サタンちゃまとダンジョン祭り7
俺たちイザベラチームは恐らく最下位で今から巻き返すのは難しいと見た。しかしリーダー気取りの邪神は焦る様子もなく、ピエロらしくおどけていた。
「なぁ要は一番先に地竜と会って、肉を捧げれば優勝なんだろ?」
金のシャベルを右肩に乗せた邪神が振り向きイザベラに聞いた。
「ええ、勝利条件は貴方が聞いた通りですわ。逆に失格条件は、捧げ肉を魔物に3回齧られるかまたは、ダンジョンから外に逃げ出すか怪我してリタイアするかの三点ですわ」
「なるほど……なら、最下層まで直通の階段を作って最短ルートで突破するのはルール違反じゃないのだな?」
まるでカンニングだな。まぁ、そんなズルする奴なんか物理的に不可能なんでいなかったが、邪神なら可能だろな。
「……そんな大工事を短期間でやるお馬鹿さんはおりません。ですから禁止行為には含まれていないハズですわ」
「シシ、なるほど……」
『いやいや』目の前で笑っている邪神がお馬鹿さんでやりかねませんよってことです。
「んっじゃっ、ルールを変えられる前に最下層まで続く階段をつくりましょうか」
「にゃっやれんのかにゃ?」
「……なんだちびっ子失礼だなぁ〜、この俺を誰だと思っている? それに、復活の女神からもらったこのグレート・ゴールド・ゴットシャベル。略して3Gシャベルなら簡単に階段を作ることが出来る」
「にゃっ!」
金ピカシャベルにそんな大袈裟な名称がつけられていたとはな。しかしまぁ、名前通りの金ピカシャベルだから納得だ。
「さて、3Gシャベルの力……見せてみろ」
そう言って邪神はシャベルの先ををダンジョン床に突き刺した。すると眩ゆい光が発光したと思ったら穴が空いていき、あれよこれよと下に通じる石階段が作られていった。
「ふうむ……余裕だな」
そりゃあ掘って階段作ったのは3Gシャベルだからな。それなのに邪神は一仕事したアピールとばかりに右手の甲で額の汗を拭った。
しかしなんとも珍妙。お前は仮面から汗が噴き出るのか……。
「おいおいマジで最下層まで直通する階段を作ったと言うのか……」
「シシ、その通りだシェフ谷川」
「……と、とりあえずルール違反じゃねえよな」
「まぁ、来年からはルール違反になると思うが……恐らくダンジョン祭りは今年で終わりだなシシ……」
邪神が意味深なことを言った。恐らく地竜の首を狙っているから本当に実行したら、竜がいなくなるんで祭りが存続出来なくなるって意味だろ。
まぁ、俺にとっちゃ竜が死のうがどうでもいいな。
「さて、一気に階段降りて最下層を目指そう」
「『…………』」
そう言ってシャベルを肩に乗せて口笛吹きながら邪神が先に階段を降りて行った。
で、俺たちはどうしたものかと顔を見合わせたが、イザベラが階段の前に立って振り返り両腕を広げた。
「もう逆転するにはコレしかありませんわっ!あたくしたちも邪神様について行きましょう」
「……仕方ないな、このSS級冒険者の俺がズルするなんて不本意だが、最深部まで行ってしまったライバルたちに勝つにはこの手しかないな」
ヒューイの意見に皆がうなづくと、邪神について行き階段を降りることが決まった。
「じゃっ一気に降りるにゃっ!」
俺は一気に階段を下った。危ないけど一度やってみたかったんだ。
さて、斜め45度の階段を駆け降りると前方にのんびり降る邪神の背中が見えた。そこをサッと横を通り抜け先頭に立った。
「おいっちびっ子!」
背後から俺を呼び掛ける邪神の声が聞こえたが、すぐに遠くなった。そしてひたすらコケそうになりながらも加速しながら階段を降りた。
「にゃははっ♬ こりゃ楽しいにゃっ!」
案の定途中で転倒して転がりながら壁にぶつかって止まった。人間なら即死だが、見掛けによらず俺の身体は相当頑丈らしく無傷で立ちあがった。
辺りを見渡すと階段はそこで終わりで、目の前に大きな観音開きの鉄扉が目に入った。
その扉には竜のレリーフが施されていて恐らくその奥には地竜が居るとみた。
