サタンちゃまと異世界転移3
その日の内に首都グランデアに行くことになった。そんなに急ぐわけは、ミルトとパルナの結婚式日に間に合わせるためらしい。
で、俺たちがいる荒野からグランデアまでの距離は歩いて行ける距離らしいが、流石に着くのは夕方になるそうなのでギルドに行く予定は明日になった。
それで俺は皆んなを外に出してガマハウスを仕舞った。
「鷹村警部〜〜歩けますか?」
「いや……気持ち悪くて歩けない……」
悪酔いした鷹村警部はベロベロになって動けない。仕方ないので俺はアルマーに頼んで彼女を乗せてもらうようにした。
「鷹村警部気分はいかがすか?」
「えへへっ♡ 長谷川〜このタンクの凹みが丁度からだにフィットして最高〜〜!」
普段鬼のように真面目な鷹村警部が、片手をあげへべれけになって答えた。
彼女は安定のドリルタンクモードの上で丁度二対の主砲の間に挟まって、寝心地は良さそうだ。
これで酔っぱらい移動問題がクリアし、俺たちはグランデアまで歩いた。
□ □ □
グランデアに到着したのは、ミルトの言う通り陽が沈んだ時刻。宿はガマハウスがあるのでまずは一杯やりたいと言うことで、ミルト行きつけの居酒屋ギドンに決まった。意味は分からないが、俺の頭の中では尻尾を生やし二足歩行で火を吹く怪獣の姿が浮かんだ。
まぁ子供の妄想だ。ホッとけ。
「皆さん……」
居酒屋ギドンの入り口の前で立ち止まったミルトが振り返ると、険しい表情を浮かべ言った。
「この店の常連客は皆荒くれ者の冒険者ばかりですから、万が一絡まれますから気をつけてください」
「にゃんにゃ、絡まれるにゃんてしょっ中にゃから、慣れてるにゃ」
「えっ!?」
俺の返事を聞いたミルトは驚いて声を出した。
まぁ俺を舐めて絡んでくる輩には、頭突きで沈めてきたから慣れたもんよ。トラブルに対し本当頭は使うが、中身の脳みそ使わなくて済むからな。
「お前子供の癖して何度も居酒屋でトラブル起こしてるのか?」
犬飼が呆れるように言ってきた。
「失敬にゃっ! 輩の方が先に手を出してくるから相応の対処してるだけにゃ」
「おっ、お、おう…………とりあえず頑張れ」
「にゃっ……」
俺が腕を振りあげ犬飼に抗議すると、生ぬるい目で同情された……。
まさかやり返されるとはな。
「と、とりあえず皆さん入りましょうか?」
「ちょっと待て、鷹村警部はどうする?」
ウイスキー片手に犬飼がミルトに聞いた。どうでもいいが、飲む前にもう飲んでるとはコイツは常識知らずだ。
『彼女ならミーが店の外で守っているから、遠慮なく酒盛りを楽しんでくれ』
彼女を乗せたアルマーが言うと、長谷川警部補も『ぼ、僕も彼女を見守ります』と言って外待機を申し出た。まぁ本音は居酒屋の荒くれ者にビビってたのと違うか?
こうして残りのメンバーで居酒屋に入った。店内は冒険者ばかりで賑やかだった。
そして突然入店して来た俺たちに向け視線が注がれた。
「おいおい、子供が来る店じゃねーぜ……」
「なんだ親子連れかぁ?」
「ここは幼稚園じゃあ、ないんだぜぇ」
輩共が早速俺に対し悪意を向けてきやがる。一方別な声が聞こえた。
「おいおいっ冴ねぇ男の隣で歩いている綺麗なねーちゃんは誰だ?」
「んだな、まるで女神みてぇだ♡」
パルナのこと言ってるけど、本物の女神だぞ。
「とりあえず奥の席が空いてますからどうです?」
「そこしかにゃいにゃら構わんにゃ」
俺が返事すると皆奥のテーブル席に座った。
「さて、とりあえず大人の皆さんは、エールでよろしいですか?」
「ああビールのことか、ならちびっ子二人はなに頼む?」
犬飼が俺とリオンの頭をポンポンと軽く叩いてから聞いた。ムスッとフグみたいに頬を膨らませたリオンが『このちびっ子よりは妾の方が背が高いぞ』と反論したが、若干背が高いだけでどっちもどっちだな。
「それなら牛乳がありますよ」
ミルトがメニュー表指差して優しげに言ったが、冷蔵庫も無さそうな異世界の牛乳を飲むのは怖いな。だから暑いお茶が有ると言われたので、俺とリオンはそれにした。
で、料理は鳥の丸焼きと肉と野菜のスープと硬いパンの、俺のグルメガチャに比べれば実に質素だ。
だけど一口食ったら美味かった。
「へーこれが異世界の料理か、うめーじゃねえかよ。もっと他に注文していいか?」
「どうぞ犬飼さん。僕も地元の料理を気に入ってもらえて嬉しいです」
居酒屋に馴染むのが、ノンベイだけあって早いな犬飼の兄さん。
そんな訳で楽しい酒盛りが続くかに見えた……。
「おいっ、この席は俺らの特等席だぞ」
柄の悪い三人の冒険者が俺たちにイチャモンつけて来た。まぁリーダーらしき真ん中のブサ面小太り男はいかにもな、チンピラ冒険者だな。
俺はニヤニヤしながら輩たちを見ていると、リーダーのブサ面と目が合った。
「なにがおかしいガキが……」
「にゃっ……にゃにゃっ♬ やんのかチンピラ?」
ガタッ!
