サタンちゃまと七斬り様の祟り5
再会するまで置いて行かれるかとヒヤヒヤしていたが、待ち合わせ場所の宮崎駅前で時道たちと合流した。
「1時間も待たせおって貴様まらあと数分遅れたら置いて行くところだったぞ」
一人不機嫌な鷹村警部が腕時計に指差しながら言ってきた。
「しかし、相変わらず妙な格好しおって、少しはこの時代の服装に合わせたらどうだ?」
「うるちゃいにゃあ」
「なんだとっ子供!」
「にゃにゃっ♬ おみゃえらが車で宮崎まで行けと言うから服買ってるヒマにゃんかにゃかったにゃ」
「子供が出しゃばってきおって……まぁいい、お前ら揃ってるか?」
鷹村警部が点呼すると言ったので俺たちはエアカーから出た。
「イレギュラーがぞろぞろと出おって……まず忌々しいちびっ子に、赤毛のツインテールにたこ焼き屋天使に、騎士の男に魔法使いと金髪女騎士か……これで最後か?」
『いや、ミーで最後だ』
上空からアルマーの声が響いて皆が顔をあげた。そういや友のこと忘れてたな……。
飛行形態のアルマーが駅前上空を旋回していた。
「なっ!」
空飛ぶアルマーに驚きアングリと口を開く鷹村警部。
「なんなんだあの小型飛行機は……しかも喋っているなんてまさかラジコンか?」
『ミーはラジコンでもドローンでもないぞ』
「ドローン?」
鷹村警部はドローンと聞いて首をかしげた。それもそのはず2003年この時代はまだドローンは一般化してないはずだからな。
「とにかく勝手に空飛ぶんじゃない!」
『了解した。さらにスティルスモードになって身を隠すとしよう』
「なにっ!?」
アルマーの機体が端から透明に変化してすっかり見えなくなった。
「奴はどこに消えた?」
思わず取り出した拳銃を握った鷹村警部が周囲を見渡し消えたアルマーを探した。
しかし見つからずあきらめて拳銃を懐に仕舞った。いやまぁ俺ならアルマーがどこにいるか分かるよ。
鷹村警部の真正面でタンクモードになってキャノンを向け鎮座してるよ。
「ずいぶん賑やかだな」
朝からウイスキー片手に犬飼が俺たちに声を掛けて来た。その後ろに時空師時道とムー大陸の姫王リオンがたい焼き袋を左腕で抱えて立っていた。
「…………」
するとたい焼き姫が俺に向かって歩いて来た。
「にゃっ、にゃんにゃ……」
しかしたい焼き姫は戸惑う俺を素通りしてエイトさんにたい焼きを差し出した。
大人気な俺を無視するとはいい度胸だ。しかし狙いはまさか……。
「お前のたこ焼きと妾が買って来た宮崎産のたい焼きと交換でどうじゃ?」
「…………」
『宮崎産って産地にこだわる姫王だ』そんな大して味は変わらんだろ。
まぁ、マニアは違いとか分かるんだろ。
「ありがとうなのらだが、ちょっと待つのら」
たい焼きを受け取ったエイトさんはキッチンカーに戻って急遽たこ焼きを焼いて戻って来た。
「エイト特製焼きたてたこ焼きなのら」
「おおっこれが天使のたこ焼きか! ありがたくいただくのじゃ」
交換し合った二人はその場で食べ始めた。
「お前ら時間がないのにいい加減にせんかっ!」
イライラしていた鷹村警部が怒鳴った。
「そんなに急いでどうするんだ?」
ヒューイが鷹村警部に聞いた。
「あのなっ、今から向かう七斬り集落跡がある山脈入り口まで駅から車で2時間。そこから歩いて3時間山を登らないとたどり着けない秘境中の秘境だ」
『ちびっ子には酷なルートだな』でも大丈夫。最初からクレナを呼んでおんぶしてもらうから。
「へー秘境って面白そうじゃないの」
メリーが笑顔で言った。あのワガママな女が正気とは思えんが、秘境と聞いて冒険者の血が騒いだのだろう。
「それじゃ私らはタクシーで集落跡に向かうから、お前たちはたこ焼きカーで後ろについて来い」
鷹村警部があらかじめ拾っておいたタクシー二台を呼んで彼女と長谷川警部補と横溝が一台目に乗り込み、二台目に時道、リオン、犬飼が乗り込み出発した。
そのあと俺たちが乗るたこ焼きエアカーがうしろについて発車させた。
□ □ □
車を走らせること2時間。周りは山ばかりの建物がない鬱蒼とした景色になった。
当然スーパー、コンビニがなく不便そうで、当時はどうやって生活していたのか不思議だった。
とあるトンネルを抜け鉄橋を渡ってから先頭のタクシーが停まった。
