サタンちゃまと異世界転移11 サタンちゃま一人対光る太陽チーム
武術大会の組み合わせが決まった。
16チームによるAブロック6チーム、Bブロック6チームに分かれて試合が行われる。
それで俺たちのサタンちゃまチームはAブロックに振り分けられ、恐らく決勝戦で当たることになるであろうピンク髪勇者チームはBブロックだ。
ちょっと誰の采配か知らないけど、うまくバラけたな……。
で、初戦の対戦相手のチーム名が『光る太陽』だ。どんなチームなのか調べてないので不明だが、勇者チーム以外は俺一人で十分だろう。
「本当にこのちびっ子だけに任せても良いのか?」
決勝以外俺一人で戦う戦法と聞いたビビットが実力を疑う様子でヒューイに聞いた。
すると彼はしゃがんで俺の頭を掴んだ。
『……猫じゃないんだから掴むな』だったら飼い猫にするように頭をなでろ。
「今さら疑うまでもないだろ? このちびっ子はとんでもなく強い。それと勝敗を賭けた博打が裏で横行していると言う。一番人気は言わずもがな勇者チームだ。しかし予想通り勇者チームが優勝してもオッズが低いから儲けは少ない。それなら人気がないオッズが高いチームに大金を賭ければ儲けられるってわけさ」
「それってあたしらのチームってわけ?」
「ご名答。ぽっぽ出でしかも子供を入れたチームなんかに誰が賭けるか? 恐らく私たち以外いないだろうな」
立ちあがり手を叩いたヒューイはビビットの帽子を取って頭を撫でようと手を伸ばしたが、手で払われ拒否された。
「つれないねぇ……」
「……あたしをちびっ子と一緒にするな。しかしなるほど……それでちびっ子一人戦わせる気ね?」
「ああ、サタンちゃまがいくら強くても観衆はまぐれ勝ちだと思って決勝戦まであがっても、私のチームに賭ける者は少ないのでは?」
なんだかヒューイが守銭奴聖女さまみたいに言ってきたな……。
「……良く分かったわ。しかし賭け金はどうするのよ? あたしたちがいた時代の貨幣とは違うハズよ」
「ハハッ、その心配は無用だ。冒険者登録してから私は短期間に数多くのクエストをこなしある程度の金は稼いできた」
そう言うと自信気な表情を浮かべたヒューイが懐から、貨幣が詰まった麻袋を取り出して見せた。
「抜かりないわね隊長」
「ああだから、サタンちゃまが一人で戦って苦戦したとしても、決して加勢するなよ」
「フンッ大丈夫よ隊長。チビ一人がリンチになっても、普段からウザ憎たらしいから情なんて湧かないわよ」
言ってくれるじゃないかビビットよ。
とにかく勝ち進む気でいる俺たちは、準決勝まで俺一人で戦わせる気だ。
まぁ得意の頭突きで雑魚共蹴散らせば、攻撃に頭を使うが、頭脳は使わなくていいから楽だ。
□ □ □
Aブロック二回戦で俺たちサタンちゃまチームの出番となった。対戦相手は光る太陽だ。
で、俺たちは右側の入場入り口を潜った。すると驚いた。闘技場の中に10メートルの高さの岩や朽ちた壁や大木など障害物がバランス良く配置されていた。要は普段魔物と戦う荒野が表現されていて、障害物を上手く利用して戦っていくことになる。
そしてすでに対戦相手が左端で俺たちを待ち構えていた。
「俺らは運がいいぜ。まさかすぐにお前らと戦えるとはな……」
さっき俺に絡んできたスキンヘッドの男ライトニング。そして、光る太陽のチームリーダーだったとはな……まんまのネーミングじゃないか。
「それにしても……こんなガキを連れて来るとは、この大会は幼稚園の遊戯会じゃね〜んだぜ?」
「そうか、それは悪かったな」
肩をすくめたヒューイがライトニングに軽く謝罪した。
「ほ〜う……見栄えのいい騎士だ。アンタがリーダーか?」
「……いや違う。リーダーは、さっきからお前が侮辱しているこのサタンちゃまだ」
だから、身の詰まったスイカを選ぶ時じゃあるまいし、俺の後頭部をポンポン叩くな!
