サタンちゃまと七斬り様の祟り6
山道を歩いてからすぐに、先頭を歩く鷹村警部が立ち止まって振り返った。表情が険しくなにか危険を察知したみたいだ。
「お前らこれを見ろ!」
古びた木製看板に指を差した。しかし職業柄か、一々命令口調だな……。
それはいいとして、看板には熊の絵とクマ注意とペンキで書いてあった。
「にゃんにゃ今更クマ位……」
「おいっちびっ子。聞き捨てならんな……」
「にゃっ……」
俺のつぶやきを耳に入れた鷹村警部が注意したのに気に食わなかったのか絡んできた。
『めんどくさい』俺がなにかと可愛いせいか、良く絡まれるのだ。
「お前クマを舐めるなよ」
「知ってるにゃ本州に生息する体毛が黒で首元に三日月模様の白い毛が特徴の1.5メートルほどの小型クマにゃ」
「ほう〜未来人の癖に良く知ってるじゃないかしかしだ……小型だからと言ってツキノワグマを舐めるんじゃないよ」
「にゃっ」
眼鏡のレンズを光らせた鷹村警部が俺の肩を掴んだ。
「これまでこのクマに人が襲われ死亡例が多数あるんだ。だからツキノワグマを舐めんじゃないよ!」
『だから知ってるけど』ヤケに偉そうだな……。
「ちょっと待ってください鷹村警部。確か宮崎県を含む九州ではツキノワグマの目撃報告が途絶えこの地域では絶滅したと言われてます。だから恐らく昔生息していた時の注意看板でしょうね」
時道が詳しく説明してくれた。だから看板がヤケに古かったのか。なるほど、確かに九州ではツキノワグマが生息しないと聞いたことがあるな。
しかし時道は俺と同じく物知りだな。
「へ〜この世界のクマってギガントベアーと比べて強いの?」
メリーが時道に質問した。しかし『どっちが強い?』系の幼稚園児が親に良くする稚拙な質問だな。
で、ギガントベアーって聞いたことないけどアレだろ? 多分異世界のモンスター名だな。
時道は口元に指を当てて真面目に考えていた。
「……それは分かりませんが、そのギガントベアーと言うのはどのような特徴を持っているのですか?」
「えっとね、岩みたいにスンゴク大きくて、真っ赤な毛色で頭にカッターが生えてて、背中にトゲトゲ生えてるクマ型魔物よ」
メリーによる大雑把な説明。俺も初めて聞くがクマと言うより怪獣だな。
すると聞いていた時道が山道の先を指差した。
「…………なるほど。ギガントベアーとはアレのことでしょうか?」
「にゃにっ!?」
5メートル先にメリーが言った通りのクマが唸りながらこちらを睨んでいた。
『グルルルルゥゥゥゥ……』
「なんだあのクマはっ!?」
「さがってください鷹村さん。アレは私たちの世界の危険な魔物です」
「なにっ!」
ヒューイが鷹村警部をさがらせ、代わりに仲間のビビットとザレオンが彼を挟むように前に立った。
久しぶりに冒険らしくなってきたな。
「さてと、丁度身体が鈍っていたところでしてね。ビビット景気良くやっちゃってくれ」
「了解隊長っ……ファイヤーボールレベル5っ!」
ビビットの魔法の杖から特大火球が発生してギガントベアー目掛けてぶつけた。
『ゴアアアアッ!?』
「ハアアッハッ!」
すかさずザレオンがクマ目掛けて駆け出し長剣を抜き横っ腹を斬った。だけどまだ致命傷に至らず反撃を警戒して離脱した。
「あとは私に任せろっ!」
片手で剣を握ったヒューイが二人をさがらせトドメを自分が担当するつもりだ。
『ゴアアアアッ!』
先に仕掛けたのがギガントベアーで背中に生えたトゲを複数本発射。
「なんのっ!」
キンキンキンカンッ!
ヒューイは剣でトゲを全て弾き返した。
「クウゥゥーグルッ!」
最後のあがきかギガントベアーが首を振ると、額に生えたブーメラン状の角が分離して、旋回しながらヒューイに向け飛ばした。
まんまブーメランだな。
「おっと!」
間一髪ヒューイが垂直ジャンプしてブーメランをかわしギガントベアー目掛けて急接近して対峙した。
『グルルルルゥゥ……』
「へいへいっ手ごたえのある魔物だ。だが私が相手で運が悪かったな」
『ゴアッ!』
「オット!」
ギガントベアーが振りおろした熊の爪をかわすとお返しに右腕を剣で両断するヒューイ。
『ゴアアアアッ!?』
「フッ、今楽にしてやるサ」
ヒューイはギガントベアーの心臓狙って胸部を剣で貫いた。
『グゴガ…………』
ズズズーー〜ーーン!!
