サタンちゃまと七斬り様の祟り3
犬飼健介と言う爽やか長身イケメンはどこかで見た気がするが、欠けたパズルのピースのように俺の記憶から抜けていた。
なんだか犬飼を見ると妙な怒りが湧いてくるのは何故だろう……。
まぁ忘れたのは仕方ないので知らないことにする。
「しかしなんだこの化け物共はまさか新手の無魂兵か?」
「それは違います。どうやら異世界から来た魔王軍の魔物だそうです」
時道が犬飼に説明した。
「伊勢界ってなんだよ……まさか群馬の伊勢崎市のことじゃねーんだろな?」
「違います」
『にゃっ!』時道は真顔で真面目に否定するな。せめてツッコミを入れろよ。一方犬飼は男だけあって風俗については詳しいな。
しかし無魂兵とはなんだろうか……。
「無駄話しはあとだっ、市民に被害が出る前に魔物を倒すぞ」
ヒューイが犬飼に話し掛けると右手で返事をして、肩に背負っていた長物を地面に置いた。
するとヒューイが不思議そうに犬飼の顔を見た。
「大事な武器じゃないのか?」
「借り物だからそんなにこだわりはねぇさ、だが、この武器は強力過ぎて街中では使えねえのよ」
そう言って犬飼は武器の代わりに懐からジュラルミンボトルを取り出し、蓋を開けてその場でラッパ飲みした。
「んぐんぐ…………ウイスキーウメーー!」
「にゃっ! 戦う前に酒飲むにゃよ」
「…………おっ! おもしれー子供じゃねーかお嬢ちゃん歳いくつ?」
「にゃっ……」
俺の前に立った犬飼はしゃがむと歳を聞いてきた。幼女に歳を聞くなんて、純粋な子供好きか変な意味で好きなロリコンか人さらい位だろう。
まぁこいつは一番目だろうから真面目に答えてもいいが……1万歳と言ったら『大人を馬鹿にするな』と怒るかな?
「社長っこんな奴に真面目に答える必要ないっすよ」
「黒鴉確かににゃっ……しかしあたちは人間に舐められたままにゃいかんのにゃオイッおみゃえ!」
俺は犬飼に指を差した。
「ずいぶん元気な子供だな……しかもその訛りは名古屋人か?」
確かにややこしいが、仕様だから仕方ない。
「違うにゃっ! アタチの首都ちん地は魔界」
「お前っちびっ子の癖してなんちゅー卑猥なこと言ってんだ?」
「……仕様だからにゃ仕方にゃい。それより自己紹介の続きにゃ、アタチのにゃはサタン。百万の悪魔の軍勢を統べる悪魔王にゃっ!」
「へ〜〜悪魔王か……そうはとても見えねぇけどな」
「にゃにゃっ♬ それよりおみゃえはなに者にゃ?」
「俺か……俺はそこにいる時道の先輩だよ」
犬飼は過去を知られたくないのかそれ以上は語らなかった。代わりにジュラルミンボトルを差し出した。
「にゃんにゃ……」
「飲むか?」
「だから中身はにゃんにゃと聞いているにゃっ!」
俺は両手を振りあげプンプン怒った。その様子をクレナが見てたら歓喜していただろう。
「ウイスキーだ。飲むか?」
「いらんにゃっ!」
幼女にウイスキー勧めるな。しかも口つけたボトルで間接キスだぞ。これでも潔癖症な俺は例えイケメンでも間接キスは嫌だからな。
『ギギギッーー!!』
痺れを切らした斧を持ったゴブリンが襲い掛かって来た。これは俺の実力を過去人に見せるチャンスだな。
「にゃんっ!」
『ぎにゃっ!?』
得意の頭突きでゴブリンをブッ飛ばし粉砕した。毎度ワンパターンな攻撃だけど、過去人たちにの目には新鮮に写ったに違いない。
「へえ、やるじゃん」
「にゃにゃっ♬」
「こんなちびっ子にいいとこ見せられたら俺も黙ってはいられねーよな……」
俺の活躍を見てやる気を出した犬飼が指を鳴らした。影響受けるのはいいが、その前に魔物を頭突きで倒す幼女にツッコミを入れろよ……。
「しかしにゃ〜武器を置いてどうにゃって戦うにゃ?」
「ははっ、俺は武器無しで戦えねぇほどヤワじゃっねーよっ!」
『ゴウッ!?』
なんと犬飼はボスクラスのオークの肥えた腹にストレートパンチを喰らわせた。
しかしオークは不思議そうに首をかしげた。
「おいっ効いてねえっオークから離れろっ!」
ヒューイが犬飼に向かって警告した。しかし時すでに遅くオークは木の棍棒を振りあげ犬飼を殴った。
「ぐっ!」
近距離打撲で流石の犬飼も吹っ飛ばされ転がった。
「おいっだから言わんこっちゃない」
「へへ、忠告ありがとうな……でもよ、この程度の怪我で負わして俺を止められると思うなよ」
起きあがった血だらけの犬飼が笑みを浮かべながらオークに近づいた。
『グッ、グオォォッ!』
オークがまた棍棒を振りあげた。
