サタンちゃまとダンジョン祭り13
「で、結局どっちにつくの?」
「にゃっ……」
金シャベルを肩に乗せた邪神がため息混じりに聞いてきた。『いやいや困るって』マジで巻き込もうとするな。
「まぁどっちみち邪魔するならブッ飛ばすけどな」
邪神は金シャベルを両手で構えて野球選手のように素振りした。まぁ、こんな物騒な物で幼女の顔面叩こうなら、邪神は鬼畜だろ……。
「シシ……やはり人間では止められないか」
いつの間にか怒りの面から通常の陽気なピエロの面に戻っていた邪神がシャベルを持ちあげ、切っ先を遥か後方に示した。
それで俺が振り向くと血走った目の地竜がこちらに向かって来た。
「サタン様っここは危険ですっ!」
クレナが俺の前に庇うように立つと、鞘から剣を抜き取り両手で構えた。強さはともかく一番忠実な部下だから頼りになる。
一方黒鴉はニヤニヤしながら俺を見ていた。コイツはちょっとふざけ過ぎるな。
「しかしまぁ、お前らの目的は銀の塔に立ち入る許可をもらうためだったよな?」
すると邪神がまたなんか聞いてきた。
「この祭りの優勝者が塔を管理する王と謁見する機会が与えられるハズだったのら……」
するとエイトさんが割り込み不満気な半目で邪神を睨みながら言ってきた。
「地竜が暴走したのは俺のせーじゃねーよ」
「…………」
邪神が投げやりに否定した。確かに操っているのが魔王軍幹部のパペットだ。しかし邪神が祭りに参加した時点で流れがおかしくなったのは事実だ。
そこのところは責任とって欲しいよな。
「じゃあこうしたら良くないか?」
「にゃんにゃこうしろってにゃ?」
まずは提案してから同意を求めろ。
「シシ……まずは地竜を操るパペット野郎を」
「にゃっ!?」
全てを言う前に邪神が俺を飛び越えてから、地竜の上に浮かんでいるパペットをシャベルでぶん殴った。
「きっ、貴様っ!」
すんごい力で吹き飛ばされたパペットは崖に激突して身体がめり込んだ。
そしてすかさず邪神が飛んで地竜の首に跨った。
「シシ、これで地竜は俺の物だ。ところで銀の塔が国の管理下にあって立ち入れない。それで立ちいる許可を取るために祭りに参加して遠回りするなど時間の無駄じゃねーか?」
「にゃっ……」
「お前ら真面目過ぎんだよ。それだけの力がありゃ〜あ、異世界の兵士などぶちのめして真っ先に銀の塔に行けるだろうに……」
邪神に言われて俺は『ハッ!』とした。確かに俺にはヤドカリ部長やブラックウインズなどなど頼もしい部下がいるし、並行世界から来た友の四段変形ロボのE-アルマーがいるから、異世界の警備はなんてことはないよな。
だからといって秩序を乱す行為は主である聖女さまが許さないから、力ずくは無理だな。
「にゃ…………」
「シシ、だから俺がキッカケを与えてやるって」
下を向いた俺に邪神が笑いながら言った。
「はいよっ走れ地竜よっ!」
なんとまたがった邪神が地竜の首を蹴ると走らせた。
「邪神どこ行くにゃ?」
「シシ、決まってんだろーが、行き着く先は銀の塔だ。そこで地竜の首をいただき、オマエらは俺を追って仕方なく銀の塔に到着する。それでお互い目的が済んでウィンウィンじゃねーの?」
「にゃんと……」
まさかその手があったと俺は関心した。しかし提案した邪神は返事を聞くことなく、銀の塔目指して南に向かって地竜を走らせた。
あっという間に地竜の姿が水平線に消えていって俺らは、どうすることも出来なく立ち尽くした。
すると上空を小型戦闘機が旋回して降下して来た。
『ミーの背中に乗れ』
戦闘機形態の俺の友のE-アルマーだ。音速飛行出来る彼なら暴走地竜に追いつけるハズだ。
瞬時に判断した俺はアルマーの背中に乗った。
『大丈夫か……』
「にゃっ……そうだったにゃ」