「そうにゃるとここは最下層かにゃ……」
辺りは鎮まり返っていてあのミートイーターの気配すら感じられない。恐らく奴らは地竜のエサで恐れて近づかないんだろうな。
しかしまぁ、俺だけ先に最下層に辿り着いてしまったみたいだな……。
すると迷宮の奥から人の気配がした。で、逃げも隠れもしない俺はそいつらが来るまで待った。
「ん、なんであのガキがここに……」
「にゃっ……」
目の前に現れたのは前回優勝者のダンジョンマスターシロウとその嫁たちだ。
「馬鹿な、俺より先にこんなくそチビが先に到達しているなんて……」
「にゃにゃっ♬ 参ったかにゃ」
「チッ、ふざけやがって……んっ……なんで階段なんか……まさかっ!」
俺たちのズルに気づいたシロウが震える指先を階段に向けた。
「にゃにゃにゃっ♬ 地下一階から最下層まで直通の階段作って楽ちん到達にゃっ♫」
「きっ、汚ねえっルール違反だろっ!?」
「にゃっにゃっそんな禁止事項は祭りのルールブックには記載されてにゃいからセーフにゃ」
「マジかよっ審判っどうなんだっ?」
「にゃっ……」
今気づいたのだが、シロウの横にいる黒ずくめの燕尾服にシルクハットに、怪盗のような目隠し仮面を付けた男が手をうしろに回してたたずんでいた。
かなり怪しい男だな……まぁ、単なる変人だろう。
「……確かに最下層まで続く階段を作ってはいけないルールはありませんね。とはいえ、そんな人智を超えた行いをまさかされるなんて想定外ですから……」
「チッ! 他人ごとみたいに審判が言ってんじゃねーよ。失格処分にしないならどうすんだよ?」
「……それはもう、決闘して決着つけるしかありませんね……」
失格処分にならずに済んだけど、結局解決策はシロウとの決闘か……まぁ、話し合いより喧嘩で白黒つけた方が俺としてはやり易い。
とはいえ、コイツはダメージ倍反射スキル持ちだから、中途半端な攻撃力だと返り討ちに遭っちまう。
なら、頼れるのは……そろそろ降りて来る頃だと俺は階段を見あげた。するとゆっくりと降りて来る足音が聞こえた。
「全く子供みたいにはしゃぐんじゃねー……あっ、子供か……」
『ほっとけ!』自慢じゃないが俺はちびっ子の姿で一万年生きてきて、普通なら人生の全てを経験して達観した仙人みたいな大人の心になっているハズだったが、この通り笑っちゃう位精神年齢がちびっ子で止まっている。
しかし良いところで邪神が降りて来た。コイツのパワーならシロウを一撃で倒せるハズだ。
「丁度いいところに来たにゃっ、今アタチはシロウに決闘を申し込まれてにゃっ、攻撃反射スキルは厄介にゃのでおみゃえにゃら一撃で倒せるにゃろ?」
「シシ、この俺に頼るか……確かに俺のパワーなら奴の反射スキルを蹴散らすことが出来る。しかし無理だ」
「にゃんでっ!」
ここまで来てまさか邪神に拒否されるとは想定外だ。しかしなにか理由があるに違いない。
そこで邪神を良く観察すると……おかしな点に気づいた。
「おみゃえ……こんにゃところまで連れて来たのかにゃ……」
俺は邪神が右手に3Gシャベルに左手に抱えた猫を指差した。
「ああ、猫を置いて行く訳にはいかなかったからな……だからまぁ、闘いたいのは山々だが……猫片手で闘えないんだわ……」
「にゃっ!」
その時だけ猫を俺に預けろよ。まぁ、信用出来ないのなら一時的にもガマハウスに避難させる手があるのだが、邪神は猫を理由に決闘を拒否した。
『……』程のいい断り方だな。
「どうするちびっ子?」
「にゃっ他人事みたいに聞くにゃっ! にゃあいい……こうにゃったら今からガチャ引いてソルトを引き当てるにゃっ!」
「おっ!」
俺は両手を上に掲げるとガチャスキルを発動し、巨大カプセル自販機を召喚した。
「久々のガチャスキルにゃ……」
タップリの魔力があるので悪魔十連ガチャ引き放題だ。腕が鳴るが、とりあえず魔力量を確認するためにステータスチェックだ。