『売られた喧嘩は買ってやる』俺は席を立つとブサ面の前に立った。
「チンピラだと……ここいらじゃ有名なA級冒険者のこのイケメン様を知らねー田舎者だな……」
「にゃにっ! イケメン?」
そんな奴いたのか俺は店内を見渡した。
「……おいっ、どこを見ている。イケメンとは俺のことだ」
「にゃっ……」
『いや違うだろと』自称イケメンのブサ面にドン引きした。すると犬飼が『いや流石に、イケメンじゃぁないだろ』と決定的なことを呟いた。
「こっ…………! おう兄ちゃん言ってくれるじゃねーかよ。俺の名はイケメン・クロスフォードってんだ」
「にゃっ」
本当に名前がイケメンか、本名なら仕方ない。
とはいえ久々に笑わせてもらったので、俺の頭突きでお返ししてやろうかな。
「待てよ主ら……」
今度は違う輩が俺たちに声を掛けて来た。そいつは角刈り顎ひげで筋肉質の身体に白の道着を着た屈強な男だ。首元には野球ボールサイズの黒い数珠を掛けて僧侶かなにかだろうか?
あと額の上に眼鏡を乗せていた。昭和時代で見たサングラスを額に掛けた太陽族みたいだな……。
「ああ? なんだテメーは?」
僧侶に詰め寄ったイケメンが毒ついた。しかし長身の僧侶相手だと、背の低いイケメンが子供に見える。『まぁ頑張れ……』これが本当の、格下を余裕の目で見る時の頑張れの使い方だ。
「喧嘩は良くないな。まずは良く相手と話し合ってからが大事だぞ」
無骨な僧侶の男は意外と冷静だな。
「はあ〜〜っ? テメーと話し合いなんかしてやれっかよ。ホラ掛かって来いよ。デキねーのか腰抜け?」
「……今なんつったブサ面?」
「おっ! て、てめぇ俺はブサ面じゃねーよ。イケメンだっ……」
話し合い開始一分も経たない内に僧侶の温厚な態度が一変して、イケメンの胸ぐら掴んで片手で持ちあげた。
まぁ補足しておくけど、イケメンって名前だけでアイツはブサ面だ。
「拙僧をっ本気で怒らせたなっこのブタ野郎が!」
「なんだとって、テメー先に……がっ!!」
鬼の形相に変わった僧侶がイケメンの顔面を殴って吹き飛ばした。ついでに残りの二人も殴り倒した。その時間1分も掛からなかった。
話し合いと言っておいて結局暴力で解決するとは中々ヤベー僧侶だ。しかもイケメンに大したこと言われてないのにブチキレるとは、髭僧侶の沸点低く過ぎだな。
「いや〜済まん。最初は穏便に話し合いで解決しようと思ったが、ついカッとなってしまったよ……」
僧侶は笑って誤魔化したが、目はマジだった。これは達人の目だ。
「おみゃえにゃに者にゃ?」
「んっ拙僧のことか……拙僧の名はガイズ……勇者アルベード・ニルフィ冒険者チームの一員だっ」
「にゃんと……」
まさかの因縁ピンク髪勇者チーム仲間との遭遇。その名を聞いたミルトが震える声でこう呟いた。
「豪傑冷静僧侶のガイズ……」
正反対の二つの異名を持った怪僧侶だな。間違いなく要警戒だな……。




