サタンちゃまと二人の刑事
「イラッしゃ〜い」
喫茶店の虹色アフロマスターが入店して来たお客に軽い挨拶した。
それよりもどんな客かと見ていたらスーツ姿のお堅い感じの二人の客だった。
で、一人は長い黒髪にセンター分けの前髪、うなじ下にリボンで縛ったお下げにレディーススーツ着て、長方形レンズの黒縁眼鏡を掛け美人だが、眉間に皺を寄せて気難しそうな女性だ。
一方もう一人はスーツ姿の短髪の男性でまぁ見た目は普通だな。
「席は空いてるか?」
女性の方が凛とした声でマスターに聞いた。
「はいっいやぁ〜いつもヒマでねぇ〜どこでも自由に座っていいよ」
「…………」
なんかマスターの接客態度フランク過ぎて友だちと会話してるみたいだな。とにかく自由だから店が閑古鳥鳴っていても気にしない感じだ。
しかしそれで東京の一等地でやっていけるのか?
「出来れば一番奥のテーブル席がいい」
「あっ、それが妙な客が座っちゃって〜」
困ったようにマスターは頭を掻きながら俺たちをチラ見しながら親指で指差した。
『どうでもいいが、妙な客言うな!』突然現れて確かに姿も妙だけどな……。
「なんだと……」
すると眼鏡の女性と目が合った。そしてヅカヅカとコッチに向かって来た。
「なんだそのおかしな格好はコミケ帰りか?」
「にゃっ、コミケって……」
俺たちのいる世界ではとっくの昔に開催されなくなった同人イベントのことだ。
すっかり忘れていたが、この女性が普通に口にすると言うことは、イベント全盛期の世界か……。
「ちょっ、ちょっと待ってくださいよっ鷹村警部っコミケ帰りって今は2月でイベントは年末と夏ですよ」
隣りの男が女性に間違いを指摘した。しかし妙にコミケに詳しいな……ひょっとしてオタクか?
『いやそれより、鷹村警部ってこの女の人刑事か?』それに今は2月って確かによく見れば二人共コートを羽織っていた。なら店内が暖かいのは暖房が稼働していたからか……俺たちがいた季節は10月でそうなると益々確信に近づいてきたな。
「だったら別のイベント帰りじゃないのか?」
「いやぁ〜それがこの日はそれ系のイベントは開催されてなく、しかも平日ですからイベント帰りなんてあり得ないですよ」
「……じゃあなんだ……コイツらは無許可でコスプレして街中歩き回っていたのか?」
『指差しコイツら呼ばわりすんな!』
「しっかし、ロールプレイングゲームみたいな格好した奴らだな…………おいっ!」
鷹村って女性が驚いた顔してアルマーに指差した。彼はロボットだからそりゃ驚く。
「滅茶苦茶凝った着ぐるみ着てる奴がいるな。しかし無許可で着ぐるみはいかんぞ。とりあえず顔出せ!」
本物のロボに無茶言うな。
『それは不可能だ』
「なんだとっ! これは命令だぞっ!」
そう言って鷹村は懐から黒い手帳を差し出した。下の部分に金色の逆三角形マークが付いていた。それは刑事ドラマで良く見る警察手帳に間違いない。
「にゃっぱり刑事かにゃ……」
「んっ、なんだ子供にも変な格好させてんのか、おいっ! 保護者は誰だった!?」
「にゃんにゃっ変にゃ格好って!」
お気に入りのドレス姿を馬鹿にされた俺は腕を振りあげ鷹村に抗議した。
「おいっ、にゃんにゃって……子供におかしな口調教えた馬鹿親は誰だっ!?」
「にゃっ……」
『教えたもなにも……』俺の猫口調は仕様だから誰の責任でもないから仕方ない。
「『…………』」
「貴様ら揃いもそろって黙秘している。なにかやましいことがあればじっくり署で事情聴取してやってもいいんだぞ?」
そう言って鷹村はスーツのポッケから手錠を取り出し人差し指でクルクルと回した。
「ちょっとさっきからあたしらを不審者扱いしてそっちこそ何者なのっ!?」
よせばいいのにメリーは鷹村を指差し聞いた。
