サタンちゃまと七斬り様の祟り12
横溝のおっさんの匂いを頼りに片耳ブタは横溝兄弟が通ったであろう山道を俺たちを誘導した。
『ブイブイ……』
「フランスではトリュフ採りにブタを使うと聞いたが、しかしこの黒ブタは見つけられるのか?」
イマイチ信用してないのか犬飼が俺に聞いてきた。
「すくにゃくとも片耳ブタは、この黒鴉よりは文句一つ言わず働いてくれるにゃ」
「ちょっと社長っ聞き捨てなりませんね。ワタシだって忠義を尽くしてますんで、今の言葉取り消せよ。いや、取り消してくださいよケケッ♬」
「にゃっ……」
俺を背負い中の黒鴉が俺に文句を言ってから腹いせに降ろし笑った。
「こにゃっ!」
「社長がワタシのこと悪く言うからですよ。罰としてこれからは自分の足で歩いてくださいね」
怒った振りして結局黒鴉は、おんぶから地獄から解放されたいだけだな。
しかしそれは命令違反だ。
「抱っこ!」
「うわっと! し、社長っ急に抱きつかないでくださいよっ」
俺がジャンプして黒鴉の胸に飛び込んでしがみつくと、横で見ていた犬飼が『抱っこちゃん人形みたいだなお前?』と言った。
「にゃんにゃ抱っこちゃん人形って……」
「1960年代に大流行した。腕に抱っこするように取り付けることが出来るビニール製の人形ですよ」
時道が解説してくれた。しかし詳しいな。
「おみゃえいつ時代の出身にゃ?」
「……それは言えません」
「にゃっ……」
『何故出身時代を隠すタイムトラベラー?』んとアレか? 過去を語りたくてうずうずするが、そこは我慢していつ言うかニヤニヤしてる厨二病か?
「社長っ!」
「にゃっ……?」
「抱っこちゃんかニャンコちゃんかどっちでも言いすけど、抱っこは勘弁してくださいよ」
「こにゃっ!」
黒鴉は俺を引き剥がすと片耳ブタの背中に乗せた。ギリ乗れるけど寄りによって目つきの悪い方に乗せるなよ……。
『ブーーッ!』
「にゃにゃっ!」
興奮した悪片耳ブタが俺を乗せたまま急に走り出した。
「ちょっと止まるにゃっ!」
『ブーーッ!』
だけど止まらない。俺を乗せた悪片耳ブタは山道を走り続け、しばらくして止まった。
「もうにゃんにゃ……」
悪片耳ブタの背中から降りた俺は周りを見るとどうやら仲間たちとはぐれてしまったみたいだ。
真っ暗な夜の山中に取り残された俺は少々不安に……なるハズがない。
だって俺には頼もしい部下をいつでも召喚出来るからな。
「にゃにゃにゃっ♬」
『主〜〜!』
『ブーーッ!」
一人笑っていると俺のあとを追って来たワン☆ころとノーマル片耳ブタが追いついて止まった。
「おみゃえらか」
『急に走り出すから主〜』
「悪かったにゃ」
心配させたお詫びにポッケからスティックペットフードのちゅーむを出して、三匹にあげた。
とはいえマスコット三匹ではチト心細い。だから俺はクレナとロウランを召喚した。
「サタン様〜〜っ良くぞお呼びでっ!」
俺に指名されて感激したクレナが抱きついてきた。『気持ちは分かるが季節を考えろ』鎧姿で抱かれたら暑い。
「あらあら〜……」
「にゃんにゃロウラン……」
「サタン様まさか迷子に?」
「…………かも知れにゃいが……」
「ふふっ♬ こらっ! 素直じゃないんだからっえいっ!」
「痛っにゃにすんにゃロウラン?」
ニコニコしながらしゃがんだロウランが俺にデコピンした。
許すが主人に対してあまりにも大胆な行動。
俺だからいいけど短気な主だとその場で切り捨てられるぞ。
ロウランはどこまで主人に対し無礼講出来るか試している節があるな……。
「冗談はさておきサタン様どうやら探している兄弟はこの洞窟にいるらしいですわね」
『ブイッ?』
ロウランが片耳ブタを持ちあげると俺に教えた。
「おみゃえ分かのかにゃ?」
「いえ……私は分かりませんが、この豚さんが洞窟内にいると申してます……」
『ブイッ!』
『にゃっ……』確かにロウランに抱っこされたつぶらな瞳の片耳ブタが洞窟に右前足を向けていた。
これなら俺でも片耳ブタがなにを言ってるのか分かるぞ。
「しかし洞窟は真っ暗で明かりがないと厳しいですわね」
「それにゃらアイツを出すしかにゃいにゃ」
