サタンちゃまとダンジョン祭り10
「ねぇ、あたしコッチに戻っても良いかな……」
以前俺が負けたせいでシロウチームに入っていたメリーが申し訳なさそうに聞いてきた。
そういや色々あって彼女のこと忘れていたな。
「にゃっ! メリーか」
「なによっ今気づいたみたいで感じ悪いわね」
「にゃにゃっ♬ にゃあ、見学しにうしろについて行くだけにゃら許可するにゃ」
「このっちびっ子偉そうにっ!」
「にゃにゃっ♬」
メリーに首を絞められたが、俺は楽しくて笑った。んでとりあえず扉の前で全員集合した。
「皆んな集まったか、しかしまぁ巨ジンをガチャで引き当てるとはな……」
そう言って邪神が呆れた目でドラコスを見つめた。それで皆の視線が巨ジンに集まった。
「ちょっと! なんなのよあの大男は……」
「にゃっ」
メリーが俺の肩を叩いて小声で聞いてきたから簡単に教えてやった。
「アイツは好みの女を見ると異常に高ぶるから気をつけるんにゃっ!」
「嘘でしょヤバすぎ…………ギャッ!」
言ってるそばからメリーはドラコスと目が合った。
「むうっ…………むおおおっ!」
「ちょっと! なんで唸るのよっ!?」
メリーが俺の両肩を掴んで激しく揺さぶった。なんと言うか、欲情されて恐怖で怯えているな。
しかしこれから奴と関わるのだから、仲良くしてもらわないと困るな。
「にゃっ……落ちつけメリー。どうやら巨ジンはおみゃえのこと好みらしく興奮してるだけにゃ」
そばに寄った俺はメリーの腰をポンポンと叩いてなだめた。とはいえ余計絶望する情報入りだけど……。
「じょーだんじゃない! あたしに興奮って熊じゃあるまいし、アンタ主人ならなんとかしなさいよっ!」
「にゃっ! わ、分かったからにゃはにゃせ!」
俺はメリーに首を絞められ揺さぶられた。
「ドラコス済まんにゃ一旦カードファイルに戻ってくれにゃ」
「むうっ……これからお楽しみだと思ったが、サタン様の命令ならいたし方ないか……」
「にゃっ!? 俺の仲間にだけにゃおかしなマネはするにゃよ」
「おお……」
こうして俺はドラコスを仕舞った。
奴は滅茶苦茶強くて頼りになるけど、本能的に好みの女を見ると向かって来るので俺が手綱を引く必要がある。だから中々上手くいかないもんだ。
「あれが伝説巨ジンドラコスか」
腕組みした邪神が聞いて来た。
「にゃっ、おみゃえ奴と会ったのは、今回が初めてかにゃっ?」
「ああ、俺はこれまで八つの並行世界で任務をこなして来たが、ドラコスを見るのは九つ目のこの世界が初めてだ……だが、三番目の世界で非常に良く似た奴を勇者と協力して倒したこともあったけな」
「にゃっ……それって異世界のことか?」
俺はダンジョンの床、つまり異世界大陸を指差し聞いた。すると邪神は肩を震わせほくそ笑むと『正解』と言って指差した。
「シシ、俺が行った三番目の世界はお前らが好きないわゆる異世界でしかも、ピンク髪のチャラい勇者と協力して魔王を倒すことに成功した」
「にゃっ……勇者が倒しにゃって、魔王を完全に倒せるのは神の血を引く者にゃから結局復活したにゃろ?」
「……黙れちびっ子」
「にゃっ!」
指摘したら邪神がキレた。
しかし奴はあの不愉快な先代ピンク髪勇者と会っていたとは初耳だ。しかも今回の世界が九番目の並行世界とはいかに……?
