サタンちゃまとレトロ喫茶レインボーアフロ店
10月2日金曜日、東京の台場の駐車場で俺たちは朝食を済ませた。いわゆるキャンプ飯で非常識このうえないが、何故か異世界人が混ざっていることで警察からはおとがめ無しだ。
まぁ、大昔ここ日本で外国人観光客が殺到した時代があって、外人様が迷惑行為しても少々許された時と似ているな。
しかしそれも330年前でその時代を見ていた俺は長生きだ。
「にゃにゃっ♬」
「ちょっとちびっ子!」
「にゃっ?」
俺が脈略なく笑ったんで、隣りで座っていたメリーが引きつった目で見てた。
「にゃじゃないわよ。急に笑い出して頭おかしくなったの?」
「にゃっ、まぁアタチは普通じゃにゃいわな……」
「素直に認めてるんじゃないわよ。それよりヒューイさんが今日東京観光したいってあたしに頼んできたのよ」
「にゃっ……」
当のヒューイたちは今某牛丼チェーン店に行ってチー牛でも食べてるところだな。
だから彼らがいない今、メリーが俺に相談してきたわけだ。
「連れてけばいいにゃ」
「ちょっと! 投げやりに答えてんじゃないわよ。異世界人のあたしが東京名所が分かるわけないでしょ?」
「確かにそうにゃ」
俺は箸を持った右手をあげて返事した。
「……ムカつくわね……真面目に答えないと首絞めるわよ……」
「にゃっ……たちかにあたちは東京のこと良く知ってるにゃしかし、この通り幼女にゃから……」
「別にアンタに期待してないわよ。とりあえずまっ、こっち世界の大人一人ガイドでつけて欲しいわね」
「それにゃら谷川シェフはどうにゃ?」
俺が提案すると谷川シェフ自ら食材調達と料理屋巡りがあるからガイドは無理だと言われた。
そうなるとこっち側の大人は……たこ焼き天使のエイトさんしかいないか……。
「いやにゃまた首絞められるのにゃ……」
「なにか言ったのら悪魔王?」
「にゃっ!?」
隣りにパンを食べていたエイトさんが俺の顔をジッと見て言ってきた。しかし別にアンタの名前出してないのに鋭い天使だ。
「あっ丁度良かった。ねぇっエイトさん東京の街知ってる?」
「……んまぁ知らんでもないのら……」
知ってんのか知らんのか曖昧な返事だ。
「じゃあさっ今日ヒューイさんに東京観光案内を頼まれてさっ、ちびっ子じゃ役に立たないし、ぜひエイトさんにガイドお願い出来ないかしら?」
役に立たないは余計だメリーよ。
「……悪魔王もついて行くのら?」
「もちろん連れて行くわ。スゲー憎たらしいちびっ子だけど、なにかと役に立つスキル持ちだからね」
『くっそ!』俺をいいように利用する気かメリー。
「……見過ごせないのら……分かった。このエイトが東京の名所を案内するのら」
「へ〜ありがとう。で、どこに連れて行くの?」
「……東京ランドとか富士山は鉄板なのら」
『にわか天使め東京のこと全然知らないな』前者は千葉で後者は静岡だ。
とりあえずメンバーは俺とメリー、エイト、ワン☆ころ、アルマー、ヒューイ、ビビット、ザレオンの計六人と一機と一匹だ。
ちなみに俺は聖女さまのペット扱いだけど匹じゃないからな。
「しかしロボのアルマーも参加するなんて一般市民驚かない?」
『ハハ、それは確かにな。しかし様々な種族が入り混じった異世界人で溢れる世の中でロボがいたところで騒ぎにはならないだろう』
「確かにそうね……とりあえず移動とか便利そうよね」
『あっさり納得するなメリー』それにアルマーに乗るって定員オーバーだ。
□ □ □
戻って来たヒューイ一行と俺たちは合流した。
「待たせたね」
「あれっ、シンシアさんは?」
「ああ、彼……いい、いやっ彼女はジムに行きたいと言って別行動だ」
シンシアさんは男みたいに筋肉ムキムキの女だけど、リーダーが仲間の性別間違えるなよ……。
「ふ〜〜ん、それはそうと確かエアカー買いに行くんじゃなかったの?」
「それはじっくり店舗を回って見てから決めるよ。だから初日は皆を連れて東京観光したいのさ」
皆を連れてって、異世界大陸で一人お留守番のコシヒコ君が可哀想。『まぁ、頑張れ…………』
「じゃあ早速どこか面白い場所に案内してくれ」
「ちょっと……」
メリーはなにか違和感を感じたのか先に歩き出したヒューイを呼び止めた。
「んっ、どうしたんだいメリー?」
