サタンちゃまと異世界転移5 二人の結婚式
居酒屋をあとにしてからガマハウスで一泊して朝をむかえた。
そしたらすぐに、ミルトの案内で冒険者ギルドに向かった。
「ちびっ子!」
ギルドの中に入るとあっさりメリーと再会した。
「おみゃえら無事か?」
「ええ、大丈夫だけど……散々だったわよ」
メリーのうしろに、ヒューイ、ビビット、ザレオン、エイトの四人が揃っているな。
「散々ってにゃんにゃ?」
「一応さ、エイトさんのたこ焼き屋台も一緒に異世界転移したから食うには困らなかったけど、たこ焼きばっかじゃ飽きるわよ」
『食にありつけるだけいいだろ』心配して損した。まぁワガママなメリーらしい不満理由だな。
「ところであの二人は?」
メリーはミルトとパルナに気づいた。
俺が二人について説明するとメリーは手をあわせ目を輝かせた。
「明日結婚式ですか、素敵ですね」
二人に握手を求めるメリー。
「ええ、よろしければ皆さん一緒に僕らを祝福してもらえませんか?」
「それはもちろんねえ皆んな?」
振り返って皆に聞くメリー。
「ちょっと待て! 別に構わないが、我々が元の世界に帰還する方を考えるのが先じゃないのか?」
現実派の鷹村警部が待ったを掛けた。
確かにもっともな考えだが、時の運び屋の時道がいるから皆、帰還の問題を後回しにする理由じゃないのかな?
「別にさ、今すぐ対策しなくても元の世界に帰れなくなるわけじゃないし、しかも時道君がいるから急がなくても良くないか?」
ヒューイが鷹村警部を諭すように話し掛けた。
「ううむ……分かった。ではこれからどうする?」
「まずは〜この二人の結婚式を祝いましょう」
ヒューイも中々粋なことを提案する。別にこれからギルドで冒険者登録して冒険の旅に出掛ける必要ないし、明日は予定ないから皆参加することに決まった。
俺的には二人の仲を裂けば聖女パルムの存在が抹消されるかも知れない。だけどそれをしたら、今の自分も知り合った仲間と思い出が無いことにされてしまう。
そう思った俺は首を横に振って、小さな右手を握った。
『あんな鬼聖女でも、存在が消えて良いわけがにゃい!』
俺は邪悪な考えを捨て、慈愛の女神パルナと平凡冒険者ミルトのカップルを応援することにした。
「おいっミルト」
「なんですかサタンちゃん?」
「にゃむ〜〜……」
『アタチの凄さを知らないとはいえ』この悪魔王にちゃんつけして呼ぶ人間は初めてかも知れない。
とはいえ用件を伝えよう。
「おみゃえ金持ってにゃいにゃろ? 披露宴で出す料理はアタチが出すからにゃっ!」
見た目で判断するのは失礼だが、多分金銭的に余裕ないと見た。
「えっでも……それは助かりますけど……君のような子供が……」
「にゃにゃにゃっ♬ 昨夜のガマハウスでアタチの力の片鱗を見たにゃろ? 安ちんちろにゃ、アタチにはグルメガチャスキルがあってにゃ、魔力がある限り無限に料理が入ったカプセルを出せるにゃ」
「ガチャ? よ、良く分かりませんが助かります。では明日料理の手配よろしくお願いします」
「にゃっにゃっ♬ まかせるにゃ」
出した料理の持ち運び屋は部下たちに任せるとしよう。
で、今日は食べて寝て、明日の披露宴に備えよう。
しかし無事式が済めば良いがなにか胸騒ぎがした……。
□ □ □
翌朝二人の結婚式は教会の大聖堂で行われ、披露宴はパルナと親しい貴族の屋敷を借りて盛大に行われることになっている。その参加人数は俺たちを含めて100人以上と言うから驚きだ。
まぁミルトいわく、そのほとんどが女神パルナの知り合いらしい。それだけ彼女の影響力が凄く人気なんだな。
しかしそんな彼女のハート捕らえたミルトはラッキーボーイだな。本当冴えない青年だけに、周囲の男たちからの嫉妬は計り知れないな。
さて、グルメガチャ作業は教会で契りの儀式を終えてからで、とりあえずボケっと見ているだけだけど、俺は参加を見送ろうとミルトに申し出た。
「アタチは外で式が終わる前に待ってるにゃ」
「『何故ですかサタンちゃま?』」
白のウエディングドレス姿のパルナと白いタキシード姿のミルトが、俺を引き止めようと訴えた。
二人共似合っていて眩しいな。
「にゃぜって、アタチは悪魔だからにゃ……」
「サタンさんが悪魔と言うことは聞いてます。ですが、この世界には悪魔は存在しません。だから教会に入っても問題ないと思います」
真剣に説得を試みるパルナが俺の右手を取って握った。
「おみゃえ……」
部下以外にここまで真剣に思われ、心を揺さぶられたことはない。
