サタンちゃまと異世界転移13
準々決勝は明日。
と言うことは一度呼び出した部下も待機時間が過ぎているので、再度呼び出せるのは助かる。
そんな訳で明日は誰を呼び出そか今からワクワクしている。まぁたまに出番無しの部下使うかな。
それで今夜の夕食は居酒屋ギドンに決まった。早速俺は仲間たちと合流して向かった。
「にゃんにゃんにゃ♬」
「おい……」
「にゃ…………!」
俺が先頭を両手を縦に振ってルンルンで歩いているとフードの女が話し掛けた。急に横から顔を出して呼ぶから、心臓が止まるかと思ったよ。
「そうにゃ、おみゃあ居たのかにゃ……」
「居たよ失礼な……お前が一人で戦っている最中、うしろで見てた」
『気づかなかった』フードで顔隠しているし、忍者かよ……。
「へ〜知らにゃかった。おみゃ〜影が薄いのにゃ」
「……黙れ悪魔っ!」
「にゃんっ!」
いきなり怒られた。
ちょっと気が触ったのかフードから覗く鋭い左目で俺を睨んだ。まぁ罵しるつもりで言ったんだろうけど、俺悪魔だからなぁ……ハイそうですとしか言えませんね。
「……それにな、わたしは影。だから目立たなくて正確なのだ」
「にゃんにゃカッコつけやがって、それよりおみゃ〜なに者にゃっ?」
「フンッ! 誰が言うかよ」
「にゃにぃ……」
もったいぶるフードの女は両手を組んでうしろにさがった。
ま、こうしている内に居酒屋に到着した。
中に入ると店内は相変わらず賑わっていた。
「丁度真ん中のテーブルが空いてるぞ」
席を見つけたヒューイがテーブルに触れた。
「汚い手で触るな」
俺たちのあとに入店して来た学生服姿の客。青色のロングヘアで白い肌の美少年だ。そいつがニヤリと口元を歪めると、恐れ多くもヒューイに暴言を吐いた。
斬られても仕方ないぞ。
「汚いか……用を足した時は必ず石鹸で手を洗っているのだが……」
テーブルから手を離したヒューイがユーモア混じりで対応した。
「そうよ。失礼よアンタ!」
ヒューイをかばうように前に立ったビビットが青髪美少年にロッドを向けた。
「魔法使いの女か……この辺じゃ見ない顔だが恐らく三流魔法使いだな」
「しっ失礼ね〜〜美形だからってなんなのよ?」
文句を言いつつ、美形ってのは認めるんだなビビット。
「呆れたっ……この僕の制服を見て魔法使いならその凄さに気づくハズだが……」
「……なにがよ……」
「ハハッ! 選ばれしエリート魔法保持者しか入学出来ない魔法学園のさらにっ、成績優秀身体能力万能容姿端麗学園一トップのこの僕っアロイドを知らないとは……田舎魔法使いめ。帰れっ!」
「ちょっ……」
マシンガンのようにまくし立てるアロイドに、煽られたビビットが呆れて口をアングリ開けた。
どうでもいいけど早口でなに言ってるか分からん。
「さっきからにゃんにゃおみゃえ?」
流石に見過ごすわけにいかないので、俺が前に出てビビットに加勢した。
「こいつ……今日の試合で光る太陽チーム相手にまぐれ勝ちした子供……」
「にゃんにゃ知ってんのかにゃ?」
「フッ、知ってるもなにも僕は武術大会に参加し、準々決勝進出を果たしたチームマジックビューティーボーイズのリーダーだ。そして……」
アロイドの仲間らしき10人がぞろぞろと店内に入って来た。皆ムカつくほどの美少年いや、一人スキンヘッドがいるみたいだが……。
しかしアイドルグループみたいな恥ずかしいチーム名だ。
「どうしたアロイド? 席は確保出来たのか?」
赤毛の長髪美形がアロイドに話し掛けた。
「フィロデンドか……いや、この汚らしい子供がこの美しい僕に盾突くんだ!」
「落ち着けアロイド………………………」
アロイドの顔を覗き込んだフィロデンドが急に黙り込んだ。『なんだ?』立ったまま金縛りにでもなったのか?