立ち止まって振り向いたヒューイが不思議そうにメリーに聞いた。確かに俺もヒューイ一行に違和感を感じる。しかしそれがなにかは分からない。
「ちょっと三人共フル装備で東京観光する気……」
そうか、違和感の正体はヒューイとザレオンの全身鎧と腰に付けた剣と、ビビットの魔法使いの帽子と握ったロッドの正に冒険者のフル装備姿だ。
確かにその格好で観光するのは変だ。とはいえ指摘したメリー本人も冒険者の装備で腰にショートソードを帯刀していたから、指摘する方もなってないな……。
要するにどっちもドッチだ。
「んまぁ……巷には冒険者がチラホラ見えるし……万が一野良スライムが現れるかも知れないし……装備していた方が安心よね……」
「だな」
「にゃっ……」
私服でお洒落せずに妥協してフル装備で東京観光する気かよメリーたち……。
ま、俺もいつものブラックドレス姿だから人のこと言えないな。
「んじゃエイトさん最初どこに行く?」
開き直ったメリーがエイトさんに聞いた。
「……とりあえず二代目スカイツリー見てから上野、浅草雷門見てお昼休憩するのら」
定番の東京観光コースだけどこの格好でお洒落なネオ銀座とか行くよりはマシだな。
「じゃあ乗るのら」
どうやらさんは、俺たちをキッチンエアカーに乗せて観光する気らしい。
しかし構造上助手席しか座れないぞ。
「とりあえずヒューイさんは助手席に座るのら」
「えっ、いいのかい?」
「……今回のお客さんだからな」
「じゃ他のメンバーは?」
「……キッチンコンテナの中に乗ってもらうのら」
『最悪だ』滅茶苦茶狭いし椅子なんかないから乗り心地最悪だろうな。
とは言え俺とヒューイ以外はコンテナに押し込まれ出発した。ちなみに俺はアルマーの背に乗ることになった。
□ □ □
午前中は順調に二代目スカイツリーと上野、浅草と観光してお昼をむかえた。
で、場所は仲見世商店街で三百年前に俺が起こした最終戦争の戦火からまぬがれた歴史ある飲食店が多く営業している。
彩みどりだが問題はどの店にするかだ。
「どの店も美味しそうだけど決められないわ」
まぁメリーに選ぶ権限はないけどな。
するとビビットさんが手をあげた。
「い、一度でいいからレトロ喫茶と呼ばれるニッポンの喫茶店に入りたい……」
「にゃんにゃ良く知ってるにゃ?」
「ああ、この日のためにニッポン文化について勉強してきたんだ」
「にゃるほど……にゃらアタチが知ってる大戦前から営業しているレトロ喫茶にあんにゃいするにゃ」
「へーぜひ行ってみたいな」
ビビットさんは手を合わせて俺の話に興味深々だ。こうしてエアカーに乗ってすぐ近くの喫茶店に向かった。
喫茶店の名は喫茶レインボーアフロ。ネタッぽい店名だけど本格的なコーヒーが飲める喫茶店で一番の人気メニューはチーズドンブリナポリタンだ。
このメニューもネタっぽいが、ドンブリに山盛りに盛られたナポリタンの上にとろけるチーズが盛られた大ボリュームの一品だ。
ここならば間違いないと言うことで店の隣りにある駐車場にエアカーを駐車して店に入った。
「いらっしゃいませ〜〜」
手動のドアを押して入ると懐かしいドアベルが鳴って、可愛いウエイトレスさんが元気に挨拶した。
店内を見回すとほぼ満席で大繁盛していた。んでなんとか俺たちの分の席が奥に空いていたのでウエイトレスさんに案内されて座った。
「ちょっと真後ろトイレじゃないの!」
ワガママなメリーがトイレを指差して言った。まぁ一番奥の席だから仕方ない。
それに別にカレーを食べるわけじゃないから俺は気にならないな。
「いらっしゃいませ〜」
「にゃにっ……」
店のマスターが直々に挨拶しに来た。
フォーマルなギャルソンエプロン姿で唇髭を生やしたダンディなマスターだ。残念ながら店名のようなアフロではない。
「わたくし330年続くレトロ喫茶レインボーアフロ十代目店主渡辺アキトと申します」
「にゃっ十代目っにゃんでアフロじゃにゃいにゃ?」
「ははっ良くお客様に言われます。いやまぁ、わたくしはアフロはやりませんが、先代店主だった渡辺剛志が笑いを取るためにレインボーカラーに染めたアフロヘアーにしていたそうですよ」
「嘘にゃあ」
「はは、良く言われます。ホラ、証拠です」
微笑みながらマスターはカウンターの壁にズラリと並んだ顔写真を指差した。
なんだか田舎で良く見たご先祖さまの写真みたいだな……てっ昭和かよっ!
