばピンと来た。俺はモスマンの元に駆け寄った。
「モスマンッあのタコを目玉ビームで焼き殺せるかにゃっ?」
「へいっ!お安い御用ですぜサタン様」
モスマンが返事すると嬉しそうに目を細めた。
「おめえらっ危ねぇから引いてなっ!」
「なっ!なによ目玉オバケ偉そうに」
そうは言ってみても、自分まで焼き殺されたらたまらないからメリーは身を引いた。
「フンッじゃあいくぞ」
鼻で笑うとモスマンの大きな黒目が赤く光った。
「喰らえっ必殺の目玉ビィィィーー〜ーームッ!」
ギュイイイイーーーーン、ズドンッ!
正に二つの目玉から高温の真っ赤な光線が発射され、デビルオクトパスを二匹まとめて焼き殺した。
「なっ…………マジヤバ…………」
驚愕するメリーの開いた口が塞がらない。
ピコン!
「にゃっ!」
モスマンのおかげで俺のレベルがあがった。自分は戦ってないのに自動的にあがるなんてありがたい。
さて、早速ステータスチェックした。
【 職業サタンちゃまレベル10 魔力105 攻撃力27 力22 体力25 素早さ21 幸運90 特殊スキル 悪魔ガチャレベル8 】
と、活躍する部下のおかげで順調に俺は成長している。しかし、幸運をどれだけあげればスーパーレアな悪魔を引けるのかな?
とはいえ、レベルをあげればあげるほどガチャを引く回数が増えるから、ワクワクが止まらない。
「ちょっと!一人だけレベルアップしてズルいわよちびっ子!」
「にゃっメリー!」
背後から頭を小突かれた。出番を奪われ腰に手を当てた彼女がご立腹だ。
まぁ気持ちは分かる。
まさかモスマンが一度の攻撃でタコ二匹を倒すとは思わなかった。だから今回は勘弁な。
「しかし、すげ〜威力だな」
「お、おおう」
谷川シェフが気軽な態度でモスマンに話し掛け肩をヒジで小突いた。
ちょっと彼のフランクな接し方にモスマンも戸惑っているじゃないか。
谷川シェフがしゃがむと、デビルオクトパスの足を持ちあげて調べた。
「コイツはタコと同じで美味えぞ」
「ちょっと冗談良してよっ!」
頭を抱えたメリーが発狂した。どうでもいいが、アンタほぼ毎日たこ焼き食べてたろ?
「とにかくコイツは回収するから頼むぜ」
そう言って谷川シェフがモスマンに目を向けニヤリと笑った。
しかし困惑したモスマンが助けを求めるように、俺の顔を見て目で訴えた。ああ、召喚悪魔は主人の命令しか聞かないからな。
「モスマン」
「ハッ!サタン様っ如何なさいますか?」
モスマンが起立した。なんと主人に従順な悪魔だ。
「お前の特殊スキル。無限腹でデビルオクトパス二体回収してくれにゃ」
「ハッ!了解しましたっ!では早速」
モスマンが敬礼するとしゃがみ込みデビルオクトパスを咥え、スルスルと蛇みたいに呑み込み始めた。
一体どうなってんだモスマンの喉は……くれぐれも良い子はマネしちゃ駄目だな。
「ゔぼあああぁぁぁっーー」
呑み込み中気合いを入れるモスマン。決してもがき苦しんでいる訳ではない。
「いっ嫌ぁあぁあぁぁっーー〜ーー……」
一方見ていたメリーが絶叫していた。
嫌なら見なきゃいいのに……怖い物見たさかな?