「フンッ勝気なコスプレ娘が見て分からないのか、私は警視庁捜査一課部長の鷹村涼子だっ! そしてコイツは警部補の長谷川幸治だ」
「そっそりゃないっすよ〜鷹村警部っぼ、僕から自己紹介させて欲しかったすよ〜」
長谷川と紹介された刑事が頼りなく鷹村の肩に覆いかぶさった。すると彼女はむげにその手を振り払った。
「黙れ長谷川っ! それよりなぁ〜なんだ腰に付けた剣は?」
鷹村はヒューイが帯刀した剣を指差した。
「ああ、これか……」
するとヒューイは鞘から剣を引き抜いた。いやいや、マジ本物だから不味いって刑事に見せちゃ……。
「なっ! ヤケに良く出来た剣だな……実に刃先が鋭い……まさか本物じゃないだろうな……」
「なに言ってる。私は誇り高き冒険者だ。本物の剣に決まっている」
『あ、言っちゃった』俺の推測だとこの時代は三百以上前の過去の世界で異世界人なんか存在しないんだ。
だから本物の剣を白昼堂々持ち歩いたら……。
「ほ、ほ………貴様今っ本物の剣と言ったな?」
「ああそれがなにか?」
「……銃刀法違反により貴様を逮捕する」
「なにっ!」
ほらそうなる。
「そこの赤毛のツインテールのお前っ、そっちの金髪の鎧女っ、そこのっ妙な杖を持ったトンガリ帽子のツインテールの女もだっ! 長谷川っ本物かどうか徹底的に調べろっ!」
「へっへいっ……」
「ちょっとなにすんのよっ!」
「あ、痛っ!」
鷹村に命令された長谷川がメリーに近づくと反撃され左頬を打たれた。
『あ〜あ、やっちゃった……』
「きっさまぁ〜〜銃刀法違反に公務執行違反により全員現行犯逮捕だっ!」
「ちょっと待つにゃっ! アタチらはにゃにもしてにゃいにゃっ!」
俺は慌てて飛び出し、鷹村警部にパーで開いた両手をワチャワチャ振って止めた。
「んっ、おかしな猫耳カチューシャつけた子供か……お前の保護者は誰だ?」
「んにゃもんいにゃいにゃっ!」
「なっにぃ〜〜コイツら赤の他人かぁ〜まさか人さらいか?」
「にゃっ……」
今度は俺のせいで仲間が人身売買の容疑を向けられた。しかし分かり合うどころか、説明すればするほど疑われ泥沼にハマっていくな……。
体験して改めて思った。異世界人が現代に行くってこんなに大変なの改めて理解した。
しかし、この頭の硬い女刑事にどう説明しようか……。
「ちょっと待つにゃ話せば分かる。実はアタチらは三百年前の未来から来た異世界人にゃっ!」
「未来から来た異世界人だと〜〜、そんな子供染みた言い訳が通用すると思うなよ」
『う〜〜ん』やはり通じないか……異世界転移漫画みたいそう簡単には信じてもらえないよな。
現行犯逮捕寸前で詰んだ俺たちだったがその時ドアベルが鳴って新たな客が入って来た。
入って来たのは三人の客。
一人は言っちゃ悪いがこれと言って特長のない60歳位のおじさんと、先端が丸い球体の金色のロッドを握った金髪おかっぱで緑を基調としたブレザー制服を着た小柄の美少女。
若干俺より背が高いなでも負けてねーから……。
んで横にいる身長170センチ位の左右に別れたツートンカラーのスーツとハットを被ったなんかスカした雰囲気の美形の男だ。
しかしなんか見覚えがあるのは何故だ……?
よく観察すると、ツートンスーツと金髪おかっぱ少女は俺たちに負けず劣らずコスプレ感が凄いな。
ところで鷹村警部は黙って見ていたが、アイツらはいいのか? あんな金属の長物持ち歩いて人にぶつかったら危ないだろうに。
するとツートンスーツの怪しい男が口を開いた。
「鷹村警部大丈夫ですよ。この方々は、僕のお客です」
「そうか……お前の客なら早く言え……」
「にゃにっ……」
鷹村は懐に入れた右手をさげた。
どうやら謎のツートンスーツ男の機転のおかげで逮捕は免れた。
しかしなんでこの男は見ず知らずの俺たちを助けたんだ……。




