サタンちゃまと七斬り様の祟り13
「ところでおみゃえらにゃんで騒いでたのにゃ?」
横溝兄弟を見つけたキッカケが洞窟の奥から聞こえた叫び声だった。でも二人は怪我すらもしていなかったから、アロハシャツ着たチャラい方の横溝弟に聞いてみた。
「ああ……それなら、この洞窟で見つけた第七の祠の中に祀られていたこの刀を見つけたからだ」
「カタニャ……」
横溝弟が鞘付きの日本刀を見せてくれた。装飾が黒い刀でこれと言って特徴がないけど、これが七斬り様の首を斬ったと呼ばれる伝説の刀なのだろか?
「まさかソレにゃ、七斬り様の首を斬ったと呼ばれる刀にゃかにゃ?」
「子供の村の伝説に癖に詳しいな。まぁこの刀が本物か分からねえが、例え偽物でも村人が七斬り様を祀るために使っている刀かもな……」
「そうかにゃ……にゃあその刀はおみゃえが持つと危にゃいからアタチに渡すんにゃ」
そう言って俺は小さな手を横溝弟に差し出した。しかし彼は警戒するように刀を引っ込めた。
「せっかく見つけたのに、なんでお前に渡さなくちゃいけねーの?」
「にゃ……」
そら見ず知らずの子供に刀を渡すわけねーか。そもそも危ないよな。
さてどうしたものか……。
「社長〜!」
「にゃっ!」
途中はぐれた黒鴉が俺の元に駆けつけ、ヒザに手を置いて荒い息を吐いた。
「にゃんにゃっ!?」
「社長っワタシを置いてどこかに行っといて『にゃんにゃ』はそりゃないでしょう」
「にゃ……」
そう文句を言ってから黒鴉はなにか言いたげに、俺に右手を差し出した。
黒鴉はごねてついでにお詫びを要求する子供っぽいところがあるよな。
「にゃっ!」
ペシッ!
「痛っ! 社長なにしますの?」
俺はうんまい棒の代わりにしっぺを、黒鴉の手の平に当ててやった。
手を引っ込めた黒鴉は涙目で俺に抗議した。
「置いて行かれるおみゃえが悪いのにゃ、それより例の兄弟と刀が見つかったにゃ」
「例の兄弟…………」
「尚美っ尚美じゃないか、探してたんだぞっこんなところで尚美っ!」
「なんだテメーー!?」
突然横溝弟が黒鴉の両肩を掴んで『尚美』と聞いてきた。どうやら黒鴉は横溝弟が言う尚美って女に、勘違いするほど似ているらしい。
「なんだアロハ野郎〜〜ワタシは尚美じゃねーし、人違いだ。離せこら……」
「……いやっ尚美だ!」
「尚美尚美うるせーよっ!」
黒鴉が人違いだと否定しているのに横溝弟は尚美と信じて疑わない。ちょっと怖いぞ……。
「……とにかく人違いだから離せよ」
「嫌だっやっと見つけたのにっ嫌だ尚美っ!」
「コイツ……話通じないぞ……コッワ……ケケッ」
いくら人違いだと言っても尚美だと譲らない横溝弟に、あの黒鴉もドン引きだ。
「……社長っ助けてよ……」
「にゃにゃっ♬」
「コラ社長っ笑ってねーで助けろよ!」
「おいっ恒彦っ彼女は尚美ではない。困っているみたいだから離してやれ」
真面目な横溝兄が見かねて弟を止めた。しかし弟の名は恒彦か……前に聞いていた気がしていたけれど、全く興味がないから耳の穴素通りしてたわ。
とにかく何故恒彦が黒鴉と尚美と勘違いしたのか理由を聞いてみないと、誤解は解けないわな。
「おいっ黒鴉っさっきからなにを叫んで……」
「な、尚美っ…………」
「えっ……」
今度はクレナの顔を見た恒彦が尚美と呟いた。しかし俺たちはやっべー奴に絡まれたな。女なら誰でもいいのか尚美と勘違いする共通点はなんだろうな?
