サタンちゃまと異世界転移17
「さて、やるか……」
「ちょっ、ちょっと待ってくれダンナ!」
今度は反撃とばかりに右腕の力こぶを盛りあげたドラコスに対し、これはヤバいと慌てたガウエルが止めに入った。
ドラコスは下手したら全員殺しかねないから制御役が必要だったな。と言うか……それならドラコスを召喚する必要がなかったな。
「……貴様、何故止める」
「ガウエルですよ。それよりまぁ〜一仕事したダンナはここで見ていてくださいよ。あとはオレらに任せてください。なぁザウエル?」
「あっ、ああ、そうだなガウエル……」
とっさに口裏合わせるブラックウインズの二人。
「良かろう。言葉通り俺は見ているから七将軍の名に恥じぬ戦いを見せよ」
「『はは……頑張ります』」
引き攣った笑顔で返事する二人。
身分は七将軍より下のはずのドラコスの方が偉そうだ。とはいえブラックウインズが俺の部下になったのはつい最近でドラコスの方が1000年以上の先輩だ。
とはいえ加入から100年は経過しているらしい。ずいぶん曖昧なのは、300年の間俺は天界の牢獄に幽閉されていたから身内の出来事が知らんのだ。
「さ〜てザウエルやりますか?」
腰に付けた鞘からブラックソードを引き抜き、下唇を舐め腰を低く構えるガウエル。
「ああ、俺たちの使命は、サタン様のためにこの試合に勝つことだよなっ!」
ザウエルが腰に付けた鞘から同じくブラックソードを引き抜くと、クルクル回してから背筋を伸ばして切っ先を敵チームに向けた。
お気楽なガウエルと真面目なザウエルの対照的な異なるポージングだな。
それにしてもカッコいい二人を見た女性客の黄色い声援が沸いた。
「チッ…………なんなんだコイツらは……」
ポッポ出の二人の人気が気に入らない青髪のアロイドが噛み締めた白い歯を見せ、杖を握り締めた。
「おいアロイド」
銀髪の女顔の男がアロイドに声を掛けた。う〜む、綺麗な顔だけど声は野太い男だな。
しかし、自覚しているのか髪型が、ボブカットってのが確信犯的な……まぁ、性転換するか、来世に期待しろと俺は他人事のようにしみじみと思った。
「そうだ。今のお前は頭に血がのぼって冷静な判断が出来ないみたいだな」
今度は隣にいた黒髪ボブカットの女顔の男がアロイドを諌めた。
ところで髪型と顔が似ているから兄弟か?
「……分かったよザミオにクルカス任せるよ」
大人しく引きさがったアロイド。
で、銀髪がザミオで黒髪がクルカスか? ま、カマセキャラの名前なんてどうでもいいが……。
「任せてくれてありがとう。では僕たちの真の実力を観衆の方々に披露しようじゃないか」
演劇役者のように両手を広げるザミオ。それに対しうなづくクルカス。
「そうですね」
「ああっいきましょう」
目を合しうなづき息が合った二人は杖をブラックウインズに向けた。
「やれやれ、やっとかい。待ちくたびれて昼寝するところだったぜ」
手を半開きの口に当てるガウエル。
「チッ! 天使だか知らないけどっ魔法が使えない剣士なんか敵じゃないね」
「ほ〜う言ってくれるじゃねぇか銀髪。俺が魔法が使えないと決めつける?」
ガウエルが足場を飛び移りながら100メートル先のザミオに迫った。
「くっ、来るなぁああっスクリューウインドカッターレベル10っ!」
動揺したザミオの杖から横に向いた竜巻が発生してガウエルを襲った。
「フッ、切り刻む風か……やれるものならやってみな」
「なにを強がりをっ!」
「ハッ!」
ガウエルは避けずに竜巻の中に突っ込んで剣を十字に斬った。すると竜巻は消え去った。
「ば、馬鹿なっ!?」
「ハッ、聞き飽きたぜその言葉っ!」
俺も良く聞くカマセが負ける前に吐く台詞だ。
「がっ!」
接近したガウエルがすれ違いざまにザミオを斬って倒した。
「ザミオッ!!」