「ところでにゃんでおみゃえは世界を股に掛けて旅をしてるにゃ?」
「…………それは今は言えねえな……しかし、ある共通の組織を一人残らず壊滅してきた……」
「にゃにっ!?」
「シシ、まぁ、三番目の異世界にはその組織は存在しなかったので息抜きみたいだったな。さて」
結局邪神は勿体ぶって組織については話さなかった。とはいえ凄く言いたそうだったので、時が来れば話してくれそうだから気長に待つとしよう。
そしてシャベルを肩に乗せ口笛を吹きながら陽気な邪神が扉に触れた。すると鋼鉄で出来た観音開きの重厚な扉をいとも簡単に片手で開けた。
「シシ、さぁお前ら地竜の間に入るぞ」
邪神は俺たちに『カモン』と言って手招きして、先に地竜の間に入って行った。
「にゃにゃっ」
そのうしろに俺がついて行った。
中に入ると正面の祭壇に、全長20メートル位の真っ白な皮膚で翼の無い背中に甲羅が付いた四つ足歩行タイプの竜が寝そべっていた。
地竜と聞いて暗い色だと思っていたが、真っ白なアルビノ型とはな……そいつが俺たちに気づいて首をあげた。
『ほう、今回の優勝者は実に珍しいパーティーだな』
地竜が喋った。まさか知能があって意思疎通が出来るとは思ってなかったな。
そうなると邪神は首を取り辛くなるんじゃないかな?
「シシ、まさか喋るとはな……」
『……邪神か、我が同胞の首を刈っている不届き者は』
「シシ、不届き者呼ばわりとは神に向かって竜程度が言いやがる」
『……黙れ邪神風情がそれよりワシはお主らとは一切戦わん。ホレ、肉を持ってきたろ? その肉を差し出せば主らの優勝じゃ』
「…………」
邪神は黙った。
やはり戦う意志がないと言われたら邪神は首を刈り辛そうだ。
「チッ、いいから首を差し出せよ地竜っ」
『フンッ、何故お主は七竜の首を狙う?』
「ハッ、今は言えねーよ。とにかく戦おうぜコイよ」
どうしても地竜の首が欲しい邪神が手招きして挑発した。しかし地竜は黙って挑発に乗ろうとはしない。
『……無駄じゃ、ワシは戦わん』
「……そうかい。なら審判よぉ、地竜に攻撃したら失格かい? んっ…………」
邪神が振り返って聞くもそこに審判の姿がなかった。
「そうですねぇ……私は本当の審判じゃないので分かりません」
審判の声が地竜の真上に聞こえたので俺たちは見あげた。すると黒い燕尾服にシルクハットに目隠し仮面を付けた怪盗みたいな怪しい審判が宙に浮いてた。魔法で浮いているのかいずれにせよ怪し過ぎる。
しかし審判じゃないと否定したのは一体……。
「ほ〜〜う、お前魔族か?」
邪神が聞くと審判がお辞儀した。
「ご名答。私は魔王軍所属する13交響楽団の一人パペット。以後お見し置きを……」
「ほうっ名がパペットとは意味深だな。してお前はどんな芸を見せてくれるんだ?」
「……それはもう、名前の通り傀儡使いでございます」
パペットは両手をあげた。しかも腕が四本だった。そしてまるで、人形使いのようなポーズを取った。
嫌な予感がする。まさかと思うが、その傀儡とは真下の……。
『…………グッ、グ、ググ…………グオォォッ……!!』
突然立ちあがった地竜が咆哮をあげ俺たちに向かって突進して来た。
「おいっ不味いぞっ!」
入り口にいた谷川シェフが俺たちに逃げるように手招きして誘導した。確かにこんな狭い地下で地竜が暴れたら崩落の危機だ。
ここは戦わず地上まで避難した方が良さそうだ。
「シシ……そうこなくちゃな」
「笑いごとじゃにゃにゃ邪神っ!」
「なんだちびっ子悪魔王よ。こんな楽しい展開笑わずにいられるかよ。さて、こんな場所で戦うのは俺もゴメンだ。だから狂った地竜を地上まで誘き出すぞ」
「にゃっ!?」
何故か邪神は俺を片手で持ちあげ地上までの階段を駆けあがった。ちなみに保護した猫は邪神の後頭部にしがみついていた。
すっかり邪神に懐いているじゃないか……。
とりあえず俺たちは急いで階段を登った。