「なにっ!? あんなガキをリーダーに狂っているのか?」
「フッ、誰になんと言われようがこの子がリーダーだ。だから君たち相手にリーダー一人で戦うそうだよ」
ヒューイに背中を押された俺は正面に立った。すると目を丸くしたライトニングと目が合ったので俺は、両手を首のうしろで組むと笑った。
「約束通りアタチ一人でおみゃえらをぶっ飛ばしてやるからにゃっ!」
「…………この野郎っ舐めやがって!」
怒りの形相になったライトニングが歯ぎしりして、白い歯を見せた。
「兄貴っ舐めたクソガキオレにやらせてください」
小太りターバン男がライトニングに名乗り出た。
「……いいだろう。こんなガキ一人に俺が出るまでもねぇ……」
「へへっ、任してくださいよ〜兄貴ィ、さあ〜て……」
小太り男が腰に付けた半月刀を鞘から引き抜くと俺を睨みながら、刃先をベロリと舐めた。
『なんか危なっかしいな』どうでもいいが、舌切るなよ。
さて、右入場ゲートから長い黒髪をオールバックにして、首のうしろで一本に束ねたスーツ姿の美女が笛を持って現れた。
「私が戦う審判のミアナだ。厳正に審判ジャッジするが、不正する奴はビシバシ殴って退場させるからな」
戦う審判って胸がデカいが、スーツの上からでも分かる盛りあがった筋肉からして強そうだ。コッワ……。
そんなミアナが右手をあげてホイッスルを吹いた。さて、試合開始だな。
「おいっガキィ!」
小太り男が半月刀の先を俺に向けた。
「なんにゃ、刃物を人に向けるにゃんて危にゃいにゃあ……」
「なにをごちゃごちゃと、死にたくなかったら、今すぐ降参しな」
いかにもイキッた雑魚が言いそうなテンプレ台詞だ。これまで現実、創作含めて聞き飽きたわ。
呆れた俺は口をポカンと開けた。
「にゃんで雑魚相手に両手をあげる必要あるにゃ?」
「なんだとっ……くっ、舐めやがって! このオレを誰だと思っている!?」
「知らんにゃ……」
「よーく聞けっ、オレの名はっ」
「にゃんっ!」
「ゴブッ!!」
雑魚の名前聞いても秒で忘れるので俺は駆け出し、小太り男の顔面目掛けて頭突きをかました。すると奴は吹き飛ばされ岩に激突した。
「おいっマグロォォッ!」
「にゃっ!」
うつむいて座り動かなくなった小太り男に向け、ライトニングが叫んだ。
あいつマグロって名前だったのか……。
日本語のマグロと意味は違うと思うけど、ある意味体型的正解だな。
「おのれマグロを……たまたま頭突きが当たって、たまたま打ちどころ悪くてガキ相手に、たまたま負けたに過ぎねぇ……」
たまたま3回言われたが、本当はたまたまじゃないぞ。
「にゃんにゃ……?」
舐められ続けろとヒューイに言われた俺は、無知な振りして人差し指を口元に当て小首をかしげた。
「はっはっはっ! コイツやっぱマグレだぜ」
「兄貴ィッ俺らに任せてください」
今度は長身ヒョロガリ男の二人組が前に出た。手にはナイフを持っていかにも殺し屋風だ。
とはいえまぁ、コイツらも雑魚だな。
「おうっ、イズミ兄弟か、言っての通りあのガキたまたま勝ったに過ぎねぇから殺せ!」
「『へいっ兄貴お任せをっ!』」
二人がライトニングに返事すると俺を狙ってナイフを投げてきた。
当たっても身体が頑丈だから弾き返せるが、そこは弱者のフリして逃げ惑う振りして避けた。
「コイツッ避けやがるマグレかっ!?」
「にゃにゃっ!」
『まぐれじゃないよ』俺は斜め横にジャンプして避けた。ついでに横にいた細身の一人に横っ腹狙って肘打ちをかました。
「おっご…………おごっ!」
目ん玉飛び出る位目を見開いた細身が横っ腹を手で押さえよろけると、口から血を吐いてうつ伏せでの状態で倒れた。
『ありゃっ……』手を抜いたつもりがやり過ぎたか……いや、細身が弱すぎるのだ。
「てんめぇ〜っ兄を良くもっ!」
もう一人の細身が俺の背後から叫んで向かって来るのが分かった。
「にゃんにゃっ?」
「ぐぶっ!」
振り返るフリして頭突きをかまして細身の顔面を潰し倒した。
「ばっ、馬鹿な……」
「あにゃ〜? にゃんで子供相手に、大の大人にゃ負けてるのにゃ?」
知らないフリしてあどけなく言った。
するとライトニングの顔が茹でタコみたいに真っ赤に変色した。
「このガキ許せん……もう殺しても構わねぇ、おめえらっまとめて掛かれ!」
「『へへいっ!』」
ライトニングを除く残り6人の手下共が前に出て戦闘態勢だ。
どいつも指の関節鳴らしたり、薄ら笑い浮かべて子供相手に勝った気でいる。
さて、そちらが数でくるならこちらも数で対抗だ。とはいえ少数精鋭だ。
俺は手をあげ審判にアピールした。
「どうしたちびっ子?」
「今から登録スキルの従魔召喚するにゃ」
「……お前が……いや、見た目で判断するのは審判失格だ。召喚出来るならいくつでも出すが良い」
「にゃにゃっ♬」
それを聞いた輩たちが『いくつでもって、汚ねえ』と不満を言っているのが聞こえた。
しかしルール状問題ないから残念だったな。
さて俺は観衆の前で空に向かって両手をあげた。
「ステータスオープンにゃっ!」