「…………分かったにゃ」
「『本当ですかサタンちゃま?』」
笑顔になった二人は顔を見合わせた。
「後ろの席で見守ってやるからかにゃらず式を成功させるんにゃ」
「ありがとうございますサタンちゃまは優しい子ですね」
「にゃむ〜〜〜〜……」
悪魔に優しいと言われても正直困る。しかも俺の方が遥かに歳上だぞ。
教会内に招待者たちで一杯になり、いよいよ式が始まろうとしていた。
教会の外で待機していたパルナとミルトが入り口の前に立った。ちなみに俺が新郎新婦と一緒にいるわけは、結婚指輪を運ぶリングガールの役目を頼まれたからだ。その際頭の角を隠しての入場だ。
「じゃあっ初めようかパルナッ!」
「ええっそうしましょうミルトさんっ」
仲睦まじい二人は手を取り合い。牧師が待つ祭壇に向かってバージンロードを歩き始め、俺も後ろに続いた。しかし目立つのは嫌いなんだが仕方ない。
それから祭壇の前に立った二人は司祭に契りの誓いを問われた。
「汝らは互いの愛を誓いますか?」
「『はい。誓います』」
パルナとミルトが同時に答えた。
「では誓いのキスを」
「『…………』」
二人は緊張気味で向き合って手を伸ばした。緊張するなぁ、キスのあとに俺が司祭に指輪箱を手渡す役目が待っているからだ。
肩を寄せ合い二人の唇が重なろうとしたその時背後から突然、大きな音がした。
招待客たちは一斉にうしろを振り向いた。音の発生源は入り口の観音開きのドアで、何者かが乱暴に開けたと分かった。
「ちょっと待てよ〜〜ヒュ〜〜ゥ♬」
軽い口調でピンク色の髪の冒険者風の男が腰に剣を帯刀して、高価そうな鎧とマントを羽織って教会内に勝手に踏み込んで来た。
「ちょっとあれってまさか……」
「ウソ……どうして彼がここに?」
「女神様のお知り合い?」
ピンク髪の男の姿を見た招待客がざわつかせた。
「どちら様でしょうか……」
祭壇前まで来た部外者に対して、誓いのキスを邪魔されたミルトが彼女を守るようにソイツの前に立ち聞いた。
「あっれ〜おかしいなぁ〜僕ちゃん超有名人なのにぃ〜、知らないなんてどこの田舎者ですかぁ?」
「く、知りませんよ貴方なんか……それより式の邪魔するなら出て行ってくれますか?」
ミルトは不審者に対し毅然とした態度で対応した。しかし相手は腰を曲げ、舐めた態度でミルトの顔を下から覗いた。
「こんな冴えない男のどこがいいのかなぁ〜?」
不審者は皆に聞こえるように言った。なんか無茶苦茶性格悪いな……。
「くっ……」
「出て行ってください。なにを言われようと私はミルトに惚れて結婚を約束したのです」
黙っているミルトをかばうようにパルナが反論した。すると不審者のゆるい口元がさらにゆるんだ。
「僕ちゃんさぁ〜〜、三人目の嫁を見つけるためにこの街に来たんだけどさー、女神パルナ一目見て気に入っちゃったよ♡ こんな冴えない一般人なんかと別れて僕の妻になりなよ」
「…………お、お断りします」
「そうつまらないこと言うなよ女神ちゃん。悪いこと言わねーから、僕と結婚して♡」
トコトン舐めた態度のピンク髪の不審者がミルトを押し退け、口元をタコみたいに伸ばしてパルナに迫った。
「よせと言ってるだろっ!」
相手の正体が分かっていても、ミルトは婚約者を守るためかばった。
「なんだお前……取り消せよ、その結婚式を……」
ギンッ!
「クッ!」
真顔になった不審者が鞘から剣を引き抜きミルトに切っ先を向けた。
「これ以上邪魔すると斬るぞ雑魚が……」
「クッ、魔王軍から世界を守る貴方がそんな暴挙が許されると……」
「ああ許されるんだなぁ〜僕ちゃん。なにせ一か月後に魔王を討伐して全人類から祝福受けるからね〜〜……だからお前程度の雑魚一人切り捨てても皆忘れる程度。だから死ねば?」
不審者がミルトに向かって剣を振りおろした。
「クッ、パルナッ!」
ギンッパキン!
「なにっ!」
俺の頭突きで不審者の剣を折ってやった。
「あ〜あ、この剣高かったのになぁ〜〜、ところでこのガキどこかで見た覚えが……」
しゃがんで剣のカケラに手を伸ばした不審者が俺を見て呟いた。
「にゃっにゃっにゃっ♬ 久しぶりだにゃあ勇者アルベード・ニルフィ」
「その笑い声と猫口調……まさかサタンちゃまか……!?」
「にゃっにゃっにゃっ♬ おみゃえに捕まり天界の牢獄で涙した屈辱の日々辛かったにゃ……刑期を終えたアタチは復讐を果たすべく帰って来たのにゃ」
「マジかよ……」
呆気にとられた表情を浮かべた勇者アルベートに対し俺は、指差し戦線布告した。