「おっと、人の心配している場合じゃね〜ぜ」
「くっ、貴様っあっ!」
容赦なく振り向きざまにクルカスも斬り捨てるガウエル。そして後ろをチラ見して剣を鞘に収め『安心しな、ガキは斬らねえ峰打ちだ……』とニヒルな台詞を吐いて会場を黄色い声援で沸かせた。
しかしまぁ、両刃の西洋剣での峰打ちは平たい部分で斬ると言うより、バチコン叩いたと表現する方が正しい。しかしそれを一瞬でやってのけるガウエルの剣の腕は相当だな。
「おっ、おのれっ……」
焦った様子のアロイドがガウエルに杖を向ける。しかし本気になれないのかガウエルは肩をすくめた。
「お前らが学校の中ではエリートかも知れねーが、本職の大人には敵わねーよ。残り8人怪我したくなかったら、降参しな」
「チッ! 誰が雑魚なんかに白旗あげるかよっ! いっ、言っておくが僕はあの二人と比べて特別に強いんだぞっ!」
「へ〜そう言ってますがどうしますサタン様?」
急に俺に振るなガウエル。
まぁいいか……その振りに乗ってやる。俺は足場をピョンピョン飛び移りながら敵の陣地まで接近した。
「おっ! な、なんだこの子供は?」
一際異質なスキンヘッドが俺に気づいて指差して言った。
「にゃにゃにゃっ♬ ねぇねぇ〜そこのスキンヘッドと青髪どっちが強いかにゃ?」
『子供あるある』親に例えば、道を通り過ぎたヤクザとチンピラどっちが強いか不毛な質問して困らせる。その場合答えは……。
「どっちでもいいでしょっ、失礼な子ねっ!」
スキンヘッドが答えを言った。にしてもオネエぽい喋り方だな。
「子供のくだらない質問に真面目に答えるなスイカぺぺ」
「にゃっ……」
スキンヘッド変な名前だ……。
「確かにそうね。本当〜失礼な子供ね〜……お前が男の子だったらお仕置きにペロペロしてるところだったわよ。ジュルッ……チュッ♡ 」
「にゃっ!」
投げキッスされて変なこと言われたから俺の背中がゾクッとしたよ。
さて、そろそろ飽きてきたから、俺が9人まとめてブッ飛ばしてやる。
「おみゃえらめんどくちゃいから、まとめて掛かって来いにゃ」
「『 なにっ!? 』」
俺がチョイチョイと手招きすると8人揃って口にして目を丸くした。
「にゃんにゃ怖いのかにゃ?」
「『…………誰がっ子供なんかにっ、ええいっ手加減は無しだっ!』」
全員がハモって杖を俺に向けた。
「にゃにゃにゃっ♬」
構わず俺は笑いながら敵の陣地に突撃し、誰彼構わず頭突きを顔面に喰らわせた。
「ぶがっ!?」
「ぎいやっ!」
「ぶっ!」
オレンジ、茶、紫、水色髪の美形を倒した。
「このっ!」
「にゃっ……」
金髪が特大火球魔法を放った。
「にゃんっ!」
だが俺は垂直ジャンプで火球をかわした。
「ば、馬鹿な……こんな子供が3メートルもジャンプした?」
「にゃにゃっ♫ 悪魔王をにゃめるにゃ!」
「がっ!」
そのまま頭を下にして落下し、金髪の後頭部にガチコンとヘッドバットを喰らわせた。
「うおっ……」
脳しんとう起こしたか、白目を剥いた金髪が倒れた。
「良くもやったわね〜、もう子供だからって許さないんだから」
妙にオネエ口調なスキンヘッドが俺の前に立ちはだかった。
『にゃっ……』捕まったら奴にペロペロされそうで恐怖した。
だからやられる前にヤレだ。
「退くにゃっ!」
「ひいぎっ!」
スキンヘッドの股間目掛けて頭突きをかましてやった。そこは男の急所だ。案の定スキンヘッドはまたを両手で押さえてうずくまった。
「にゃにゃっ、残り3人かにゃっ」
「クッ、調子に乗るなよ子供っガッ!!」
「にゃにゃにゃっ♬」
勝気な赤髪に返事するのも面倒なんで、腹に頭突きをかましてやった。
「オ……ゴ……ポ……ゴッ……ポゴォッ!」
奇声をあげた赤髪が腹を押さえて沈んだ。勝気な癖して打たれ弱い奴だ。
さて、残りは二人だな。




