サタンちゃまと異世界転移14
厄介者が去り。落ちついたところで俺たちは席に座り、酒と料理を注文した。
最初に言っておくが、ちびっ子の俺とリオンは真面目に葡萄ジュースだ。
「とりあえず初戦勝利を祝して乾杯だ」
「『カンパーーイ!』」
幹事を務めるヒューイがジョッキをあげて、皆乾杯した。実に平和な時間だ。
「皆んな飲みながら聞いてくれ」
食事のついでに対勇者チームを想定した作戦会議が始まった。
司会進行はヒューイなんだが、チーム名がサタンちゃまなのでリーダーは俺のハズだが、テーブルの隅っこで大人しくジュース飲んで蚊帳の外だ。
まぁ、俺が発言しても混乱させるだけだから、今回は黙っておくよ。
「Bブロックのアルベートチームは当然準々決勝進出したみたいだ」
予想通り勝ち進んだアルベートは因縁のピンク髪勇者だ。アイツ一人でとにかく強い。だから決勝戦で当たるのは当然と想定している。
「アルベートチームのメンツが気になるわね」
エールを頼んだつもりが、未成年と勘違いされ葡萄ジュースが届いてご立腹なメリーが言った。
まぁ身体が成長していても、まだ子供だろ。特に精神が幼い。
「それなのだが、自分らの試合が終わったあとあたしはアルベートチームの試合を観戦して来た」
「ほ〜うで、どうだった?」
エールを飲み干しお代わりするため片手をあげたヒューイが振り向いて、ビビットに聞いた。
「リーダー明日も試合なのだから飲み過ぎるなよ。……そうそう、気になるアルベートチームのメンツは、まず1人め目勇者アルベート、2、不老不死の魔女ドルチェル、3、不死身の英雄ガルド、4、豪快冷静僧侶ガイズ、5、鋼鉄竜ギガントメイル、6、天使騎士リリカ」
「リリカ…………」
リリカの名に反応したフードの女が、ジョッキを触る人差し指がピクリと動かした。
やはりこの女は天使騎士の関係者か……しかし俺は詮索せんよ。人それぞれ隠したい事情があるからな……。
「で、7人目は勇者の第一夫人でもある大聖女マリオン、8人目は、グリーンマスターシルフ、9人目がケンタウルスナイトのラディナ、10人目が伝説のドワーフ戦士ゴンゾと最後の11人目が謎の助っ人ピエロ騎士だ……」
「ちょっと最後の邪神じゃないの?」
ピエロの騎士と聞いてテーブルを叩いたメリーが立ちあがると聞いた。するとヒューイは釈然としない表情を浮かべ手を組んでアゴを乗せた。
「私も当初君と同じ考えだった。それにしても分かりやす過ぎる。目的は知らないが、邪神は七竜の首を集めている。それが今回七竜の鋼鉄竜が所属する勇者パーティー側に入るだろうか……」
「それは仲間になって油断したところを、金色シャベルでスパンと首斬るつもりじゃないの?」
「それは有り得るなメリー。だけど今のところ鉄鋼竜が暗殺されたニュースが流れない限り、邪神ではない可能性もあるから慎重に見極めなくては」
結局ピエロの騎士について邪神と決めつけるのはまだ早いと、疑惑は一旦保留となった。
次に話題になったのは、勇者の妻が二人もいてパーティーメンバーだと言うこと。
「第一夫人の大聖女マリオンは回復と防御系の魔法を使うサポートタイプだ。性格は温厚だが、ドルチェル同様膨大な魔力持ちでせっかく仲間にダメージを与えても、すぐ回復させるから注意が必要だ」
「凄く有能な奥さんね。でも二人目がいて、今回三人目を欲しがるなんて絶対許せないわね」
メリーの言う通り俺も女をコレクション感覚で集める勇者のことが許せない。
男なら一人の女を生涯掛けて愛せよと思う。
「で、その二番妻のリリカって天使騎士なんだけど……」
「その女にゃら昔見たことあるにゃ、しかもメリーに良く似たブラウンヘアーのツインテールだったにゃ」
「ちょっとちびっ子! なにが言いたいわけ? まさかあたしがリリカと関係があるとでも?」
「それは分からにゃい」
