サタンちゃまと異世界転移2
俺たちを助けてくれた(その必要はなかったが)女神を連れた異世界の冒険者ミルト・エルデールに、この世界について詳しく話しを聞くことにした。
そうと決まれば落ち着いて聞く場所が必要だ。俺は胸元に貼り付いているガマサイフを引き剥がし、荒野に放り投げて数人が住めるガマハウスに変身させた。
「まあっ凄い。カエルが家に変身しましたわ。見て見てミルトッ!」
相方の慈愛の女神パルナがミルトと身を寄せ合いガマハウスに指差した。実に親密な様子で、男女二人だから付き合っているのか?
無邪気な子供の振りして聞く手もあるが、まぁ自分からのろけ話をしてくれそうな雰囲気だな。
「遠慮は要らん。ガマハウスへようこそにゃ」
「ちょっと待て子供っ!」
「にゃっ?」
眼鏡に手で触れ、眉間に皺寄せた鷹村警部が待ったを掛けた。
「なんだコレは? ガマサイフが一瞬で家になるなんて普通おかしいだろっ?」
「にゃむ〜〜……」
常識人はどつしても超常的な出来事に関して納得出来ないらしいな。
とりあえず説明が面倒いので『仕様にゃっ』と一言で済ませ、入り口のドアを開けた。
「おいっ子供っ話しは途中だっ!」
「うるちゃいな刑事さん。別に悪いことしてにゃいからいいにゃろ? それよりにゃかに入ってうんまい棒奢るからにゃっ!」
「……にゃーにゃー混ぜてお前の言ってることサッパリ解らん……」
呆れたのか鷹村警部は俺を叱るのをやめて室内に入った。どうでもいいが、ちょっと靴は脱げよ。
「へ〜驚いた。カエルの中がこんな立派な室内になっているとはな……」
室内を見渡す犬飼が言ってからなにかに気づいた。
「おっ! 冷蔵庫まである。開けていいか?」
「抜け目にゃい男にゃ、にゃが、冷蔵庫はアタチしか開けることが出来にゃいのだにゃ」
「へ〜っ酒あるか?」
「にゃっ……」
酒があったか良く覚えてないが多分あると思う。自分で言うのもなんだが、たまに記憶が曖昧になる。それにしても犬飼は時四六時中酒呑んでいるけど、身体は大丈夫なのか心配になる。
「おっ! あるじゃねーかビールがよう」
「にゃっ」
俺が冷蔵庫開けるとめざとく缶ビールを見つけた犬飼が歓喜して、五本勝手に持って行った。
「こにゃっ! いくら魔力消費すると思ってるにゃっタダじゃにゃいんにゃろ!」
「へっへ♬ 頂くぜサンキュー♬」
ビールを抱えて上機嫌な犬飼がリビングのソファーに座って、早速プルタブ開けて飲み始めた。
全く調子のいい男だ。
「さて…………にゃん」
背後から脇腹指で突かれた。振り返るとリオンが物欲しげに俺を見つめていた。
「にゃんにゃ……ちょっと待つにゃ」
もう言われなくてもたい焼きを所望してるに違いないから、冷蔵庫を開けてにたい焼きを探した。しかし無かった。
それで振り返って肩をすくめた。
「残念にゃがらにゃいにゃ」
「……まだ妾はなにも言っておらんぞ……」
「にゃ……またまた知ってて言ってるにゃろ」
「……」
『何故そこで黙る』俺は答えを言う前に逃げ道を確保した。
そして深呼吸してから……。
「たい焼きはにゃかったにゃ」
「……………なんだとっ!」
「にゃあっ!」
怖い目つきになったリオンに俺は追い掛け回された。『やれやれ』分かっていたとはいえ、えらい目に遭わされた。
んで、ワガママなたい焼き姫にはカップアイスとケーキと大福とうんまい棒380円のバラエティパックをあげて満足させた。
一方時道はリビングのソファーに下を向いて寡黙に座っていた。相変わらず根暗かクールか分からない奴だな。
「カエルの中にこんな部屋があるなんてふざけてるのかっえっ!」
鷹村警部が部屋を見渡しながら土足で入って来た。そのうしろに長谷川警部補がおどおどしながらついて来た。
お化け屋敷じゃないんだから失礼な。別に食べやしないぞ。
「にゃんにゃ刑事が偉ちょうに」
「なんだと子供っ!」
「にゃっ! 怖いにゃっ!」
年下と分かっていても、鷹村警部の迫力に押された俺は、びびってリオンの背後に隠れた。本当この女刑事は気が強くて苦手だ。
「……おいちびっ子。妾を盾にするな……」
「にゃん! ごめんにゃ」
リオンに睨まれた俺は慌てて逃げ出した。もう散々だな……。
あとは、入り口で遠慮気味で覗いているパルナとミルトの二人だ。黙っていても入りそうにないので俺は小さな手でブンブン振って手招きした。
「えっいいんですか?」
人の良さそうなミルトが目を丸くして、自分を指差し聞いた。
「入ってもらわにゃいと、ゆっくり話しを聞けにゃいだろ?」
「…………分かりました」