「ホラッ左端の写真が先代のアフロマスターです」
「にゃっ……」
色褪せたカラー写真には確かにアフロヘアーのマスターの顔がわずかに確認出来た。
しかしレインボーアフロなのに真面目な表情なのがジワジワ来るな……しかもアフロは先代だけってのもな。
「とりあえずコーヒーと名物のチーズドンブリナポリタンを注文しない?」
俺に聞かないのかメリー。苦いコーヒーなんてごめんだぞ。
とりあえず俺はオレンジジュースと食えるのかと皆に止められたけど、チーズドンブリナポリタンを注文。
ちっちゃな身体だけど悪魔王に不可能はない。
それで皆コーヒーとチーズドンブリナポリタンを注文すると、注文書を書きながらマスターが豆知識を教えてくれた。
「実はですね。今では毎日繁盛している店ですが、創業当時はお客様はまばらで閑古鳥が鳴く静かな喫茶店でした」
「ちょっと昔は空いてたなんて信じられないわね」
「ええ実はこの喫茶が繁盛するキッカケになったチーズドンブリナポリタンを常連のお客様が作ってくれとリクエストしたのが始まりでした」
「へ〜昔は変わったお客がいたのね……」
メリーが言った。変わったお客はお前もな。
「とりあえず楽しみね」
「『…………』」
メリーの一声に皆がうなづくと黙って待った。
「!!」
すると突然エイトさんが立ちあがった。
「膨大な魔力が喫茶店周辺にっいや、我々だけを狙って集中しているのらっ!」
「なんですって!」
メリーが叫ぶとアルマーが窓ガラスを突き破り店内に入って来た。だから店内は大パニックとなった。
『魔族に攻撃されてるぞっ! 今すぐ外に出るんだ』
アルマーが皆に警告するとメリーが嬉しそうに『やっぱフル装備で正解だったわね』とトチ狂った台詞を吐いた。役にに立って嬉しいのは分かるが、今言う台詞じゃないだろ……。
パニックになった客とウエイトレスが慌てて外に避難した。他の客が無事に避難したのを確認してから俺たちも外に向かおうとしたら、ニヤニヤした店長が手を背後に組んで通路を塞いだ。
「ちょっと邪魔よっ!」
「おっと困りますね〜もう少しでわたくしの魔法が発動しますので少しお待ちを」
「あ、あんたまさか……」
冷や汗を頬から流したメリーが睨むとマスターが自慢気に髭を触った。
「クク、この姿は仮の姿でして、わたくしの本当の名はっ魔王軍13交響楽団五大幹部の一人ラプソディーと申します」
「なっ! 本当のマスターはどうしたのよっ!?」
「にゃっ」
何故か聞く順序がズレているメリー。確かに本物のマスターの安否も気になるけど、それより今ラプソディーが仕掛けた魔法の能力についてだ。
「クク、騒がしい小娘ですね。心配はいりません。本物のマスターはトイレで眠らせてますから、それよりそろそろお別れです」
「まさか逃げる気?」
「クク、とんでもございません逃げませんよ。あなた方のいる時間が変わるだけですから。おっともうこんな時間ですか……ではさようなら。もう二度と会うことはないでしょう……」
ラプソディーが腕時計を見てから含み笑いを浮かべると空間が歪んだ。
……
………………
……………………………
目を閉じてからそっと開けるとそこは俺たちが座っていた喫茶レインボーアフロの奥座席だった。
しかも騒然としていた現場は嘘みたいに静寂に包まれ、破れたガラス窓も綺麗に元通りになっていた。
一緒俺だけ異空間に飛ばされたと思って周辺を見渡したらちゃんとメリー、ワン☆ころ(俺と合体中)、エイト、アルマー、ヒューイ、ビビット、ザレオンの姿を確認出来た。
皆キョトンした表情を浮かべていた。
すると背後から気配がして振り向くとそこに、レインボーアフロのどこか見覚えのあるマスターが立っていた。
「お客様……大変申し訳ございませんが、当店はコスプレでの入店はお断りしています」
「ちょっと待て! 我々は良く見る異世界人だろっ!」
焦りをにじます声でザレオンさんがアフロマスターに訴えた。しかしマスターは不思議そうに首を傾げた。
「異世界人……はて、初めて聞きますね……」
「馬鹿なっそんなハズはっ!」
『待てユー! もしかして我々は異世界人が存在しない過去に飛ばされたのかも知れませんよ』
「『なんだってーーっ!!』」
アルマーの推測を聞いて皆叫んだ。
そんな困惑する中、ドアベルが『カランコロン 』と鳴って誰かが入店して来た。
幹部の数が多くて話数も多いから確認し辛い。だから間違っていたらごめんなさい。