「だったら言うなっ!」
メリーに滅茶怒られた。確かに髪型が似ているだけで親戚呼ばわりするのは失礼だ。
しかし、ツンツンした性格も顔も凄く似てるんだよな……これも保留だ。
ヒューイは次の問題を議論にあげた。
「勇者と対決する前にドルチェルとガルドと鉄鋼竜が行手を阻んでくるハズだ」
「へっ、そいつら強いのか?」
黙って酒を飲んでいた犬飼が興味部下気に身を乗り出し聞いてきた。
戦う男として血が騒ぐのかな。
「もちろん強い。恐らく魔王軍上位幹部並みに強いだろうな……」
「へっ、コイツは燃えてきた」
立ちあがった犬飼が指を鳴らした。
「正気か君は……」
「いや、多少狂ってなきゃ時道とタイムトラベルなんて付き合ってられねーぜ。とにかくよぅ、俺と時道はもっとヤバイ宿敵と決着をつける未来がある。だからその練習代わりに戦わせてもらうぜ」
「宿敵との決着か……それじゃその前に死ねないな?」
「ああ、だから俺は絶対に負けねーからよ」
「頼もしいな」
意気投合した犬飼とヒューイが肩を組んで酒を飲み交わした。
この二人の出会いは本当に奇跡だったけど、本当に巡り会えて良かったな。
「鉄鋼竜はどうする……」
フードの女が聞いた。珍しく積極的に発言するんだな。
「鉄鋼竜ギガントメイルの全身を覆う鋼鉄の鱗はとてつもなく硬い。その強度は、伝説の鉱物オリハルコン並みだと言われている」
流石詳しい魔法使いのビビットだ。
「へっ、とてつもなく硬い鱗か……どんな硬い身体も斬れねぇことはねえな……そいつは俺とリオンに任せてくれ」
「秘策でもあるのか犬飼?」
「大丈夫だ」
根拠のない自信だが、犬飼ならなにかやってくれそうと思うから不思議だ。
とにかく時道たちと出会えたのは運が良かった。その出会いが無ければ、ピンク髪勇者とのリベンジも拐われたリリカを取り戻すチャンスが無かったのかも知れない。
「さて最後に問題の勇者アルベートをどうやって倒すかだ……」
最後の議論にあがったのが、強すぎる勇者についてだ。
「勇者剣ガルゼロードの力で高速移動する勇者に対し、時を止めて抗出来たはずの時道君が出場出来ないとなると、我々はどうやって対抗すべきか……」
「『…………』」
対抗策が思いつかずに皆黙ってしまった。しかし俺はニコニコしていて、元気良く手をあげた。
「大丈夫にゃっ! アタチの部下に時を止める能力の悪魔がいるにゃ」
「なるほど、それでその悪魔は出せそうか?」
ヒューイが聞いた。
「んっにゃっ……アイツは恐にゃく高レア星6にゃから魔力全部使っても当てらるか難しいにゃ」
「だったら今の内にガチャ回して出す努力しなさいよ」
「もうやってるにゃメリー。しかしだにゃ……それが出にゃいんにゃっ……」
俺はションボリして言った。
「だったらアンタのふざけた特殊スキルの魔力課金しなさいよ?」
「ほぼ全部の魔力が持っていかれるから試合前日には使えにゃいにゃっ」
「なんでよ……同等の強さの高レア部下当てたらラッキーじゃない?」
「にゃむっ、いくにゃ強くても、勇者アルベートとの相性が悪過ぎるにゃっ、だから今回は時を止める悪魔七将軍の一人フェミニム狙いなのにゃっ、はあはぁげほっ……」
力説し過ぎてむせた。
「それさぁ……もし本番でフェミニム外したらあたしら終わりじゃん……」
「……確かにそうだにゃっ……」
しかも使えるスキルは二種までだし、召喚魔法がスキル扱いされたからガチャスキルと召喚スキルは絶対に外せない。
だから本番中は魔力課金スキルが使えないことになる。そうなると、試合中に一回一回ガチャハンドル回してフェミニムを当てにいくしかない。
しかし無事当てるまで、敵さんが見過ごしてくれるかどうか……。
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