「君こそどうしたっ!? 僕の顔を見た途端動かなくなって、その美しさに気絶したのか?」
『にゃっ……』凄い自惚れだ。別にいいが、せいぜい頑張って生きろよ……。
「おっ、おっ! …………なんだアロイドか……」
アロイドに肩を譲られたフィロデンドが正気に戻った。
「なにを寝ぼけている。一体固まってどうした?」
「ああ、それは……アンタの瞳に映った俺の美しい顔と目が合って、思わずその美しさに見惚れて…………」
「なんだ、それなら仕方ない」
赤毛も凄いナルシストだな。
「ところでこの子供が武術大会に?」
ショートカットの緑髪の美少年がアロイドに話し掛けた。そのうしろに黒色、水色、金色、銀色、茶色、紫色、オレンジ色と異色なスキンヘッドとカラフルな髪の7人の美少年が並んだ。
一部毛無しもいるが皆美形だ。
「ああ、コイツの試合観たろ?」
俺に指差すなよアロイド。
「存じています。たまたま偶然が重なって運良く勝った子供ですね?」
たまたまじゃねーよ緑髪。後半の黒鴉の活躍見てなかったのか?
「フフッ」
緑髪が俺の顔見て笑ってテーブルを強く叩いた。
「こんな出来の悪い子供が伝統的な都の武術大会に出て良いわけないよね?」
「にゃにゃいきにゃり来て感じ悪いにゃ……」
「はぁ〜〜? 汚らしいゴミ子供が僕の前で息するな喋るな心臓動かすな、頼むから死んで」
コイツも早口で口が悪いな。
「にゃんにゃおみゃえらさっきからにゃ……」
「だから喋んな空気吸うなゴミ子供。この際言ってやる知ってるか?」
「にゃにがにゃ……」
「……分かんないゴミ子供だ。いいか良く聞けっ、明日の準々決勝僕らチームの対戦相手がお前らなんだよ。だから僕らに勝てるわけがないんだ。悪いこと言わない。怪我する前に試合棄権しろ」
『大した自信だ』好き勝手に言ってくれる。しかしこの美形に絡まれるトラブル何度目だ?
あまりにムカツイたので、ニタついた緑髪の顔面に頭突きをお見舞いする自分の姿が脳裏に浮かんだが、試合前の対戦相手との乱闘は失格になるのでグッとこらえた。
「……おいっビビッてるのか、来いよ子供っ」
「…………」
両手で手招きして俺を挑発する緑髪。童顔で髪の色からして温厚かと思いきや、コイツも性格最悪の見下し野郎だった。
で、単なる挑発ではない。俺に先に手を出させ乱闘騒ぎを起こし、正当性を主張し失格を誘う。
だから挑発には乗らない。
しかし口で反論するのは問題ない。
「さっきからにゃんにゃ?」
「おっ! ようやくヤル気になったかコイよー無能な子供っ」
「……分かったにゃ、明日の準々決勝でアタチがおみゃえら全員ぶっとばーーすにゃ」
「なんだと……チッ、どうするアロイド?」
俺が誘いに乗らないんで悪態をついた緑髪がうしろを振り向き、青髪のアロイドに相談した。
「その辺にしときなよバーキン。どっち道、明日僕らがそこの無能チビを偉大なる魔法によって完膚なきまで叩きのめすのだからな……」
「ふふっ、確かにそうだ」
マジックビューティーボーイズは俺を罵しるだけして満足したのか、なにも食べずに居酒屋をあとにした。
「なにアイツら性格最悪なんですけど……」
立ち去る奴らの背中を睨んだメリーが呟いた。
「へっ、あんな男らしくねー奴らに負けんじゃねーぞ。サタンちゃまよ」
「にゃっ」
いつの間に席に座っていた犬飼が親指見せて俺を応援してくれた。
すでに酔っているのか、犬飼の側に空になった樽ジョッキが二個転がっていた。
「とりあえず皆席について明日の試合についての作戦会議を開きたい」
犬飼の右隣に座ったヒューイが言った。作戦会議はやった方がいい。
どうでいいが……呑んべいの隣に座るのは危険だ。似たような身長体型の男子ならなおさらだな。




