サタンちゃまと怪しい二人組
俺たちを危機から救ってくれたツートンカラーのスーツの男と、金色のバレーボールサイズの球体が先端に付いたロッドを握る金髪おかっぱの背の低い少女。
二人は明らかに一般人ではないオーラを放っていて、どちらかと言うと俺たち寄りの人種だと感じた。
「やっと来たか時道っ、それよりこのおかしな奴らが知り合いとは本当か?」
指差して『コイツ言うな!』
それにしても、時道ってツートン男と刑事は知り合いなんだな。
「…………ええ本当です」
そう言って時道はハットの翼を右手人差し指で少し持ちあげ、妖しく赤く光る右眼を光らせ何故か俺だけを見つめた。
まさかロリコンか……。
「知り合いとはアタチはオマエラのこと知らんにゃ」
「ちょっとちびっ子!」
俺はメリーの制止を無視して歩き出し、時道の前に立った。すると時道は帽子を取った。
「僕の名は時道神。依頼人を過去や未来にお連れする時の運び屋をやっている時空師です」
自己紹介した時道は紳士的にお辞儀した。
「にゃにっ……おみゃえタイムトラベラーにゃか?」
「ええ、似たような者です」
「にゃんと……」
奴が時を操る特殊能力使いなのが分かったが、俺の独特な猫口調を聞いてツッコまないスルースキルいや、冷静さもあなどれんな。
「で、そっちのちびっ子は誰にゃ?」
俺は横にいる金髪おかっぱ少女に指差した。
「妾のことがちびっ子…………いやお前より背が高いし、ちびっ子にちびっ子言われたくないのじゃ」
「にゃっ……」
まさかの姫口調。しかも結構攻撃的性格か?
「にゃっ、にゃんにゃおみゃえ……」
「頭が高い……」
「にゃっ……」
「二度と言わんと分からぬか……妾はムー大陸の姫王っリオンであるっ頭が高いぞちびっ子!」
「にゃあっ!」
偉そうなムーなんちゃら姫が手にしたロッドで俺は吹き飛ばされて、約3メートル先のソファーの下に落ちた。
ソファーがクッションになって良かったけど、客がいたらぶつかって怪我させた。だから閑古鳥鳴く喫茶店で良かった。
「にゃっ、にゃんと……」
しかしちょっとロッド先の球体部分がお腹に触れただけなのに、俺を吹き飛ばす威力はなんなんだ?
「頭が高いと言ったじゃろちびっ子」
「にゃにぃ……」
ムーなんちゃらが近くまで来て俺を見おろした。それにしても背に関しては『お前も十分ちびっ子の枠に入るからな』
俺は顔を見あげた。
「おみゃえにゃんにゃあ……」
「まだ無礼な口の利き方する庶民じゃのう。しかし、お主のような輩を教育したら何十年と掛かるやも知れんでとりあえずもう一度教えてやるのじゃ、妾の名はリオン。海に沈んだ幻の大陸ムーの姫王じゃ」
「にゃっ……二度と自己紹介しにゃいと言った癖に嘘つきにゃ」
「……屁理屈言うなちびっ子。で、お前はなんなんだ?」
ソファーに右足を乗せたリオンが聞いた。しかしずいぶん行儀の悪いお姫さまだ。
それにしてもムー大陸って懐かしいオカルトネタだ。もしムー大陸が事実だとしても何万年前に海底に沈んだ大陸の姫さまがなんで今生きてるんだ?
だから世の中には色んな奴がいるから否定せず。生温かく見守ってやるさ。
「にゃにゃっ♬」
「なにがおかしいんじゃちびっ子……」
笑いながら顔をあげた俺を引きつった目で見るリオン。
「いやあ〜毎日が楽しいにゃ〜」
「……妾にブッ飛ばされたのにか?」
「にゃっ♬」
俺は挨拶代わりにスカートのポッケからうんまい棒を取り出しリオンに差し出した。
「なんじゃ……駄菓子か……まさかお前の大好物か?」
「にゃっ!」
「そうか……駄菓子好きに悪い奴はおらんよな」
「にゃっ……」
『そんなことはないぞ』元にこの時代に生きる過去の俺は将来、この物質世界に武力侵攻して滅茶苦茶にするからな。
「ではお主の好意心良く受け入れよう。じゃが、タダで受け取るわけにはいかぬ。……コレは妾の大好物での、特別に受け取るが良い」
「にゃっ……」
リオンが差し出したのはなんとたい焼きだった。ムー大陸の姫とたい焼きの接点がイマイチピンとこなかった。
「ちょっといつまでもその茶番劇やってんの?」
俺たちのやりとりを見ていたメリーが痺れを切らして俺の首根っこを掴んで持ちあげた。
「にゃあ……」
「ほう〜メリーの猫か?」
「違うわよっ、こんの憎たらしいちびっ子は聖女様のペットよ」
「聖女のペット……その女は何者じゃ?」
「んも〜〜ちょっと話が長くなるわよ……」
目をつむって面倒臭そうに頭を掻いたメリーは異世界大陸についてや、これまで起こった出来事をリオンに話した。
「なるほど、あなたたちは未来から来たと言うのですね……しかも悪魔王サタン……こんな子供が地球を……」
時道がうなづきながら言った。
「にゃんにゃまさかアタチを……」
「あっ、ご心配なく。すでに起こしてしまった未来のあなたを殺しても意味はありません。やるならこの時代にいるもう一人の過去のあなたですね」
「……殺すって優しく言って物騒にゃ……」
「ふふ、大丈夫ですよ」
『全然そうは思えない』この男はとんでもない能力を隠し持っていると俺は確信した。
そう、俺は騙されんぞ。一見優しい奴に限って怒らせると怖いんだ。それを本能的に察知した。
「鷹村警部っ分かりましたよ」
「コイツらの身元についてか?」
「ええ、彼らは三百先の未来から来た異世界人です」
「……馬鹿者っもっとマシな嘘をつけ……」
とりあえず俺たちは時道の知り合いと言うことでテーブル席に座った。
その奥の席の手前に刑事二人が座り、対面式のうしろの席にリオンと時道の順に座り。地味なおっさんは時道の隣にの一番端に座った。
「ヤレヤレ、ようやく本題か……」
鷹村警部は懐から取り出したタバコを咥えるとライターで火を付けた。ちびっ子がいるのにタバコ吸うとはデリカシーのない刑事だ。
まぁ気にしないが、とりあえず地味なおっさんの事情聴取でも始めるらしい。