「……アイツってどなたでしょうか……」
アイツと聞いてロウランが怪訝な表情を浮かべた。とりあえず俺は悪魔ファイルを開いてアイツを召喚した。
『ずいぶんとご無沙汰じゃねーすかサタン様……』
呼んだのは巨大まん丸目玉のモスマンだ。召喚早々俺と目が合うと嫌味を言ってきた。
まぁ呼んだのは何時ぶりだか忘れるほどだな。
「にゃっ!」
とりあえず右手をあげてモスマンに挨拶した。
するとアイツは無い首を傾げる素振りでため息を吐いた。
『はぁ〜サタン様……久しぶりの出番だと言うのに軽い挨拶ですね』
「にゃあそうグチんにゃよ。それよりアタチはおみゃえに用があって呼んだんにゃっ」
『そうですかい。それにしても……あの二人なんで俺に距離置いてんだぁ?』
苛立ちながらモスマンがそう言ってうしろを振り向くと5メートル先に、クレナとロウランが身を寄せ合ってモスマンを怯えていた。
「……目玉お化け怖いっ……」
『なんだとっクレナッ、もう一度言ってみろよ?』
「ひいっ!」
『こっ………………!』
ブチキレたモスマンの白い体毛が真っ赤に変色して目玉がサーチライトのように光った。
「きゃっ眩しっ!」
「め、目が潰れますわっ!」
光を浴びたクレナとロウランはたまらず目を手で覆った。
まぁ茶番はそれぐらいにして強力な光量を得た俺たちは洞窟に入ることにした。
と、その前にはぐれると厄介なので片耳ブタ二匹をファイルに仕舞った。
「え〜サタン様っブタさん仕舞っちゃうの?」
可愛い物好きなクレナが俺に名残惜しそうに聞いてきた。
「にゃんにゃアタチだけじゃ不満かにゃ?」
「そ、それはないですけどぉ〜ブタさん抱っこして洞窟入りたかったです……」
「そんにゃらアタチを抱っこするかにゃ?」
「ええっよろしいんですかっ!?」
「にゃむ〜〜…………」
冗談で言ったのにまさか間に受けるとはな……当然抱っこは遠慮した。
さて、ワン☆ころと合体した俺は暗闇も効く猫の目を手に入れ光を頼らずとも先頭を歩いた。
洞窟内は広大でしかも道が分かれ入り組んでいた。しかも途中から謎の祠があって祀ってあった。
「もしやこの洞窟に七斬りさまの首を跳ねた刀が隠してあるのかにゃ?」
「『うおーーっ!!』」
「にゃんにゃっ!?」
突如洞窟の奥から男の叫び声が聞こえた。
「サタン様っ!」
警戒して剣の鞘に手を掛けたクレナが俺を呼んだ。
「にゃっ、声がした方に行ってみるにゃ」
「そうですね。しかしお気をつけてください。モンスターが人を襲っているかも知れませんから」
「うんにゃっ、警戒は怠るにゃよ」
クレナとロウランに挟まれ守られた俺が声がした方に行くと、松明を持った見知らぬ若者二人と目が合った。
「…………でっ出たーーオバケッ!」
若者二人がモスマンを見るなり指差して叫んだ。
「ちょっと待つにゃっコイツは味方にゃ」
「……はあっ? 一体なに言ってんだこの子供は……」
「貴様らっサタン様に無礼だろっ!?」
「『ひいっ!?』」
鞘から剣を引き抜いたクレナが若者二人に切っ先を向けた。すると二人は抱き合い怯えた。
そりゃ俺たちを初めて見る人間は怯えるのが当然。とはいえこのままでは話が進まないので、試しに聞いてみた。
「おみゃえら横溝兄弟かにゃ?」
「えっ…………なんで見ず知らずの化け物……いや、アンタらが僕らのことを……」
アロハシャツにサングラスを額に乗せ黒髪サイドバック刈りあげのあんちゃんが目をキョトンとして聞いてきた。
なんだかこの時代で流行った髪型みたいだな……。
もう一人はズボンにシャツインした黒縁眼鏡の真面目そうな男だ。
恐らく依頼者の過去の横溝兄に違いない。
「おみゃえは横溝弟と兄でいいにゃ?」
「なんで俺たちのことを知ってるんだ? まさか妙な格好したお前らも太陽族か?」
「にゃっ……」
いつの話だよとツッコミを入れたくなったが、今が太陽族とやらが流行っている現在進行形の時代なんだよな……。
「そうにゃ……」
「ちょっとサタン様っ!」
ここは太陽族に合わせるしかしあるまい……お洒落なロウランが凄く嫌そうに訴えてきたが無視だ。
『許せ』俺たち今日から太陽族だ。