どうやら車が通れる道がここまでのようで先は道幅が狭い悪路だ。
とりあえず俺たちは車から出て先頭タクシーの前に向かった。鷹村警部とタクシーの運転手がなにやら会話をしていた。
「刑事さん本当に七斬り集落跡に向かうつもりですか? 言っておきますが、そこは地元じゃ有名な心霊スポットですよ。悪いことは言わない。今から引き返した方が身のためですよ」
「だろうな……村人が虐殺された場所だ。そんな噂がたってもおかしくない。しかし私は心霊など非科学的なモノは一切信じないから大丈夫だ」
『良く俺たちの前でそんなこと言えるな』散々不思議体験したろうに、それでも見てないフリして頑なに信じない頭の硬い女だ。
だったら嫌でも不思議体験させてやる。
タクシー二台がUターンして走り去って行くのを見計らって俺は両手をあげた。
「ステータスオープンにゃっ!」
「なにっ貴様っ!?」
突然大声出した俺に鷹村警部がいち早く反応した。ちょっとメリーより早いな。
「おいっちびっ子! なんだこの立体文字は?」
「にゃにゃっ♬ これはアタチのステータス表示画面にゃっ」
「だからなんだっステータスって」
「おっ! ちびっ子のレベル237って中々だな……」
ステータス画面を覗き込んだ犬飼が興味深そうに見ながらアゴを手で摩った。
「人間の最高レベルは精々100よ。で、このちびっ子は人間じゃないからまだまだレベルがあがる化け物よ」
「にゃっ!」
化け物は言い過ぎだメリー。
「なるほど……その不可思議な現象は未来から来たと言うだけのことがあるな……で、お前何者だ?」
「アタチか……アタチは魔界で百万の軍勢を統べる悪魔王サタンにゃのにゃにゃははっ♬」
「へ〜……お前世界征服を企む悪い子供か?」
犬飼の眼の色が変わって、肩に掛けていた長モノに触った。なんだか嫌な予感がして俺は慌てて両手をワチャワチャ振った。
気のいい奴を怒らせるほど恐ろしいことはないからな。
「にゃっ…………む、昔はだったにゃ、今は反省して世界を守るために魔王軍と戦ってるにゃ」
「そうか、反省することはいいことだ」
「にゃっ、勝手に頭撫でんにゃっ!」
気を取り直した俺は犬飼たちの前で、いつもの黒騎士三人娘を召喚させて見せた。
「おいっそこの黒ずくめコスプレ三人っどこから現れたっ!?」
鷹村警部が三人娘に指差して叫んだ。
「社長っまたお呼びですかぁ?」
「サタン様〜どうして先日私を呼ばなかったのです?」
「あらら〜まさかの平成とは懐かしい」
「おいっ聞いてるのかっ貴様らっ!」
鷹村警部を無視する三人娘が俺を囲んだ。
「ところで社長っ魔物はいないみたいですがぁ〜なに用でワタシを呼びましたか?」
「ふむ、こんな山中に……」
「あらっ…………私辞退しますわ」
まだ一言も言ってないのにロウランが両手をあげて辞退表明した。
『流石カンが鋭い女だな』だけど一人だけ楽にはさせないぞ。
「おみゃえら三人でジャンケンにゃ」
「なんでよ急にシャッチョ!」
「そうですよ。黒鴉とジャンケンして負けたらどうなるんですかサタン様ぁ?」
黒鴉とクレナが俺に聞いて来た。二人とも違う意味で焦ってるな。
「にゃにゃっ♬ 負けた方が今から歩いて3時間掛かる七斬り集落跡地までアタチをおんぶして向かうにゃ」
「……でしたらジャンケンで決めなくても私がサタン様をおんぶしますっ!」
そう言ってクレナが右手をあげた。
「そうですよ社長っクレナがやりたいと言うならジャンケンで決めずとも……」
「駄目にゃっ二人でジャンケンで負けた方がアタチをおんぶして山登るにゃ」
「こっ………………こんのっサタンちゃまいや、サタン様コラーッケケッ♬」
怒っているようで相変わらず黒鴉はノリノリだな。
で、結局黒鴉がジャンケンで負けてまた俺をおんぶすることになった。
「クウゥゥーマジかぁぁぁぁぁ……社長をおんぶしながら三時間登山なんてキツイすよ」
右手で目を覆った黒鴉がショックでヒザを土につけた。
「にゃにゃっ頑張れ黒鴉にゃっ♬」
「しゃっ、社長っ笑っている場合じゃないっすよ……」
その後渋々俺を背負った黒鴉。
「さて行きましょうか」
まるで村までの道を知ってるかのように先頭の時道が歩き出した。