「おいっ恒彦っ彼女たちが困っているだろう。良く見ろっ尚美とは別人だろう」
「……いや、尚美だ……不思議なことに尚美が二人いる……」
「にゃっ……」
『本当に大丈夫か横溝弟……』チャラい奴だと思って油断してたが、ちょっとヤバイ奴だ。
「おいっしっかりしろっ! 確かに行方不明になったお前の彼女尚美は彼女たちのように長い黒髪だが、顔が全然違うだろっ!」
「えっ! はっ、確かに違う……じゃっ、じゃあっ去年七斬り村の祭りを見に一人で行った尚美は一体どこに行ったんだあぁっ!?」
錯乱気味な恒彦と兄の会話から大体謎が解けた。恐らく想像だけど、恒彦の彼女の黒髪ロングの尚美が去年の今頃、一人で七斬り村の祭りを観に行って行方不明になっていた。
「おいっ恒彦っ尚美を探してるのかにゃ?」
このまま様子見していてもラチが開かないので、俺が声を掛けてみた。
「えっ尚美……」
すると振り返った恒彦が目を丸くして俺の顔を見て呟いた。いや、尚美って大人だろ? どうしたらちびっ子の俺と勘違いするんだよ……。
『とにかく大丈夫かコイツ……』この先大量殺人を起こすらしいし、マジで危ない奴かもな……。
「いい加減にしろよアロハ野郎っ! チビな社長がお前の彼女と勘違いするほど似てるかよケケッ♬」
チビは余計だよ黒鴉。
「そんな……尚美じゃないのか……どこ行ったんだナオミィィィィィィィィィィィィィィッ!」
「にゃっ!」
彼女を探す必死な気持ちは分かるが、それでも激しくイッちゃってんな恒彦……。
洞窟の岩に腰を掛けた恒彦が少し落ちついてから尚美について話し始めた。
「奇祭が好きな俺の彼女尚美は去年この村の祭りを見に行って以来行方不明なんだ……ああっ! こんなことになるなら彼女を止めておけば良かったんだっ…………」
よほど後悔しているのか恒彦はそう叫んでから両手で頭を抱えた。
「しかしにゃ、黒鴉とクレナに勘違いするほど尚美って彼女は似ているかにゃ?」
「………確かに長い黒髪で後ろ姿は良く似ているが……顔はちょっと……」
恒彦は微妙な顔してしきりに首を捻った。
「ちょっとってにゃんにゃ……」
「ああ、尚美はアンタらみたいにまー美人じゃない……」
「にゃっ……」
そりゃまぁ日本全国の彼女が皆美人と言うわけにもいかないよな。それじゃなんで二人を尚美と勘違いした?
暗くて顔が見えなかったのか、それとも勘違いした振りの痴漢行為かはっきりしろ恒彦。
「にゃんか特徴はにゃいのか?」
「特徴と言ったら……その日尚美は俺がプレゼントした青いイルカのイヤリングを耳に付けて村に向かって行ったな……」
特徴がイルカのイヤリングと言われても困るぞ。
「おみゃえの事情は分かったにゃが、あまり帰りが遅いと村人に怪しまれるにゃ」
「……もう少しだけ尚美を探すから先に帰っていてくれないか?」
「そいつは構わにゃいが、見つけた刀はアブにゃいからアタチが預かってもいいかにゃ?」
「別に構わねぇよ」
意外と素直に伝説の刀を渡してくれたな。受け取った刀をモスマンに渡した。
「サタン様……どうして俺に……」
「おみゃえの胃袋倉庫に仕舞っとくにゃ」
「……まさかその刀を飲み込めと……」
「そうにゃにゃにゃにゃっ♬」
「こっ! …………分かりましたサタン様……」
刀を受け取ったモスマンが渋々えづきながら刀を飲み込んだ。コレで村人に見つからないし、恒彦が祭りの夜に凶行に出ることも防いだな……。
んで、この洞窟のどこかに、生贄にされた旅人の首の隠し場所が隠されているらしい。それで横溝兄弟はそれを探してから村長の屋敷に戻ると言った。
とりあえず任務終了した俺たちは横溝兄弟を残して洞窟をあとにした。