ギガントベアーがうつ伏せに倒れ動かなくなった。
しばらく待ってからヒューイがベアーの側に寄って確認すると、振り向いてから手を振った。
「仕留めたからもう大丈夫だ」
「流石ねヒューイ。あたしが出る幕じゃなかったわね」
メリーが偉そうに言った。
内心クマにビビっていた癖にな。
「へ〜〜冒険者ってのは伊達じゃねぇみたいだな」
感心した犬飼がヒューイに話し掛けた。
「まぁねでも、この程度は序の口さ。俺たちが倒さなくてはいけないのは魔王とその幹部達だ。その道は険しく平たんじゃねぇさ……」
「分かるぜその気持ち。気にいったぜアンタ飲むか?」
ヒューイと握手した犬飼がウイスキーが入ったジュラルミンボトルを差し出した。
「おうっ! ……………んぐっ…………こりゃ強い酒だなぁ〜プッハ! しかし甘い酒だ」
「だろっ?」
良く他人が口をつけた酒呑めるな……潔癖症の俺だと絶対無理だ。とは言え酒は呑めないから俺の場合だったら乳酸菌飲料のレクルトだな。
「…………社長っ」
「にゃっ! にゃんだ急に黒鴉?」
「ニャンだじゃないですよ〜、社長おんぶして山道歩いたら滅茶苦茶疲れましたよワタシ。そろそろ休憩しません?」
もうヘタレたのか俺を背負ったまま黒鴉が尻もちついた。『このヤロー……』強制的に俺を降ろしたな。
しかしまだ入り口付近だ。もう少し頑張って先に進んだ方がいいな。
仕方なく俺は自分の足で山道を歩くことにした。
それから1時間半歩いてから休憩出来る広い空間が現れた。流石に疲れた俺が先頭を歩く鷹村警部を止めた。
「ちょっとストップにゃ」
「なんだちびっ子……」
「ちょっと休憩しにゃいか?」
「休憩か……しかしゆっくりしていたら日が暮れて気温が急激に冷えて危険だ」
そういやこの時代は二月の真冬だったな。通りで肌寒いと思ってた。
だが大丈夫だ。
「にゃははっ♬ 日が暮れたにゃら野宿すればいいにゃ」
「……簡単に言ってくれるなちびっ子。野宿出来るテントが有ればいいが、生憎我々は手ぶらだ」
「だから大丈夫だと言ったにゃ」
「なんだと……そこまで自信気に言うなら、その根拠を見せてみろよ」
「にゃっ!」
俺は右手をあげて返事した。
そして皆が見ている中、胸元に張り付いているガマサイフを剥がして開けた場所に投げつけた。
「ガマサイフッハウスにゃっ!」
『ゲコッ!』
ボンッ!
「なっ!?」
一軒家に変化したガマサイフを見て鷹村警部が口をあんぐり開けて驚いた。
「な、なんでカエルが家になった?」
「にゃっ……ゆすんにゃっ! 仕組みは分からにゃいけどとにかくそうゆーモノにゃっ!」
「…………納得いかないわね……どうなってんだ貴様ら未来人は非常識だ……」
呆れるように言った鷹村警部は腕を組んだ。
「では社長っ〜ご褒美のグルメガチャを〜〜」
「にゃっ……」
「ケケッ♬」
目を細めて笑う黒鴉が、手揉みしながら俺にガチャをせがんで来た。
まだガマハウスの説明が済んでないのに気の早い奴だ。まぁ腹が減ったし面倒だからガチャを始めよう。
「ステータスオープンにゃっ!」
「『!!』」
唐突に両手をあげた俺が叫ぶと、時道たちが一斉に振り向いて『なにごとかと』注目した。
『そら驚くだろう』平成の世にステータスオープンなんて叫ぶ奴は頭のネジが吹っ飛んだ変人扱いだ。
だけどガチャスキルを発動してそれを見れば俺の評価が爆あがりだ。
次回グルメガチャとガマハウスで一泊。




