サタンちゃまと七斬り様の祟り4 夜のパーキングエリア
夕方4時から出発してから6時間が経過して時計の針が夜10時を指し示した。
ぶっ通しで運転しているエイトさんは眠そうな目でそろそろ限界にきていた。そこで大阪のパーキングエリアに寄って1時間程仮眠を取ることになった。
まぁこれで到着が大幅に遅れ、あのガミガミ女刑事が文句を言って来そうだけど、事故起こすよりかは100倍マシだ。
パーキングエリアの広大な駐車場にエアカーを停め。俺はお菓子を買いに外に出ると、メリーたちがぞろぞろついて来た。
「ちょっと待つにゃっ!」
あることに気づいた俺は慌てて振り向き手を左右にワチャワチャ振って皆を止めた。
「なによちびっ子」
腰に手を当てたメリーが不満そうに聞いた。
「この格好で外に出歩いちゃだめにゃっ!」
「いつもならこの格好して変な目で見られたことなんてなかったのになんでよ……」
『なんでって』メリーたちはまだこの状況が理解していないみたいだ。
「あのにゃ〜、この時代は異世界人がまだ認知されていない300年前の過去の世界にゃのにゃ」
「……だから、それがどうしたの?」
「……にゃむ〜〜周りを見て見ろにゃっ、この時代に冒険者の格好した人間がいにゃいだろ? だからこの時代の人間から見たら、アタチたちはおかしな格好した人間に見えて警察に通報されたら終わりにゃのら」
猫口調で長々と説得するのは流石にちびっ子の身体では疲れるな。
「だったらアンタもおかしな格好してるから人のこと言えないわよね?」
「にゃっ、それは違うにゃっ! ドレスはこの時代にある。確かにパーティー以外着ることはにゃいけど、アタチは子供にゃから怪しまれることはにゃいにゃ!」
「……確かにパーティー帰りの子供ならドレス姿ならおかしくないわね……だったらアンタ一人で美味しい食べ物買って来てよ」
「分かったにゃっ」
背を向けた俺が一人売店に向かおうとすると、エイトさんが呼び止めた。
「ちょっと待つのら……」
「にゃんにゃ天使は寝とけにゃ」
「……そうはいかない。食べ物買いに行くにしてもお金は持っているのら?」
「にゃめんにゃよっ、お金にゃら持ってるにゃ」
俺は胸元に張り付いているガマハウスの口から札束を取り出して見せた。
するとエイトさんの眠そうな瞳が曇った。
「そのお札はいつの時代のら……」
「そにゃあ、元いた時代の……」
「この時代には存在しないお金だね」
「にゃんと……」
まだ存在しない未来のお金をこの時代に店員に渡してもおもちゃにしか見えないし、下手するとニセ札呼ばわりされて警察が呼ばれちゃうかもな。
「これじゃにゃにも買えにゃいのにゃっ」
「……心配ないのら」
エイトさんは俺の肩に触れ慰めた。
「にゃんでにゃっ?」
「実は出発前に時道にこの先困らないように、この時代のお金を渡されたのら」
「にゃんと……」
エイトさんの右手には10万ほどの札束が握られていた。
「彼のおかげで高速道路を使えたのら」
「アイツ気が効くにゃ」
「……再会したら礼をちゃんと言うのら」
「馬鹿にするにゃっ、言われにゃくても礼位言うにゃ」
それから俺とエイトさんで売店に向かった。一応逃げないように監視の名目らしいけど、こんな夜中に子供一人買いに行かせるのは流石に心配だかららしい。
まぁ万が一人さらいに遭っても、得意の頭突きか部下を召喚して危機を切り抜けるけどな。
で買って来たのは、大阪だけあってたこ焼きとお好み焼きに、ポーキー、ポテチチップやプリンなどのお菓子と弁当だな。
「へ〜こりゃまたいい匂いじゃないか」
早速腕組みしたヒューイが覗き込み匂いを嗅いだ。
「この時代の人間が作った貴重な料理にゃ、好きなの選んで食えにゃ」
「現地人による手作り料理か、それは貴重だな。だったら皆んなで仲良く分けて食べよう」
「うむ、私はこの時代のたこ焼きに興味がある。どれ早速……はむっ………………むっ!」
魔法使いのビビットさんがたこ焼きに爪楊枝を刺して口に入れた。すると目を丸くした。
「んむむむっ!!」
「どうしたビビット!? まさか毒かっ?」
隣に座っていた金髪女騎士ザレオンが心配してビビットの背中を叩いた。
「むぐぐっ違う……だが凄く熱いから一口は危険だ」
たこ焼きあるあるだな。まぁそんなことだと思ったけど、目を点にしたザレオンはビビットに『大袈裟過ぎるぞ。心配かけよって』と言った。
「ははっ、いやぁしかし、こんな夜中でしかも狭い車内で皆んなと食事するのは楽しいなぁ〜」
元の時代に帰れるか保証がないのにヒューイはずいぶん楽しそうだ。
『ま、それもそうだな』落ち込んでるより今楽しんだ方がラクだな。
それに帰れるアテは少なくとも二つある。一つは過去未来に人を連れて行ける特殊能力持ちの時道と知り合えたことと、俺の部下のフェミニムは時を止める能力持ちだ。だからもしかしてタイムスリップ能力も新たに身につけているかも知れない。
あと三つ目があったな。
それは俺たちを過去に飛ばした張本人の魔王軍幹部ラプソディーを捕まえて、脅すなりして元の世界に帰らせる方法だ。
だから帰る選択肢が三つもあって余裕だな。
「にゃにゃっ楽しいにゃ〜♬」
「なによちびっ子。こんな非常時に笑ってずいぶん余裕ね……」
「にゃにゃっ♬ ちゃんと元の世界に帰れるからにゃ今は楽しむ方がいいにゃ」
「確かにそうね……それじゃあお菓子食べ……あっ!」
「どうしたにゃメリー?」
「トイレはどーすんの? まさか我慢しろと言わないよね?」
トイレ問題はまさかの盲点だった。再出発する前に気づいて良かったよ。
さてどうやってメリーたちをパーキングのトイレに連れて行くか……そこで俺はあることを閃いた。
「透明になれるモスマンの胃袋の中に身を隠してトイレに向かうのはどうにゃ?」
「ぜったい嫌よ!」
「にゃむ〜」
第一案は拒否された。
仕方ないのでガマハウスを駐車場に建てて用を足す第二案を提案した。少々怪しまれそうだが闇夜に紛れて以外と気づかれないかもな。
こうして1時間休憩した俺たちは再び出発し、休憩時間を入れて17時間ほど掛けて長崎駅に辿り着いた。
予定より遅れたけど、果たして時道たちは待っていてくれているだろうか?
もしも彼らが怒って先に行ってしまったら、俺たちは下手すると未来に帰る手段を一つ無くすことになる……。