パルナとミルトは顔を見合わせ中に入った。で、俺が入り口のドアを閉めてから、適当に惣菜とスイーツを選んでリビングのテーブルに置いた。
「おっ! つまみが丁度欲しかったんだ」
すでに缶ビール四本開けていた犬飼が惣菜を手に取った。いやいや良くつまみ無しで缶ビール四本開けたな。俺なら一本目で悪酔いするだろうな。(言っておくが、コレは例えだ。良い子は大人になるまで飲酒禁止だぞ)
さて、皆が落ち着いてきたところで俺は、この世界についていくつかの疑問を、二人に聞いてみることにした。
「魔王は健在かにゃ?」
「子供っ魔王って絵本の世界じゃないんだから、幼稚な質問せずもっと大人の質問しないか!」
「にゃっ……」
顔を真っ赤にした鷹村警部が俺にツッコミ入れてからテーブルを叩いた。刑事の癖して昼間っから酒呑んでるのかよ……普段真面目なだけに酔うと厄介だな。
さて酔っぱらい刑事は無視して異世界人の解答を待った。するとミルトが目を閉じてから真剣な顔をで話し始めた。
「魔王レクイエムは健在です……ですが、勇者アルベード・ニルフィ率いる勇者チームが魔王軍を追い詰め、空飛ぶ鋼鉄ガレー船に乗って魔王島に攻め込む目前だそうです」
「にゃんと……」
ピンク髪勇者が健在の世界とは思った通り、三百年前の異世界だったな。しかも子孫のちびっ子勇者アシオンが探している空飛ぶ船の話題が出るとは。
「勇者チームについて詳しく聞きたいにゃ」
「えっいいですよ……しかし有名な勇者のこと知らないのですか?」
俺は正直に腕組んで『知らん』と言った。するとミルトは馬鹿にすることなく親切に教えてくれた。
「えっとチームリーダーの勇者アルベードに不老不死の魔法使いドルチェル、不死身の英雄ガルドに大聖女マリオン、豪傑冷静僧侶ガイズ。それと鋼鉄竜ギガントメイルに異世界から来た天使騎士の最強の七人です」
「にゃにっ!」
「どっ、どうしましたかっ?」
「いにゃっにゃんでもにゃい……」
怪しまれないように平静を装ったが、鋼鉄竜に天使騎士ってまさかな……。
俺は後者二人についてもっと詳しく聞いた。
「鋼鉄竜ギガントメイルは伝説の七竜の内の一匹ですよ」
「にゃっ! ちなみにデカいかにゃ?」
「えっ……そりゃもちろん彼は大きいですよ。全身鋼鉄のウロコに覆われ、例え攻撃を受けても傷一つ付かないほど頑丈で、しかも言葉を話す知性がある聖なる竜です」
『にゃんと』まさか過去に来て新たな七竜の情報が聞けるとはな、そうなると邪神が黙っていないよな……まぁ流石に過去の世界にまで出しゃばらないだろう。
「天使騎士の名前は分かるかにゃ?」
「ええ確か……ツインテールの髪型のリリカって言う勇者の奥さんですね……」
「にゃっ……」
ミルトは頭の上で両手でツインテールを握る仕草をして教えてくれた。
しかし天使を妻にするとは怖いモノ知らずの勇者だな。まぁ俺を倒す実力なら天使騎士など従わせるのは容易いと言うことか……。
しかし仮に子供を作っているのなら、その子供の名はもしやだ……。
あとはもう一つこの二人に聞かなくてはいけないことがあった。
「最後に質問していいかにゃ?」
「はい、なんりと」
「パルナとミルトデキてんのかにゃっ?」
「『 えっ…………』」
二人は顔を見合わせ固まった。
「おいコラッ子供っ! なにマセたこと二人に聞いてんだいっ!」
「にゃんっ!」
酔っぱらった鷹村警部がテーブルを叩いて立ちあがった。もうすでに出来あがって業務遂行は無理みたいだな。
まっ、異世界だから仕事関係ないか……。
「ちょっ、ちょっと鷹村警部っ大丈夫すかぁ?」
「なんだ長谷川ぁぁ大丈夫ら、お前ももっと呑むのらヒック……」
「あちゃ〜駄目だこりゃっ……ちょっと失礼しますね」
長谷川警部補は鷹村警部の肩を背負ってベッドルームに運んで行った。やれやれ、厄介なお姉さんがご退場して、俺は内心ホッとしているよ。
さて本題に戻ろう。
俺に聞かれた二人は頬を赤らめモジモジし出した。
「えっと……ぼ、僕らは実は結婚を前提に付き合っていまして……冒険者ギルド本部がある都グランデアにたどり着いたら、し、式をあげると決めました……」
『やはり恋仲の関係か』そう、魔物がはびこる危険な荒野で、二人っきりで冒険しないよな。
しかし確証はまだないけど、この二人が神の血を引く聖女パルムのご先祖さまの可能性大だな。
しかしこうなると、聖女さまとメリーの血のルーツが一気に明らかになりそうだな。
あと因縁のピンク髪勇者と七竜を狙う邪神か……今回も一筋縄では済まなそうだ……。