勢い良く乗ったものの絶叫マシンが苦手だったことを思い出し俺は彼から降りようと片足を地につけた。
「社長ダメですよ。主役が降りちゃケケッ♬」
「おみゃえ!」
黒鴉が乗って来て俺の背中を逃げられないように両手で掴んだ。主人に向かってなんちゅう無礼な部下だ。とは言えそれが黒鴉の性格だから許されるのだ。
「あっ ズルイ私もっ!」
「あらあら、仕方ないですねぇ」
「見逃せないのら……」
クレナとロウランはともかく、エイトさんまでアルマーの背中に乗ってきた。これは流石に定員オーバーだろ。
『ハハッ、ちょっと重量オーバーで飛べないからサタンちゃま以外はエーテル体になってくれないか?』
「『了解した』」
アルマーも考えが俺と一緒だったらしい。それで納得した皆がうなづくと物質から魂の身体の軽いエーテル体に変換した。
しかし、なんで俺だけ物資化だよ……まぁ不器用だからエーテル体になれなんだが、俺自身の身体に文句を言っても仕方ないが、それにしても不満だ。
仕方なく俺が先頭でアルマーに乗り、エーテル体の四人が重なるように乗った。
『良し乗ったな。それじゃ出発するが振り落とされるなよ』
「にゃっ!」
唯一肉体の俺が右手をあげて返事した。
そしてアルマーが空高く舞い発進して地獄が始まった。
□ □ □
風によってまるで旗のようになびいた俺は必死にアルマーの翼にしがみついた。
たった数分だけど非常に長く感じる絶叫マシンの乗り心地。
『追いついたぞ』
アルマーが言った。流石音速飛行なんで台地を駆ける地竜の背中が見えた。
しかも遠くに銀の塔が見えた。
『どうする友よ?』
「にゃっまぁ〜地竜が銀の塔敷地内に侵入するまで待つんにゃ」
『了解した』
言うことを聞いたアルマーは速度を落とし周囲を旋回した。
「悪魔王…………」
「にゃっ!」
一人不満そうなエイトさんが実体化して背後から俺の顔を覗き込んだ。
「先回りして地竜を止めるべきじゃないのら?」
『出たよクソ真面目な天使の意見』でもそれじゃ……。
「侵入を阻止したにゃ銀の塔に入る口実が無くなるにゃっ!」
「……それはそうだが……」
頭では理解しているけど首を傾げたエイトさんがジャッジメントアックスを握った。
『物騒な』背後にいるだけにいつ頭を斧でカチ割られてもおかしくないから怖いな。
『二人共喧嘩はやめるのだ。それより地竜がゲートを突き破ったぞ』
仲裁に入ったアルマーに言われ下を見ると丁度地竜が銀の塔敷地門を突き破っていた。門番の兵士たちが慌てて逃げていた。
まぁ、目の前に突然重戦車のような竜が向かって来たら逃げるよな。
『良し降りるぞ』
「にゃっ!」
地竜より先回りしたアルマーがゆっくりと降下して、俺は3メートル手前で飛び降りた。人間なら骨折する高さだけど悪魔王の身体なら平気なんだ。
それでも降りた瞬間の背中から『ヒュッ』とする感覚は苦手であり、ちょっと癖になるよな。
「む、どうどうっ!」
『グモモモーーッ!』
立ちはだかる俺らに気づいた邪神が慌てて地竜を停止させた。そしてゆっくりと降りると俺の前に立って見おろした。
「目的が済んだのに、俺の邪魔すんの?」
「……それもそうだにゃ」
これ以上邪神を止める気がないから俺は素直に横に移動して道を譲った。
「駄目なのら……」
一人正義感の強いエイトさんが回転しながら飛んで来て邪神の前に着地した。まぁ唯一銀の塔を作った当事者側だからな。
「ほうっ白天使。まさか俺の邪魔をする気か?」
「……事情があっても地竜の命を奪うなど、このエイトが許さないのら」
「なるほどね……そりゃ白天使さんは見逃さねーかしかし、俺にも引けねえ立場なんだ。邪魔するなら天界に帰ってもらうしかねーかな?」
「…………」
邪神がシャベルの先をエイトさんに向けた。お互い睨み合い決闘が今開始されようとしていた。