「おいっ! 丸腰でオークに近づくなっあまりにも君は無謀だぞっ!」
「忠告ありがとう。でもな、男は時に決して逃げてはいけねー場面があるってことよ。それが今だ」
無謀にも犬飼は駆け出し真正面からオークに向かって行った。
『グオッ!?』
「日本男児を舐めんじゃねーよっ豚野郎っ!」
『ブモッ!!』
犬飼は膝蹴りでオークのアゴを突きあげ、よろけたところに右フックで顔面ぶん殴り。倒れた腹の上に正拳突きでトドメを刺した。
「ふう〜〜舐めんじゃねぇぞ」
「へぇ〜まさか素手でオークを倒すとはやるじゃないか? しかし君はずいぶんと戦いに慣れているな?」
ヒューイが拍手しながら犬飼を誉めた。
「……まぁ似たような化物とたまに戦ってるからな……」
「へ〜私もその化物と手合わせしてみたいものだな」
「やめとけ。俺らが相手している敵は闇が深いんだ」
犬飼は関係ない奴を巻き込みたくないらしい。それほどやばい敵らしいな。
とはいえ、過去人に異世界人に悪魔に天使ともう俺たちはガッツリ交わってる。
関わってしまったのだからとことん終焉まで付き合うしかないみたいだな。
「ケケッ♬ 社長っ片付けましたぜ」
黒鴉が報告した。どうやら犬飼と会話している間に仲間たちが魔物の群れを一掃したみたいだ。
「ご苦労にゃ戻っていいにゃ」
「……ちょっと待て社長っいやこの際言わしてもらいやすがサタンちゃまこ、こらーーっ!」
「にゃっ!?」
『皆が注目してるだろう』無礼は許すが、デカい声を出すな黒鴉よ。
「にゃむ〜〜またおみゃえの力を借りる時が必ず来るからにゃ、そんにゃに怒るにゃよ」
俺は黒鴉にうんまい棒を握らせた。
「……そうでしたかっ? それならそうと言ってくださいよ〜ケケッ♬」
キツネ目にし機嫌を取り戻した黒鴉が手揉みし俺にゴマすりした。そのあと俺は黒鴉をファイルに戻した。
しかし、現場は化物騒動で野次馬が集まり騒然としていた。
「チッ! 厄介な事態になってきたな…………」
バチン!
「にゃっ……」
鷹村警部が懐から黒い携帯電話を取り出し開いてプッシュしてから耳に当てた。
くそ懐かしい二つ折りガラケーだ。ここにいる未来人からしたら博物館レベルのシロモノだ。
流石平成だな。
「もしもし鷹村だ…………」
鷹村は警察に応援を要請して現場を封鎖した。
で、普通なら俺たちは重要参考人なので事情聴取を受けなきゃいけないけど、鷹村警部も巻き込まれたから不問にされた。
事情聴取する暇があったら問題解決させた方がいいと警視庁が判断したみたい。
それで早速宮崎に向かうことになった。
「我々は今から新幹線に乗って乗り継ぎ宮崎県に向かう。そこで貴様らも来てもらうのだが……そんな格好じゃ公共交通機関は使えないな」
異世界チームは本物の武器を装備しているからな。例え過去の時代でも凶器の持ち出しは罪になる。
「それならエイトたちはエアカーに乗って一足先に宮崎に行くのだ」
「エアカー? 車で私たち新幹線より速く着くつもりか?」
「そうら、エアカーは空飛ぶ未来の車なのだ」
「空飛ぶ車だと……いくらなんでも馬鹿な」
「…………口で言っても信じてもらえないのら」
そう言うとエイトさんはキッキンエアカーの運転席に乗り込みエンジンを掛けて宙に浮かせた。
「なっ…………ちょっと待て待てっ! な、なんで車が宙に浮くんだっ!? 私は夢でも見ているのかぁ」
大きく口を開けた鷹村警部が見あげて袖で目を擦った。しかし残念、それは現実だ。
でもすぐに彼女は『ハッ!』として眉を吊りあげエアカーを指差した。
「制空権ってのを知ってるか? 許可なく日本上空を飛ぶのは禁止だ」
「……大丈夫ら。それなら低く飛ぶからな」
「なにが『な』だよっ! 低くかろうが駄目なのは駄目なのっ! 全く信じられないが飛んだら今度こそ署までしょっ引くぞ」
「…………分かったのら、それならエアカー走らせ向かうのらっ」
「なにっ……公道を走らせるか……ま、まぁそれなら許す……」
『にゃっ!?』鷹村警部は許可したが、肝心なことに気づいてなかった。それはエイトさんが持つ免許証はエアカーのであり未来の免許証だから、この時代に走ったら無免許運転の罪になるし、そもそも未来から来た車を公道に走らせる許可受けてないだろう。
とは言えこれ以上出発が遅れるのはよろしくないので俺は黙った。
そう言うわけで時道一行は新幹線、列車ルートで俺たちはエアカーで公道ルートで二股に分かれ、落ち合う場所の宮崎駅を目指した。




