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ちびっ子猫口調TSサタンちゃまは悪魔ガチャで頼れる部下を集め、仲間と一緒に異世界大陸を楽しく冒険するにゃん♬  作者: 大空司あゆむ
日本クエスト編

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サタンちゃま牛丼屋に行く

 

 一度谷川シェフは冒険の準備のために店に戻り、俺たちはコインパーキングで駐車したキャンピングエアカーの中で過ごし朝をむかえた。


「都会に来て車中泊なんてセコ過ぎるわよ」


 最近調子に乗ってきたメリーが不満たらたら言った。別にいいが、文句を言うなら聖女さまから目をそらすな。

 しかし東京と言ったら名の知れたホテルに泊まりたいのも事実。聖女さまは金持ちでも無駄な出費はしない。冒険者だからいつ何時なにが起きるか分からないから危機管理能力が高いと思う。


「ところで……」


 メリーはカーテンを少し開けて外の様子をうかがった。なにかに警戒している様子だけど、これと言って怯えている様子じゃないから恐らく例のアレを気にしているのかな?


「たこ焼きストーカー来てないわね……」


 メリーは残念そうに首をひねるとカーテンを全開にした。しかしたこ焼きストーカーって知らない間に不名誉なあだ名つけられた八ちゃんさん。

 あとから本人が知ったらどう思うことやら。


「今日の朝食はたこ焼きじゃないのね」


 流石に朝イチにたこ焼きはキツい。

 だから久しぶりにまともな朝食が食えそうだ。とは言え決めるのは聖女さまだ。

 俺とメリーは固づを飲んで聖女さまを注目した。


「今日の朝食は『好きやん』にしましょう」

「にゃっ!」


 驚いた俺は思わず声を出した。

 だって聖女さまが言った『好きやん』とは、ファミリー向け牛丼チェーン店名だ。中でもチーズ色々牛丼。略してチー牛が人気だ。

 しかしまさか聖女さまの口から好きやんの名が出るとは意外だった。牛丼屋は安くて美味しいけど、あまり品のいい店とは言えないからね。


「やったーーっ牛丼食べに行こーーっ!」


 牛丼未経験のメリーが右手を振りあげ子供みたいにはしゃいでる。そんな彼女に俺は、異世界人の反応は純粋だなぁと生暖かい目で見ることにした。


「ちょっと!さっきからなにニヤニヤしながらあたしを見てるのよ」

「にゃっ!」


 観察してたのがバレてメリーに俺の頬っぺた指でつねられた。なんか彼女はアホだけどなんかカンの鋭い女で侮れないな。


 こうして朝飯は牛丼屋に決定したけどこの駐車場で谷川シェフと合流する約束だったので、メイドのサガネさんが一人残り留守番することになった。

 サガネさん一人残して牛丼屋に行くのは少し申し訳ないと思うけど、彼女は表情一つ変えず『行ってらっしゃいませ』とお辞儀した。


 しかしサガネさんとは未だに仲良くなれない。何故か俺を無視してしかも敵意さえ感じるからだ。

 一体彼女が俺を嫌う理由が聞きたい。理由さえ知れば改善の努力する。まぁ、俺が悪魔だから嫌いならどうにもならないのだが……。


 そんな訳で俺と聖女さまとメリーで好きやん店舗に入店した。

 朝の六時で早くも営業していて、この時間帯はファミリー店でも仕事帰りの男性客がチラホラ見掛けた。


 店内に入ると先客たちが、場違いな聖女さまの姿を見て驚いたのか皆二度見した。


 俺たちは一番奥のテーブル席に着くと早速牛丼を注文した。もちろん三人共満場一致でチー牛だ。


「へい、お待ちいぃぃぃっ!」


 注文してから早いもので三分で店員が牛丼を運んで来た。しかし、主に夜勤明けの男性客相手だから店員の口調がすし屋に来たかと錯覚するほど荒々しかった。

 まさに腹を満たすだけの男たちの空間。俺は嫌いではなかった。

 特に週末の場末感が最高。


「へぇーーっコレがチー牛って、牛丼の上にトロけるチーズが沢山載って美味しそうじゃないの!」


 チーズ色々牛丼の前にメリーが歓喜して大きな声で言った。ちょっとチー牛を頬張る男性客がメリーの声に反応して振り返った。

 恥ずかしいな、ちょっと声量下げろメリー。


 三枚重ねのスライスチーズがトロトロに溶けて、牛丼と合わさると濃厚な味になって最高だ。

 俺はスプーンで掬うと口に入れた。


「うみゃいっ!」


 部活帰りに良く食べていたけど久しぶりでやっぱり美味い。でも現地食材だからレベルアップしないのは残念だけど、俺は味そのものを楽しんだ。


 俺たちは食事をしながら今後の作戦会議をした。


「まさか北海道にまであのたこ焼き屋着いて来ないわよね……」


 メリーが言った。

 もし着いて来たらストーカー決定だ。その時は必ず捕まえて正体を暴くとメリーが息巻いていた。

 なにも知らないたこ焼き屋さん逃げて!


「で、こんなのんきに北海道クエストに挑んでるヒマあるのかしらね?」

「あら、メリーさん不満?」


 首をかしげ顔を伺う聖女さまの箸が止まった。どうでもいいけど、箸の持ち方は完璧だ。


「その間勇者に先を越されたら……」

「大丈夫よ。そう簡単に魔王討伐なんて出来やしないし、あの勇者ガレオの力量では十三の死将に太刀打ち出来ないでしょう」

「だよねーっあの女ったらしが勇者の器じゃないとあたしも思っていた。ならのんびりしても安心ね」


 その女ったらしって言うのが俺にとっては不安材料なのだ。なにせ密かに憧れていた三人の女子が奴の元で冒険中だから。

 彼女たちが勇者の毒牙に掛からないよう願った。


「残念ですが、そうのんびり出来ませんの……」


 目を瞑った聖女さまが首を横に振った。


「なんでよ聖女様?」

「……勇者は一人ではないのよ……」

「それって!」


 驚いたメリーが手にしたスプーンを置いた。

 勇者が複数いるなんて俺も初耳だ。


「まだ情報は不確かだけど……とある村で奇跡が起きたらしいの」

「それってまさか……」

「……勇者の素質を持ったある少女が覚醒したとのもっぱらの噂よ。そして、少女の元に名のある英雄たちが集結してると言うわよ」

「ちょっそれヤバくないっ?」


 思わず立ちあがったメリー。確かに俺も初耳だ。


「……焦る気持ちは分かるわ。しかし、日本政府限定クエストを全てクリアするのが先。クリア特典の隠蔽された歴史を知ることによって、なにか大きな力を手に入れられる気がするのよ」


 確かに三百年前この世界でなにがあったのか真実を知りたいし、消えた両親の行方と俺の秘密がクエスト全クリアで明らかになる。

 聖女さまはクエストしてる間に英雄に匹敵する仲間を集める気だ。現に谷川シェフが新たに仲間になったからな。

 他にも聖女さまに七色に光る斧を投げて寄越した存在や谷川シェフのお師匠さんの存在も気になる。

 恐らく英雄以上の実力者を仲間に引き入れることが出来れば、勇者に対抗出来るな。


「ご馳走様」


 チー牛大盛りを聖女さまが完食すると手を合わせて祈った。俺も完食してから手を合わせて牛丼屋をあとにした。


この小説はただ単に魔王を倒しに行く物語ではございません。一捻り考えてます。

あと勇者はライバルです。

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